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#ベリアン・クライアン
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ケイティはパレスの結界を張った範囲全てを新たな欠片として元の世界から切り取ることで、執事達の安全を守りつつある程度の自由を確保しようと考えていた。それに、一度欠片にしてしまえば他の欠片と組み合わせてもっと行動範囲を広げることもできて、異世界へ渡るための鏡や魔法陣もある程度の条件を満たせば必要なくなる。
グロバナー家からの呼び出しがかかるまで多く見積もって1年、短ければ3ヶ月といったところだろうか。これはケイティや兄弟がどこまで天使狩りに力を貸すかで変わってくる。全ての天使を殲滅し平和が訪れるか、ケイティが天使を防ぐ防殻で世界を包み込んでしまえば、天使狩りの必要がなくなり執事達は処刑されてしまう。ただし、ケイティ達が一切関わらなければ天使を殲滅する前に全滅するので、ケイティ達は適度に執事達を助けていかないといけないのが厄介なところだ。力を貸しすぎたら欠片を完成させる前に天使狩りが終わってしまい、協力を惜しめば脱落者が出る。その塩梅がとても難しい。
天使狩りが終わるまでにパレスと庭を世界から切り離すための準備を終わらせ、買い物などに不自由しないように異世界にあるケイティの拠点にいつでも飛べるように玄関ドアに細工をしなくてはいけない。それだけのことを天使狩りもしくは天使から世界を守る防殻を作るのを終わらせなくてはいけないとなると、もう何も考えずに防殻を作るなど馬鹿のやることだ。そんなこと絶対にしない、とケイティは防殻を作るために準備していた魔導書や魔導具を机の上から乱暴に払い落とした。落ちた魔導書や魔導具は床に落ちる直前で止まって、元の収納場所に飛んでいく。
K「とにかく時間を稼ぎつつパレスを欠片にする準備をしなくちゃ…
私は天使狩りに行ってる暇なんてない。そこは兄ちゃんに任せて…兄さんには処刑するのはやめるように何とか丸め込んでもらえないかな?…いや、ダメだ。兄さんがどう頑張っても未来が変わることにはならない…」
ケイティは机の上に鏡を出現させて未来の可能性を幾つも覗いては、時間は違えど変わらず処刑される執事達の姿を見た。やはり執事達を助ける方法はあの世界から切り離して、グロバナー家や民衆との接触を絶つことしかなかった。
ブランが交渉で処刑までの時間を延ばすことはできても、処刑される未来を変えることはできなかった。
ノワールが処刑に賛成した貴族達を襲撃して首を取ったらむしろ反逆罪で処刑が早まるし、ノワールは命からがら憲兵や民衆から逃げる羽目になる。ケイティが貴族狩りに協力して処刑を望む人々を殺し尽くしたとしても、悪魔執事の主が人間を襲うと言われて異世界に逃げるしかなくなり、結局は執事達に責任を被せられてしまう。
兄弟では未来を変えられない以上、ケイティの動きが未来を左右すると言ってもいい。
しかし、虐殺を行おうと、貴族達に執事達が無害であることを説明しようと、天使を弾く防殻が守ってくれるけれど100%安全とは言えないから執事達は今まで通りグロバナー家の下で働かせてくれとお願いしようと、執事達への不信感や人間の脅威となりうるという考えを払拭することはできず、いつか必ず処刑される未来が待っている。
ならばケイティにできることは執事達を異世界に逃がすことだけ。
兄弟は天使狩りと交渉以外頼れない。ケイティ1人で執事達を守るしかない。ノワールと執事達が天使を狩り尽くす前に全ての準備を終わらせ、パレスを1つの欠片としてあの世界から切り離す…もうここからは時間が1番の敵となるだろう。それと、ノワールに天使狩りを頑張りすぎないように言っておかなくては。
ケイティは途方もないタスクを少しでも減らそうと欠片を作るための魔法陣を展開するため準備を始めた。
N「…おい、ケイト。もう朝だぞ?また徹夜したのか?」
B「もう執事さん達、朝ご飯食べて帰る準備終わらせてるよ?パレスまで送ってあげるんじゃなかったの?」
いつの間にか朝になって、兄弟が魔導書の図書館にケイティを呼びに来た。ケイティは置く場所がなくなって縦に伸びた本棚から魔導書を取り出しているところであり、浮遊魔法を使って宙に浮いた状態から魔導書と一緒に兄弟の前に急降下した。
K「ごめんごめん、つい夢中になっちゃって」
ケイティは兄弟の前にすたっと着地して浮いたままの魔導書を机の上に指先で誘導して置いた。
K「じゃあパレスに戻る鏡を作らないとね!えーっと、図書館とサロンとお風呂でよかったっけ?」
N「図書館とサロンと食堂だぞ?ケイト、大丈夫か?昨日からおかしいぞ」
K「え!?いや〜…うーんと…言わなきゃダメ?」
B「僕達には言いたくない?」
ケイティは兄弟にどこまで話してよいものかと考えて、全部吐き出してしまうことにした。どうせ後々絶対に分かることだ。今話しておいたほうがもっと楽に執事達を救うことができるかもしれない、と淡い期待を抱いてケイティは兄弟の顔を見上げ、覚悟を決めた強い瞳で兄弟の目を見てパチンと指を鳴らした。その瞬間ケイティと兄弟以外の時間が止まり、鏡に写った執事達の動きも止まった。これはケイティが内緒話や誰にも聞かれたくない話をする時の癖だ。兄弟は昨晩から様子のおかしかったことに関して絶対に情報を漏らしてはいけないと肌で感じてケイティが息を吸って言葉を発するのを緊張しながら待った。
K「実はね…」
執事達が処刑される未来が何をやっても変わらないこと、処刑までの時間が少ないこと、兄弟がどんなに頑張っても逆効果になるか時間稼ぎしかできないこと、助ける方法はあの世界から切り離すことだけであること…ケイティは今まで見てきた未来が全て執事達の処刑に繋がることを伝えた。
K「…だから、兄ちゃんは力の解放をしたら最低限の協力だけをしてほしいの。脱落者が出ないギリギリを維持してほしい。執事の皆が怪我したりするのは嫌だけど、無傷でサクサク勝っちゃったら…多分魔法陣の完成が間に合わなくなって詰むことになると思う」
兄弟はそんな未来が待っていることに驚いて、ケイティの様子がおかしかったことに納得した。
しかし、わざわざパレスを欠片にしなくとも依頼に行った執事達を招いた屋敷に全員を連れてくれば魔法陣を組む必要もないのでは?とも思った。
B「キティが焦るのも分かるよ。でも、ただ異世界に招くだけじゃダメなの?どうしてもパレスを欠片にしなくちゃダメなの?」
K「え?……それは……えっと……」
ブランの言葉にケイティは執事達が絶対に助かる方法を求めるあまり視野狭窄に陥っていたことに気付き、絶対にパレスを欠片にしなくてはいけないのか?という疑問がやっと生まれた。
N「確かに住み慣れた屋敷で暮らしてもらう方が異世界に馴染みやすいだろう。でも、処刑されると知った後なら、どんな場所だろうが生きていていいところで暮らしてもいいって思うんじゃないか?1人で突っ走る前に相談しろよ、アンポンタン」
ノワールは鳩尾の高さのケイティの頭を小突いて茶化し、重い空気を払拭してくれた。
K「……ごめんなさい」
ケイティが俯いて小さく謝罪すると、兄弟はふっと優しい笑顔を浮かべた。
B「じゃあパレスを欠片にしなくても執事さん達を助けられる方法を考えようか。三人寄れば文殊の知恵、だからね。きっといい方法が見つかるよ」
N「とりあえず、何でパレスを欠片にしないといけないって思ったかの説明を聞きたい。あの世界の住人は異世界に干渉できる可能性はあるのか?まずはそこを確認しないと確実にあの世界から断絶する方法を考えないといけないが、そんな知識や技術が無いならただ単に異世界に招くだけで終わる話だろ?魔法を使えるのは多分魔女族くらいしか居ないと思うんだが、魔女族は悪魔執事を悪く思っている様子はなかった。なら、一番簡単な方法を取ったっていいんじゃないか?」
ノワールの問いを噛み砕き、ケイティは暫く考えて口を開いた。
K「…あの世界の住人達は基本的に異世界に干渉できるほどの魔力は持っていないし、魔法だって発達していない。当然だよね、悪魔の力に頼らなくては天使狩りも満足にできない訳だもの。魔法が使えると思われる魔女族でさえ天使には対抗できない。兄ちゃんの言う通りだよ。
どうしてパレスを切り取って欠片にしようと思ったかというと、ずっと暮らしていた屋敷には愛着があると思うし、どんな手段を使ってもあの世界の住人が干渉できない私の守護下に置きたいと思ったから。それと、他の世界と繋げるのが簡単だから…」
ケイティは簡単な魅了の魔法と気分を高揚させる魔法だけで隷属の契約書にサインをした貴族達のことや、エルヴィラに会って握手をするついでに魔力の測定をした結果を鑑みて、あの世界の住人達には異世界に干渉できるほどの力はないと断定した。
B「まぁね、確かに住み慣れた屋敷から離れるのは少し抵抗感があるかもしれないよね。折角趣味で集めていた物だったり、毎日手入れしていた庭だったり、贔屓にしていたお店だったり、家族や親戚だったり…それを全部手放して知らない場所で暮らしてって言うのは少し可哀想かもしれないね」
N「うーん…確かに複数の異世界に繋げたいって考えてるなら欠片にしたほうが後々は楽なんだよな。でも、新しい…まっさらな欠片にパレスを再現した屋敷を作って、そこで暮らしてもらうほうが現実的じゃないか?集めてた物とか本棚とかは引っ越す時に転送してやればいいし、全部を再現しなくていいから魔力の消費も少ない。パレスを欠片にするよりよっぽど簡単だろ?それでいいんじゃないか?」
兄弟の言葉はケイティが考えていたプランを否定しつつ、より簡単に、より確実に、執事達を救う方法を提案し、執事達が快適に暮らせるようにするというケイティの理想を叶えてくれるものだった。
ケイティは早速、新しい欠片にパレスを再現した屋敷を作ってそこに執事達を住まわせる未来の可能性を見てみることにした。
空中に鏡を呼び出して手をかざし、未来を映す。
執事達に危険が迫れば再生が止まるように設定して早送りで未来を見ていく。
鏡に映った未来はノンストップの高速で流れていき、悪魔との契約を破棄して普通の人間となった執事達が寿命を全うして最後の1人が息を引き取るまでを映してブラックアウトした。
K「……できた…執事達が幸せに暮らせる未来が…!」
ケイティは鏡を消すと、無邪気で無垢な清々しいほど明るい笑顔を浮かべて「やったーー!!」と叫びながら両手を上げて走り始めた。
きゃはは、と子供のよく通る声で笑いながら図書館の中を走り回り、パレスを切り取るため集めて積み上げた魔導書にダイブし「痛ーーい!!きゃはははは!」とはしゃぎまくっていた。
やっといつもの元気が戻ってきたな、とノワールは微笑ましく見守り、ブランは魔導書にダイブしてページがぐちゃぐちゃになっているものもあることに大丈夫かな、と心配しながら見守っていた。
一通りはしゃぎ終わるとケイティはぐちゃぐちゃになった魔導書の山から這い出してきて、そこだけ魔法でダイブする直前の状態に時間を巻き戻して片付けた。ぐちゃぐちゃになったページも元に戻り、収納されていた本棚に戻っていく。
全ての魔導書が片付いた後で、ケイティはまた指を鳴らして時間停止を解除した。
K「よし!まずはパレスとこの屋敷を繋いで4人を帰してあげないとね!パパっとやってくる!お兄ちゃん達、ありがとうね!」
ブンブン手を振りながらケイティは鏡の中に入って、帰る準備を終わらせて待機している執事達のところへ飛んでいった。
鏡に映っているケイティは執事達と話して楽しそうにケラケラと笑っている。
N「とりあえず、これで暫くは平和に…なるか?」
B「うーん…多分そうじゃない?キティは忙しくなるだろうけど、指輪を作ったときみたいにずっと引き篭もって作業したりはしないはずだから。それに、パレスの再現くらいならそんなに大変じゃないでしょ?」
N「そうだな。…それで、俺は天使狩りに参加して天使を倒しまくって大丈夫なのか?パレスの再現するなら大体1月くらいかかるだろ?それまでに天使狩りが終わっちまったらケイトが望む未来が変わる可能性がある…俺はどこまでやっていいんだ?」
B「その辺はまたキティに話す時間を作ってもらって相談しよう。とりあえず少しは時間を稼ぐのが安牌だと思うから、話がつくまではガンガンやるのは避けて」
N「んじゃ、頑張りすぎない程度にやるかぁ。本当は空中戦に持ち込んで天使が地面に降りてくる前に倒しちまいたいところだが…執事達の顔を立ててやるつもりでサポートに回る。それくらいならいいだろ?」
B「それならいいと思うよ。僕もできることはやってみるよ。交渉次第で天使を殲滅した後の処刑までの時間を延ばせるらしいからね」
兄弟は頷き合ってからケイティが飛び込んだ鏡を見つめた。
鏡の中では3ヶ所に鏡を設置してパレスと繋ぎ、雪山に行った4人がパレスに荷物を置いてから他の執事達を連れてきて、屋敷のすごいところを自慢気に教えていた。
B「…このまま幸せになってほしいね」
N「そうだな。でも、さっきは悪魔との契約を破棄して普通の人間に戻す未来だったよな?不老のままずっと一緒に居てくれるのを望みそうなのに、どうして人間に…?そもそも悪魔との契約を破棄するのってどうやってやるんだ?」
B「普通の人間として寿命を設けることで転売業で蓄えたお金を節約できるから…とか?でも、介護とか始めたら商売どころじゃないよね。安全が確保されるって分かってるなら不老のまま過ごしてもらう方が手はかからないはずだよね」
N「ケイトは何考えてるんだか…。そこも今度きっちり話つけるぞ」
B「そうだね。不老のままにするか、人間として生きるか…それは執事達自身で決めるべきことだと思う。個別にできたらの話だけどね」
N「あー…なんか一気に契約してる悪魔を集めて倒して契約を無理矢理解除するとかやりそうだもんな。個別には難しいかもなぁ」
兄弟は鏡を見ながらさっきの高速で流れていった未来の可能性を思い出しながら頭を抱える。どうして執事達が普通の人間になったのか分からなかった。しかし、もしかしたら時間を止めている間に悪魔を倒して契約をなかったことにしてもらった可能性も否定できず、結局のところケイティの気まぐれで未来が変わってしまうことになりそうだと、兄弟は溜息を吐いた。
そうこうしている間に昼食の時間になってしまった。鏡越しに食事の時間を知らせる振り子時計の音が無音の図書館に響く。
N「もう昼飯か」
B「もうご飯食べながら悪魔をどうするつもりなのか聞いちゃおうか」
N「そんくらい軽く聞くくらいがちょうど良さそうだよな。重くなりすぎない感じで行こう」
兄弟はとにかく早く執事達を異世界のパレスに引き取った後悪魔との契約をどうしようと考えているのかをケイティに問いただすことにして、鏡の中に飛び込んだ。
兄弟が転移する場合、鏡が設置してある場所とケイティがいる場所のどちらかを選ぶことができる。
今回は食堂に移動したケイティを追って転移することにした。
執事達全員が集まって次々に運ばれてくる料理にキラキラと目を光らせていたところに兄弟が突然現れて、もっとびっくりする羽目になった。
🐏「うおっ!?」
N「悪ぃ悪ぃ、びっくりさせて」
B「ちょっとキティに確認したいこともあるから同席していいかな?」
執事達はケイティに確認したいことってなんだろう?という疑問で首を傾げるが、ケイティの保護者として扱っている兄弟…というか、ほとんど主様の仕事と交渉をやってくれている兄弟を拒む理由などなく、皆バラバラに頷いた。
今日もビュッフェスタイルの昼食で、すぐ空になる皿を魔法人形達がすぐに片付けては次の料理を持ってくる。
雪山登山に行った4人以外は、初めて魔法人形を見て挨拶をしようとしたり、目まぐるしく変わっていく料理に戸惑ったりしていた。
N「気に入った料理があったら追加注文したらいい。名前がわからなかったら俺達に言ってくれたら魔法で注文飛ばしてやるから」
B「まぁでも一皿につき4種類くらいしか料理のバリエーションがないから、料理をひたすら食べまくってたら1回目の料理が出てくるよ。人数も多いし待つって選択肢もないことはないと思うけど」
料理がどんどん変わっていくことに戸惑いを見せたり、全種類制覇したかったのに!と下げられていく料理の載っていた皿を悲しそうに見つめたりしている執事達が面白くて、兄弟は半笑いでフォローを入れた。
兄弟のフォローでちょっと安心した執事達は、さっきのこんな料理が美味しかったから食べたいだとか、次はどんな料理が出てくるんだろうとか、大分緊張がほぐれてきて雑談をぽつぽつと始めた。
🍽️「なぁノワールさん、ここの料理のレシピって貰えたりしますか?」
そんな中、ロノは料理への探究心が目覚めたらしく比較的仲のいいノワールに無理を承知で、料理のレシピを貰えないかと打診し始める。
N「あぁ、全然構わないけど…かなり分厚い魔導書だから読むの大変だぞ?それに魔法文字は読めないだろ?」
🍽️「魔法…文字…?」
B「こっちの世界では魔法使いだけが知っている特殊な文字を魔法文字って言うんだよ。そっちの世界の文字に翻訳してあげるからちょっと時間を貰ってもいいかな?」
ノワールの言葉にブランが補足を入れてロノに少しばかり待ってもらえないかと言えば、ロノはすぐに「分かりました!」と元気に返事を返した。
執事達が新しく追加されたチーズドリアに行列を作っている時に、ノワールとブランはパンに齧りついているケイティに先程の疑問をぶつけた。
B「ねぇ、キティ。さっきの未来のことでちょっと確認したいことがあるんだ。いいかな?」
ケイティは口いっぱいに入ったパンを咀嚼しながら返事を返す。
K「ん~?」
N「さっき見せてもらった未来のことなんだが、執事達に悪魔との契約を破棄させて、最後の1人を見送るまで一緒に居る未来だっただろ?悪魔との契約を破棄することはどうしたらできるんだ?」
B「それに、執事さん達は限りある命と老いていく身体を欲しているのか考えた?確かに天使狩りをしなくてよくなれば悪魔執事である必要はない。でも、古参の3人は2000年以上生きてるし、沢山の仲間達を見送ってきたはずだよね?だんだん歳をとってだんだん執事さん達が寿命で死んでいくのを見せるつもり?悪魔との契約を破棄させるっていうのはキティのエゴじゃないの?」
N「悪魔と契約をしている限り執事達は不老だ。それならまた俺達にしたように、魔法を教えて、一緒に世界を渡り歩いて、商売をして…そんな生活をさせるほうが執事達は死の恐怖に怯えることなく、ケイトの手を煩わせる心配もしなくて済む。本当に悪魔との契約を破棄する必要はあるのか?」
ケイティはもぐもぐとパンを噛んで飲み込み、うーん…と考えてから答えた。
K「…確かに悪魔との契約をしている限りは不老だよね。でも、もしかしたら何かがきっかけになって悪魔化するリスクもあるでしょ?それに異世界に渡る時には少しだけど魔力を消耗するの。でもその魔力は悪魔から借りるか私から借りるかしないといけない。どちらから借りたほうが安全か…考えなくても分かるでしょ?」
兄弟は顔を見合わせて今まで異世界を行き来して本当に魔力を消耗していただろうか?と首を傾げた。
K「お兄ちゃん達は元々魔法が存在する世界出身だから魔力はそこそこ持ってたんだよ。その魂が私が作った入れ物に入ってるから魔力の量は普通の人間とは桁違いなの。だから異世界を渡っても魔力の消耗に気づかなかったんだと思う。本当に微量だからね」
ケイティの説明を聞いて、兄弟は唸った。
要するに執事達は異世界を渡るための微量の魔力すら持っていないということになる。しかも、その魔力を悪魔から借りるとなると悪魔化のリスクが付き纏う。
N「…どうにか不老のまま生かす方法は無いのか?」
B「ほら、僕達みたいに死んだ後に別の入れ物に魂を入れるとか…」
そこでブランが目を見開いた。
K「?兄さん?」
急に目を見開いて黙ってしまったブランにケイティが不思議そうに声を掛ける。
B「死んだ後に魂を別の入れ物に入れる…それじゃない!?だって僕達はそれで不老になってるんだから!それに、執事達が死ぬのって何もしなければ処刑されるから割と早く訪れる…。キティは嫌かもしれないけど、処刑ルートで考えたほうが悪魔化のリスクも考えなくていいし、魔力を与えることもできる。キティが頑張れば不死にはできなくても不老にはできる。いい案だと思わない?」
N「…まさか、処刑を受け入れた上で魂を縛り付けるだなんて…。でも、そうだよな。それが確実かもしれない。貴族達や民衆も一度殺した執事達が生まれ変わって生きているだなんて想像しないだろうからあっちの世界で引っ越しの準備を進める時間も確保できる…。いい案だな。ケイトはどう思う?」
ケイティはそんな力技で執事達を不老のまま手元に置くという方法は思いつかなかったらしく、ぽかんとした表情をしていた。
K「…じゃあ…じゃあ、皆が処刑されるのを黙って見てて生まれ変わらせることで不老にして安全に手元に置くようにするってことだよね?……そしたら私は何のために処刑されなくていい未来をずっと探して探して……。やっと処刑されない未来を見つけたのに捨てなきゃいけないんだね…」
ケイティはポロポロと涙を流して今まで頑張ってきたことが全て無駄になったことを悔やんだ。絶望を経験して、貴族達にこき使われて、命を懸けて戦い続けた結果が処刑だなんて、執事達はそれで救われるというのか?新しい入れ物に魂を縛り付けたとしても処刑を承諾して見守ったケイティ達を恨む執事が出てくるかもしれない。皆に嫌われたくない、ずっと仲良しでいたい、そんな願いすら叶わないなんてケイティには耐えられなかった。
N「…ケイト…。辛いのは分かる。でもお前には普通じゃない手段で助ける方法がある。それも成功例がある方法でな。それは喜ばしいことじゃないか?」
B「そんなに落ち込まないで。ある意味執事さん達を生き返らせるのは貴族達への復讐にだってなるんだよ?生き返った執事さん達と一緒に貴族達を襲撃して憂さ晴らしとかもできるさ。ねぇ、僕を信じて乗っかってくれないかな?」
ブランがケイティに手を差し伸べる。
ケイティはグスンと鼻を鳴らして流れる涙を袖で拭うとその手を握った。
K「分かった、信じるよ。じゃあ計画立て直さないとだね!新しい欠片を作るのに大体1ヶ月、1人分の入れ物を作るのに3日はかかるかな。だから…2ヶ月半くらい?処刑はどんなに早くても3ヶ月後…間に合うかな?その辺は兄ちゃんが調整してくれるでしょ!うん!よーし、頑張るぞー!!」
ケイティはブランと握手していないほうの手を高々と上げてキラキラの瞳で笑った。
K「ふぁいとー!おー!」
NB「「おー!」」
3人は楽しそうに片手を上げてこれから頑張ることを誓い合った。
🫖「…主様、お食事中に大声を出すのも手を上げるのもはしたないですよ?お兄様達も一緒にこの後お食事の時のマナー講座をしましょうか」
⚔️「…ベリアンさん、それよりも不穏な単語が出てきたことを気にするべきではないだろうか?」
☔「さっきの「処刑」のことですね。しっかり説明をしていただかないと…私達、納得できませんよ?」
🦾「絶対にクソ貴族達のせいだな。生き返ってもっと強くなれるなら、主様と一緒に貴族達の屋敷を襲撃するのも悪くねぇ。俺は別に死ぬことは怖くないぜ?主様を信じてるからな」
熱々のチーズドリアを持って戻ってきていた執事達に詳しい説明を求められて、ケイティは楽しそうに皆の未来について語り始めるのだった。
コメント
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**寺島あおいです🌷** 第11話、じっくり読ませていただきました。 今回はケイティの“孤独な焦り”がひしひしと伝わってきて、胸がぎゅっとなりました。執事たちを救いたい一心で未来を覗き、何度も絶望する姿に、彼女の真っ直ぐさと不器用さが滲んでいて…。でも、ノワールとブランが「一人で抱え込むな」と優しく軌道修正してくれる場面、本当に温かかったです。 そして「処刑を受け入れて魂を縛る」という苦い選択肢。ケイティがあそこまで悔し涙を流すのも納得で、私も一緒に泣きそうになりました。それでも「ふぁいとー!おー!」で締める兄弟の絆の強さに、じんわり来ました。 執事たちのこれからの幸せ、心から応援しています。次話も楽しみにしていますね✨