テラーノベル
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そこからは地獄だった。食事が終わるまで永遠に聞かされる山中の好きなところ。
可愛いところ、優しいところ、気遣いができるところ、たまに突飛な行動で驚かせてくれるところ、M!LKのことをちゃんと考えてくれているところ、熱い男なところ。
聞けば聞くほど吉田の心は切り刻まれたように痛む。
俺だって、と山中と自分を比較する思考が止められない。それでも笑顔で、話を聞き続けた。
「はぁー、なんか安心したわ。」
「安心?」
「うん、仁人そういう話嫌がると思ってた。」
「なんでよ。」
「んー、なんとなく?」
「なんだそれ。普通にメンバーが悩んでんだから話聞くだろ。」
「うわー!まじでありがとう!やっぱ頼れるのは仁人だな!」
そう笑顔で吉田の肩をポンポンと叩く佐野。
佐野に触れられたところが熱い。
こんな話されても俺、まだ全然好きなんだな。
絶望する。勝ち目なんてないのに。佐野の山中に対する気持ちが本物なのは小一時間聞いた話で十分理解した。嫌になるほどに。
二人で店を出て外を歩く。春になったといえど、夜はまだ肌寒い。吉田がぶるぶるっと身体を震わせると佐野はそれに気付きポッケに突っ込まれた吉田の手を取る。
「うわっ、つんめて!」
「ちょ、ちょっと、なんで握ってんの。」
「いやーなんか寒そうだったから。」
「まじやめろそういうことすんの。勘違い、されるだろ。」
佐野の手を振りほどくと佐野は諦めたように自身も手をポッケに突っ込んだ。
少し拗ねた顔で横を歩く佐野の横顔をながめる。
馬鹿だな俺。期待なんてして。こんな可愛くない態度取るやつの、どこを好きになるんだよ。
はぁ、とため息が出る。
分かれ道、佐野が笑顔で言う。吉田の気持ちなど、微塵も知らないで。
「これからも相談、乗ってくれる?」
「……うん。いいよ。」
「ありがとう!マジでずっと悩んでたから相談できる相手見つかって嬉しいわ!しかも仁人だし!」
「……ずっと…。」
『ずっと』
勇斗はいつから柔太朗のことが好きだったんだろう。ずっと隣にいたのに、見てたのに気付かなかった。
ぼーーっと虚空を見つめて考えていると佐野が吉田の目の前で手を振る。
「仁人?おーい、大丈夫か?」
「あっ、うん、大丈夫。」
「そ?ならいいけど。じゃあ俺こっちだから。またあしたな!」
「ん、ばいばい。」
佐野と別れ帰り道を1人で歩く。切れかけの街灯、異様に明るいコンビニの看板、騒ぐ若者たち、高速道路を走る車の走行音、目に入るもの、耳に届くもの、全て騒がしいのに。何故か、この街に、世界にひとりのような。
胸にぽっかり空いたこの穴は、どうしたらいいのだろう。
家に着いた途端、尋常じゃない疲労が身体中を襲う。やっとの思いで、靴を脱ぎ、リビングに行き上着も着たままソファに座る。
かかる重さの分だけ沈んだソファは優しく吉田を包み込む。
俯き、組まれた自分の手を見る。目の前がぼやぼやとしてよく見えない。瞬きをすれば1粒、床にぽたっと涙がこぼれ落ちた。
声も出さず静かに泣く。1粒流れ出すと、ダムが崩壊したように次々と溢れ出る涙を拭うこともなくひたすら止まるのを待った。
好きでいるのが辛いなんて、思う日が来るなんて。
次の日から、もう吉田の恋愛相談室は佐野の予約でいっぱいになる勢いで次のご飯の約束がぽんぽん決まっていった。
その度に吉田は笑顔で佐野の相手をしていた。
終いには、佐野は楽屋にいる間もコソッと吉田に山中の惚気を話してくるようになった。
佐野が楽屋に入ってきた途端吉田の元に駆け寄り隣に座る。肩を組んで耳元で内緒話をするようにコソコソと話し出した。
「ちょ、仁人聞いて。さっき柔太朗が俺にお菓子くれた。」
「そんなことでいちいち報告してくんな。あとここ楽屋な。」
「だって嬉しかったんだもん〜。」
「きしょ、可愛くないから。」
「えええつめたーい!」
可愛子ぶる佐野を一蹴し、台本を眺める。横でひとりではしゃぐ佐野を無視しているとどこからか視線を感じた。
顔をあげると山中と目が合う。が、バッと逸らされてしまった。
なんなんだ?
と疑問に思っていると佐野に身体を揺さぶられる。
「ねーぇー仁人聞いてるのーー!」
「あーはいはい。聞いてるから、何?」
「だから、この前っ……。」
仕方なく聞いてやっているとまた感じる視線。今度は顔も体も向きを変えずに目線だけでちらっと山中の方を見る。
と、やはりこちらを見ていた。
少し寂しそうな、切なそうなそんな顔。
その意味を、吉田は数時間後に知ることになる。
コメント
12件
え、、もしかして🤍の好きな人って。。。 続きが気になりすぎます。笑
コメント失礼します。 え、待って。本当に待ってください。 切なすぎる、これは全部桃さんの駆け引きで本当は黄さんを好きならいいのにって思っていたのに まさか?白さんも、、ってなったら誰かが絶対苦しいの確定じゃないですか.°(ಗдಗ。)°.
え😭えまって😭もしかして🤍………🥹続きが楽しみです😭😭