注意事項
※公式から言及の無いヒーローとしての設定捏造あり
※死ネタあり
今回本当にあまりにもとてつもない方向の話なので色々と許せる方のみ閲覧お願いします。
大まかなあらすじ
不老不死のttが、今から100年後の世界で幸せになろうとするお話。
ここから伏字なし
────今は昔、この国には黒い丸っこい小賢しい奴らから民間人を守る東西8人のヒーローがいた。僕はその中の1人である、可愛い相棒を連れた綺麗な橙色の髪の青年に恋をしていた。でも、僕は不老不死。彼は不老ではあったけど、不死ではなかったんだ。こんな奴らが結ばれたって、互いに幸せにはなれないだろう。だから僕はこの気持ちを墓場まで持って行くことにしたんだ。まぁ僕の場合墓なんて無いに等しいから、つまりは永遠って事になるんだけどね。
一旦個人的な話は置いといて、僕らは無事に僕らの代で敵を壊滅に追い込んだ。今はその残党を名乗る奴らがたまに顔を出すからその対処をするぐらいで、随分暇になった。そう、それは8人から3人になっても手が充分行き届く程に。
「どう?ここまで理解した?」
目の前にいる水色メッシュが入った金髪の少年は僕の家へ遊びに来るガキだ。ヒーローに憧れていると言い、とある3人のヒーローの変身デバイスが置いてある我が家に来ては目を輝かせている。
「えーテツが失恋した事しか分からんかった!ヒーローの話聞きたい言うたんは俺やけどテツの話難しいねん…」
「あはっwじゃあちょっと路線を変えて、君の先祖の恋愛遍歴でも話そうか!マナ…ん”っ君のひいお爺ちゃんは凄い経験談持ってんだぜ?いつか教訓として聞いておくべきだね。」
そう長老らしく教えを説いていると、あの頃よりデジタルチックになった夕方4時半を知らせるチャイムが鳴る。
「あ、もう帰らな怒られる!じゃあなテツ!!またテツの失恋話聞きに来るわ!」
「かっこいいヒーローの話を聞きに、だろ!!ちゃんと前見て気をつけて帰れよ少年」
彼を思わせる笑顔でこちらを振り返り、手を振る小さな姿。
「…君に似て随分可愛いガキじゃない」
───そう、これは僕ら8人でヒーローをしていた時から、100年程経った時代のお話。
ひいては僕。佐伯イッテツの失恋話だ。
翌日
世間は春休み。目の前のガキはお昼をダッシュで食べてきたのか、口の周りにカレーを付けたまま僕の家のチャイムを鳴らしてきた。
「おいおい口ぐらい拭いてから来なよ…」
「早くデバイス見たくて!!お邪魔します!」
ドタドタと上がり込み、彼はご丁寧に手を洗う。口を拭く時間はないのにちゃんとタオルは持ってきたようで、しっかりと水気を拭き取りデバイスのある方へ走っていく。
最近彼はウェン君の使っていた大剣に興味があるようでいつもキラキラした目で見たり恐る恐る触ったりしている。ヒーローオタクな所まで遺伝しなくていいんだけどなと彼を眺めながら思う。すると少年がこちらを期待の眼で見つめてきた。
「テツ?ヒーローのお話してくれるんとちゃうの?」
「難しくて分かんないって昨日言ってたじゃないか君」
「わからんけど聞きたい!」
素直なガキのために、僕はまた昔話をする事にした。
〜〜〜〜〜〜〜
昔話をし始めたその10分後、かくれんぼがしたいと言い出し、僕の手を引き公園へ引っ張っていく少年。ヤニにまみれた人間を走らせるんじゃないよ…
公園へたどり着くなりベンチへ座り込んだ僕に彼は言い放つ。
「3分…いや5分経ったら探しに来てなテツ!!」
「…はぁ、っ望むところだ…」
5分というつかの間の休息を取り、少年のお望み通り探しに行こうと立ち上がった。
「佐伯イッテツ様のお通りだぁ!!隠れてる輩はさっさと出てこい!!」
持ち前の演技力を使い、ヴィランさながらのガニ股で公園を闊歩していく。僕に鬼を任せるなんて彼もまだまだ甘いなと思いながら、あらゆる遊具や茂みの中を探して回るのだが中々いない。
彼の帰るタイムリミットが近づき不安になりながらも茂みの中を突き進んで行く。すると大人が四つん這いでやっと通れそうなサイズの洞穴を見つけた。向こう側が明るくなっており、おそらく子供が作った公園内の抜け道だと理解した。土で服が汚れるのも承知で洞穴を進んでいく。
「お〜い少年?そこまで本気で隠れなくたっていいんだぞ……」
明るい向こう側にたどり着き、目を細める。
予想は外れ、そこは公園ではなかった。しかし確実に見覚えのある、おおよそ100年前の自宅の目の前だった。
「…え?」
頭が考える事をやめる。今の街中とは雰囲気が違う。だし、僕の家…?100年も残ってる訳ないよな…。と言う事は、タイムスリップ?
急いで100年前で言うスマホを取り出す。そして絶句した。
2025年。…
電源を落とす。再起動。画面を確認する。
2025年。
僕はその場で意識を失った。
「────────!!」
「────ツ!!」
「おいテツ!!」
懐かしい声に目を覚ます。眼前には僕が100年以上片思いし続けている橙色の髪の彼。胸元にはキリンちゃんまでいる。
「おいお前大丈夫か?今日のオリエンスの集まりテツと合流してから行きたくて、朝から連絡してたのに既読つかないし、迎えに来たら家の外で倒れてるし、…って泣いてる!?」
…彼が、っ喋ってる。
倒れ込んだ僕の頭を彼が腕でそっと支えてくれている。
あぁこんなに筋肉質だったっけ。陽向のような匂いがする。急に泣き出した僕を困惑した目で見るリト君。
「っ……うぅ…っごめん…ごめん。何でもないからっ…。ちょっとだけ、抱きしめても、いい…?」
「え…?あ、あぁ別にいいけど…」
困惑する彼にまともな説明もせず抱きつく。彼の匂いにコーヒーが混ざっている。…毎朝飲んでるって言ってたっけ。そんな事を思い出してまた涙が止まらない。結局リト君に肩を支えられながら一度僕の家の中に入る事になった。鍵が開いているか不安だったが問題なく開き、玄関横にご丁寧に鍵が置いてあった。
当時のままの僕の家には座椅子がまだ置いてある。キッチンには当然のように鎮座するライターとタバコ。そんな家具一つ一つですら僕の涙腺にことごとく訴えかけて来るので、結局リト君と出会ってから1時間ほど泣き続けていた。
「…なぁテツ?調子悪いなら集まる日ずらそうか?」
本当に心配してくれているのだろう。彼は無言で泣き続ける僕の横にずっと居てくれて、ティッシュやらタオルやらを差し出してくれてる。
「…ううん大丈夫。ウェン君とマナ君にも会いたい。」
「ふっw会ったらまた泣くとか無しだぞ?」
「ごめんだけど無理な約束だなぁ…」
リト君は困った顔をしながらもウェン君達に遅れる連絡をしてくれたようだった。僕もかつての記憶を思い出し、押し入れの奥にあったはずのフード付きパーカーを取り出して泣き腫らした顔を隠しリト君と家を出た。アジトまではタクシーで向かったが、懐かしいお店やアジト近くの街並みにまた感極まってしまい少し泣いた。その間もずっとリト君は背中をさすってくれていて、僕の好きなった人に狂いはなかったと独り思う。
無事アジトに到着。一人静かに深呼吸をし、目の前に広がるであろう光景を先に想像する。僕ら各自のスペースと、そこにいるウェン君とマナ君。待たせちゃったし、彼は既にハイボール飲んでるかな。マナ君は未来のとある少年のお陰で容易く想像が出来たので、心構えが出来た。
はずだった。
🐝「テツ!?リトから全然泣き止まんって聞いたで!?なんか嫌な事あったんか?体調悪いんか?」
🦖「リトセクになんかされた訳じゃないよねー?一緒に朝まで飲んであげようか?」
ドアが勢いよく開いたと同時にマナ君が僕の手を握る。ウェン君も後ろからハイボール片手に心配の目線を向けてくる。途端に涙が込み上げて来て、もう自分の力じゃ留めようのない感情が涙となって吹き出た。
🤝「うっ…うわぁぁぁっ…」
🐝「ちょっ!?テツ!?」
🦖「ありゃりゃ。これは重症だね」
🌩「俺がテツ見つけた時からこんな感じ。たまに落ち着いて話したと思ったら「大丈夫」って。これのどこが大丈夫なんだよ…」
心配されているのも、迷惑をかけているのも分かっているが、本当に自分の意思で止められない程に悲しく、嬉しく、幸せで。アジトの玄関でマナ君に倒れるようにして抱きつき、結局またそこから1時間は泣いていたような気がする。
僕に抱きつかれたままでもマナ君はゆっくりとソファのある方へ僕を連れて行ってくれて、そんな彼の優しさにまた感極まってしまう。だが流石に泣いているだけではそんな彼らに不誠実だと思い、ゆっくりと呼吸を取り戻すように深呼吸をした。僕がどうにか喋れるようになると、彼らは様子を見ながら質問をしてきた。
🦖「んー色々聞きたいけど、まずは体調が悪いかどうかだけ教えてくれるー?」
完全に園児に話しかけるような口調だが、そこにツッコむなんて無粋な事は今の僕には出来なかった。
🤝「体調は…っ悪くない。大丈夫」
🌩「その大丈夫っていうのやめろよ。絶対大丈夫じゃねぇんだから」
🐝「リト!言い方きついで。でもリトの言う通りや。何かあったんやろ?」
🦖「マナ〜?そういう曖昧な質問は答えにくいよ?だし、何かあったっていう所で言うと、僕らのせいじゃない?リトから聞いた話とテツの様子を見るにって感じだけど」
🌩「…俺らが泣かせたのか…」
🐝「…っ!?ごめんテツ…俺なんも気づかんでテツの事傷つけてたんか?謝っても許されへんけどごめんっ」
🤝「いやっ違うよ…!みんなのせい…といえばそうなんだけどそうじゃなくて…」
不安そうな目をしたみんなを安心させたくて、泣き腫らした顔で精一杯笑いかけた。
🤝「…全部僕の見た夢の話だと思って聞いてくれる?」
頷く彼らを見て、僕は100年後から来た事を伏せてみんなが死んでしまう夢を見た事、一人で生きていく夢を見たと説明した。何となくこういうタイムスリップ物では自分が未来から来た事を言わない方がいい風潮があるため、僕もそれに習った。
🌩「お前っ…そんな夢でわんわん泣いてどうするんだよ」
🤝「だって!…実際僕はみんなと一緒には生きられないんだよ?どうしたって別れが来るから、それがすごく…辛くて」
🐝「…俺らの事、大事に思ってくれてるからこそこんなに泣いてくれたんやな。」
🦖「もー…わざわざ分かりきってる事言うなって…僕らだってテツの事大事に思ってるよ」
🌩「えぇ珍し。ウェンそんな事言うんだ」
🦖「僕筋肉ゴリラとは違って優しいんだよね」
🌩「誰が筋肉ゴリラじゃぼけ」
たわいない会話に吹き出してしまう。マナ君も僕につられて笑った。自然とアジトが笑顔に包まれていく。僕はやっぱりこの空間が何年経っても大好きだ。
その後、打ち合わせの予定だったが変更して、ピザやお寿司を頼みがてらテレビゲームやボードゲームをする事になった。ヒーローとか任務とか未来から来たとか関係なく、その瞬間だけは本当の友達として僕らはこの時代で交われた。
後日打ち合わせの予定を組み、この日は解散した。リト君が心配してくれたので、有難く家まで送ってもらう事にした。
「…家ん中入ってまた泣くなよ?」
「あはは。今度は約束しよう。」
「あと、どうしようもなく辛くなったら電話でも何でもしろ。必要ならまた俺テツん家まで行くから。」
「…ありがとう。」
そんな君を好きになった事、心から誇りに思うよ。
笑顔で彼に手を振り、玄関に向かう振りをする。
自宅を通り過ぎあの洞穴へ向かった。
今日は本当に楽しかった。まるで夢のような時間だった。
…本当に、みんなが死んだのが、夢だったらよかったのに。
それでも僕は戻らなきゃ。マナ君のひ孫に、かくれんぼの途中で抜け出した事も謝らなきゃだし。
じゃあね、みんな。もう一度会えて心から幸せだったよ。
「…ふぅ。」
洞穴を通り抜けると、突然の頭痛に地面へひれ伏してしまった。
大量の記憶が流れ込んでくる。
……っこれ…!つまるところのバタフライエフェクトってやつか…っ。僕が過去に行って、とあるヒーロー達の打ち合わせのある日を泣き腫らして変えたから!その行動で僕の元々いた100年後の未来が変わったのか。その更新された100年分の記憶が今流れ込んで来ているんだ。
やっと頭痛が止まり、記憶を整理する。
………え?
どういう事だ?
僕が毎日会っていた少年の存在が無い。ヒーローに憧れて、幼いながらにこんなじいさん(21+∞)の話を毎日聞いてくれた彼の存在が、この時代に行き着くまでのどの記憶にも無い。
…混乱している。深呼吸して自分を落ち着かせる。もう少し思い出そう。少年の事だけじゃなく、マナ君の事を。
僕らヒーローはKOZAKA-Cを殲滅するために行った大規模な戦いで負傷、…そしてこの戦いによりウェン君とリト君が死亡した事でマナ君が精神を壊してしまい、ヒーローを引退した。その後休みを経てから回復し、彼が安心できる環境で家庭を築いた。そして彼が亡くなる直前、
「テツは…不老不死なんやろ?…ならさ、俺が死んだ後も、俺の家族の事守ってくれへん?…テツはあんな事があっても…ずっとヒーローやってる凄いやつだから。だからこそ頼みたいんや。俺のひ孫とか生まれて、大きくなったら、好きな子寝盗られんようよーく俺の教訓教えといてくれ。」
と託された。最後まで人を笑わせる事を忘れない、根っからのコメディアンで最高のヒーローだった。
この世界線にはこの記憶が丸ごと存在していない。と言うことは、マナ君はヒーローを引退しなかった。だから家庭を築く事はなかった。つまりひ孫の彼も存在しない…!
って事は!!マナ君がヒーローを引退しない未来を作れたって事は!!!
僕のこの100年後の未来を自由に変えられるって事だ!!
僕が、リト君に好きって言えた未来に!!
KOZAKA-Cを殲滅し、ウェン君もリト君も寿命いっぱい生きれる未来に!!!
…それから!!僕のこの呪いも解けて、もしかしたらっ…みんなと一緒に生きていけるかもしれない未来に!!!!
そして、もしかしたらまた、ひょんな奇跡が起こって、ヒーローに憧れる少年に出会えるかもしれない。
僕のヒーローになるんだ!!僕!!!
「とは言ったけど、どうしようかねぇ…」
ヒーローオタクの話し相手が居なくなった僕は、マナ君達の変身デバイスを目の前に掲げながら机に向かっていた。ノートに理想の未来を手に入れる入念な計画を書き出していたのだが、例のバタフライエフェクトの効果がどれほど出るのかがわからず中々進まなかった。実際僕は何度過去へ戻れるかも分からないし、そもそもリト君に告白する度胸もないし…。
「まぁまずは行ってみよう!…狙った過去に飛べるか分からないけど、強く考えてみる事から始めよう…!」
そしてあの洞穴の前までやってきて、強く念じる。
リト君が見回りに行ってて、アジトにマナ君とウェン君が居る時を狙う…!リト君にいきなり告白する勇気ないからまずは2人に相談っっ!!
「うぉぉぉお!!!」
轟速はいはいで洞穴をくぐり抜け、僕は勢いよく立ち上がる。スマホを確認、2024年○月。この日が僕の条件に合ってるかはアジトに行ってみないと分からない。
「よし、行こうアジトに!」
一旦こんな感じです。
まだお泊まりの方全然書けてないのに思いついてしまったので上げました。
こういう雰囲気のお話って需要ってありますか…?
続くかもしれないですし、また違うrtttを上げるかもです。
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めっちゃよかったし、めっちゃ続きが気になります! もし書けたら楽しみにしてます♪