テラーノベル
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「次の休みさ、この映画見に行かない?」
携帯の画面を見せられ、俺はパッと表情を明るくした。さすがジヨン、わかってる。俺もこれを見たいと思っていた。
「ああいいな」
「よし決まり〜」
もうチケット買っちゃうね、という言葉に俺は頷いた。そこでふと気づいて思わず笑ってしまう。
「ふ、ははは」
「え?なに?どうしたの?」
「いやぁ、休みの日まで一緒にいるの、面白いなって」
共に同じ音楽スクールに通い、レッスン中と休憩中も、今は寮生活だから同じ部屋に帰って、風呂も一緒に行き寝るときまで2人で話す。学校以外の時間ずっと俺の隣にはジヨンがいるのだ、なのに休みの日まで。
「え〜ヒョンは嫌なの?」
ジヨンは上目遣いに口を尖らせてそう言う。普通こんな仕草、男がやったら似合うはずもないのに、ジヨンだと嫌味が一切なくむしろなんだか可愛いから不思議だ。
「嫌なんて言ってないだろ。なんかもう、当たり前になってるしな」
「なにが?」
「俺の隣に、お前がいること」
一緒にいすぎて、なんかもう空気みたいな、いて当たり前で、それがなんだか面白い。ジヨンと出会う前までのことが思い出せないくらい。
ジヨンはびっくりしたような顔をしたあと、突然腕を伸ばしてギュッと抱きついてきた。
「おわっ、」
「えへへー!俺も!」
ぎゅうぎゅうくっついてくる。彼の匂いが鼻を掠めて、俺は笑いながらその頭をわしゃわしゃに撫でた。
「いやあ、最高だったね!」
映画館を出て、彼が嬉しそうに言った。今日見たのは、俺たちが好きなアーティストの半生を描いたドキュメンタリー映画。途中途中にその人の歌のシーンがあり、その曲が出来上がるまでの経緯、苦悩や喜楽が余すことなく詰まっていた。
「ああ、あの2つ目の歌ができるまでのさ、」
「あー、あのシーンね!」
近くのカフェに入ってからも、2人で映画について話していた。あのシーンの、あの歌の、あの歌詞の。共感したり、そんな意見もあるかと感心したり、いやそれはこうなんじゃないかと言ってみたり。ブラックのアイスコーヒーの氷が溶けるのも気にせず語り合う。
「ねー、スンヒョンヒョン」
「ん?」
「デビューするとき、俺たちなんていう名前で活動する?」
「あ?」
「所謂芸能名ってやつ?」
ジヨンがおかわりしたコーヒーが運ばれてきた。
「…考えたことなかったなあ。というか、気が早くないか?」
「そんなことないでしょ!俺たちはいつかその夢を叶えるんだから、ちゃんと準備してないと」
夢を叶えるんだから。言い切る言い方に思わず頬が緩む。大きな夢を持ちそのために努力を惜しまない、そして必ず叶えると心に決めている。ジヨンのそういうところが好きだった。
「んー…じゃあ今考えようぜ」
「お!いいね〜」
「じゃあまずはジヨンの名前から」
「どうしようかなぁ……あ、そうだ、ヒョンが決めてよ」
「え?俺が?」
「うん。ヒョンのは俺が決めるから」
お前が決めるのかよ。でも、なんだか妙案だな。
「ジヨンは将来どの国にも通用するアーティストになりたいって言ってたから…英語名の方がいいな」
「おお、なるほど」
「うーん……ジヨンの名前って、」
カバンからペンを取り出して、テーブルにあった紙ナプキンの裏に”志龍”と書く。
「こうやって書くだろ?」
「うん」
「だから、この”龍”の部分をドラゴンに変えて、”ジ”の音を残したまま」
“志龍”の隣に”G-DRAGON”と記した。
「”G-DRAGON”ってのはどうだ?」
「おお〜!」
「ちょっと長いかな」
「いや、なんか強そうですごいいい!素敵!世界で通用しそう」
「気に入ってもらえたか?」
「うん!絶対この名前でデビューする!ありがとう、大切にするね」
嬉しそうに笑うジヨンになんだか照れる。彼は普段柔らかい雰囲気を持ち身体も細身で身長も俺より低いのに、ふとした瞬間にその背中が大きく見える時がある。風格やオーラに華があり、カリスマという言葉を具現化したような男だ。その力強さを現したかった。
「じゃあ次は俺の番ね〜」
なんか変に緊張する。他愛のない会話なのに、なんだか畏まってしまう。
「んー………じゃあ、”TOP”はどう?」
「TOP?」
「うん。ヒョンにはなるべくシンプルな名前でいてほしくて、トップって頂点とか1番て意味でしょ?ヒョンなら将来絶対1番いいアーティストになれるから、もうそれなら名前自体をTOPにしちゃおう」
ジヨンがペンで”TOP”と書く。
「あー、でも、”T.O.P”の方がいいかな」
「……なんでだ?」
「50Centっているじゃん?ラッパーの」
「ああ」
「あの人の”P.I.M.P”って曲をもじって、”T.O.P”。成功しててかっこいい余裕な男って世界観がヒョンに合ってるなあって。ヒョン、いつかそんな人になるって思うもん」
そう言われて悪い気はしない。というか嬉しい。ジヨンのセンスが光ってる。
「…うん、すごいかっこいい」
心から出た言葉だった。そんな俺の言葉にジヨンは嬉しそうに微笑んだ後、コーヒーを啜った。
「じゃあユニットデビューのときはG-DRAGON&T.O.P…いや、語呂的にGD&T.O.Pの方がいいかな?それとも他にユニット名作る?」
「……ユニット?」
「うん、俺ヒョンと2人でデビューするのが夢というか、絶対2人デビューして、世界中に俺たちの名前を轟かせたいんだよね!ヒョンとなら絶対できる」
「!」
ジヨンがそんなことを考えていたなんて知らなかった。なんだかもうすでに2人で活動してるかのような錯覚に囚われる。たしかに、2人でならどこまでもいけそうな気がした。
「…ははっ、この先もずっと2人一緒かよ」
「当たり前じゃん〜」
なんだか柄にもなく楽しみにしてしまうな。
コメント
2件
えなんかもうほんとに可愛いでっすね‼️😍😍2人で名前考えてるとこ想像したらえぐ可愛くて気づいたらニヤけてる自分がなによりもキモい笑笑
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