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「スンヒョンヒョン〜」
「あー?なんだよ」
「なんでもない」
「はあ?なんだそれ」
ダンスレッスンの休憩中、座って水を飲む俺の後ろからジヨンがガバッと抱きつく。俺の肩に顎をのせぐりぐりとしながら鼻歌を歌っていた。
「あっつい、離れろ」
「えー?もうすでにダンスで汗かいてるんだからいいじゃん〜」
「なんだその理論。汗くさいからやめろって」
「大丈夫だよ、ヒョンだけじゃなくて俺も汗くさいから今更」
「だからその謎理論なんだそれ。つーか汗くさいって最初からお前だけのこと言ってるから」
「え!?酷くない!?頑張った証拠なのに!」
「はいはい、ヨクガンバリマシタネー」
「棒読み!ちゃんと心込めて!」
「あははっ」
俺の身体にまわった手で、ベシベシと腹を叩かれる。拗ねた声がぶーぶー聞こえて笑ってしまった。
「まーたイチャついてんの〜?」
ダンスの先生が笑いながら言ってくる。いつの間にか周りの生徒たちも微笑みながら俺たちを見ていた。なんか今更ながらすごい恥ずかしい。
「別にイチャついてなんか…」
「そんな楽しそうにベタベタしておいて何言ってんの」
「へへー羨ましいでしょ先生〜」
「ちょっとジヨン…っ」
「そうだね〜〜2人ずっと一緒だもんね」
「はい!これからもずーーっと一緒なんで。ねー?ヒョンー?」
「なにいってんだお前…」
離れようとするもぎゅうぎゅうとジヨンが抱きついてきて敵わない。細い腕のくせにこういうときは力強くてちょっとむかつく。
「あの…」
「ん?」
ふと近くにいたドンスが話しかけてきた。彼は俺たちの後輩練習生で、素直で大人しそうに見えるがはっきりと自分の意見を述べることのできる芯の強い少年だ。そんな彼を俺たちはよく可愛がっていた。
「2人って付き合ってるんですか?」
ドンスの言った言葉が一瞬理解できなくて思わず固まる。付き合ってるって、誰と誰が?俺とジヨン?そんなまさか。だって男同士だし。まあジヨンのことは人として好きだけど。夢に向かって努力を惜しまないくせに生活面では意外とガサツでめんどくさがり屋な面があって、でもまめで細かいところもあるとことか、嫌いじゃないけど。
「へへ〜秘密!」
「……はあ!?」
ジヨンの言葉に思わず大きな声が出た。秘密ってなんだよ、秘密って。否定しろよ。ギャーギャー始まった俺たちの言い合いを、またかとドンス含め周りのやつらも笑ってる。
「はーいそろそろ休憩終了〜」
パンパンと手を叩きながら言う先生に、ジヨンは元気よく返事をしながら離れていった。彼の腕の感触がいつまでも身体に残ってて、なんだか落ち着かなかった。
レッスンの先生から言われた言葉に俺たちは2人して固まった。
「え……え、?」
「ほ、本当…?」
「本当。今度のヒョジョンの出る歌番組の、バックダンサーに選ばれたから」
2人で見つめあったあと、叫びながら抱き合った。このスクールに通い出してもうすぐ3年。初めて仕事が舞い込んできた。先にデビューした先輩のバックダンサーとしてだが、一歩前進だ。
「頑張ってね。練習通りやったら大丈夫だから」
先生の言葉に元気よく返事をした。
「ジヨンヒョン、スンヒョンヒョン!」
レッスン終了後、寮の部屋に戻ろうとしたところで声をかけられた。振り返るとドンスが笑顔で立っていた。普段どちらかと言えば飄々とした表情のクールな彼が、一際目を輝かせている。
「聞きましたよ!今度バックダンサーとして出るんですよね!?」
「ああ」
「おめでとうございます!」
まるで自分のことのように喜んでくれる彼の姿に俺たちの頬も緩んだ。
「ありがとう」
「応援してます!絶対オンエア見ますね」
「ああ」
「僕、初めて言いますけど、いつまでも2人のこと支えていきたいんです」
「え?」
「2人は僕の憧れなんです。だから、頑張ってください!」
まさかこんなこと言われるなんて思わなかった。今までも懐いてくれてはいたが、そんな気持ちを持っていたなんて。わしゃわしゃと彼の頭を撫でる。
「うん。絶対2人でデビューするから、ドンスは俺たちのこと支えてくれ」
「はい」
「いや、そこはドンスのデビューを応援しろよ。ドンスだって夢に向かって頑張ってるんだから」
「あ、たしかに」
そう言って笑い合った。
「なんか今から緊張してきたなー」
ベッドに転がりながらジヨンが言う。
「気が早いだろ」
「だってさーもー」
そう言いながら嬉しそうに顔を綻ばせる彼、かくいう俺も顔がニヤついて仕方ない。
「へへ、今日から俺ヒョンのことタプヒョンて呼ぼうかな。今のうちから慣れておかないと」
まるで2人のデビューが決まったかのようにはしゃぐジヨンに、思わず笑ってしまった。
「だから気が早いって、落ち着けG-DRAGONくん」
「ぷ、ははは!君もじゃん!」
この日は気持ちが昂りすぎて上手く寝れなかった。
バックダンサーとしての初舞台は緊張して正直上手く覚えていなかった。録画した映像を見返すと、どうにか間違えず踊れていたようだが2人とも顔がガチガチに緊張している。
「ヒョンすごい顔強ばってる」
「お前もだろ」
そう言って笑い合った。緊張したが、でも楽しかったことだけは覚えている。こうやって2人で、これからも進んでいけたらいい。一緒に、隣で。いつの間にか俺も、ジヨンといる未来しか考えられなくなっていた。
「ふふ、これからもよろしくね、ヒョン」
そう言って擦り寄るように抱きついてくる。触れたところからじんわりあったかくなっていく。ぽかぽかして、ちょっとドキドキして、でも心地よくてふわふわした。
コメント
2件
ついにデビューした!!👏👏なんかたぷさんたちの成長見守ってるみたいで親になった気分です一生見守ります🩷🩷