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「あー、やっぱそっかー。なんとなくさーそんな気がしたんだよねー」
「いや、なんで・・?」
「どれだけいっくんのこと見て来たと思ってんのー。確かあのプロデュースしてもらう時、透子さん直々にいっくんから指名だったもんねー」
「いや、あれはホントにあの人がそのジャンルをメインに仕事してたし、オレはそこには関与出来なかったから」
「うん。最初はそう思ってたよ。私もそれは感謝してる。だけどさ、いっくん、その都度さ、スタジオとか打ち合わせとかついてきてたじゃん。あれ、私の為にしてくれてたんだなーって思ってたのに、いつからかいっくんの視線がずっと透子さんに向けられてたの、密かに感じてたんだよね」
気付かれてたんだ・・・。
オレ的には出来る限りそうならないように注意はしてたのに。
だけど、つい目の前で輝いてる姿を見たら、気付けば目で追っていた。
きっと普通の人なら気付かないレベル。
だけど、麻弥だから、気付いてしまったってことか・・・。
「麻弥の・・勘違いじゃない?」
一応念の為まだ誤魔化してみるも。
「いっくん・・・誤魔化すの下手だね。いっくんの嘘なんてお見通しだから。昔っから嘘つく時にいっくんの癖出るからすぐわかるんだよね」
「えっ・・!?」
「でも悔しいからそれ教えてあげないけど。いっくん昔っからそうなんだよね。私の為に優しい嘘ついてくれるんだけどさ。バレバレなんだよね」
そういえば昔から麻弥、そんなこと言ってたかもしれない。
麻弥も母親のことで寂しい思いをしたりした時、オレはオレなりに元気づけようとしてたことも多くて。
だけどたまに伝えにくいことは、正直に言えなかった。
きっとその頃から、麻弥はそんなオレの嘘も見抜いてたのかもしれないな・・・。
「だけど。それがいっくんの優しさなんだよね。そうやっていつも私を大事に考えてくれた」
そう話す麻弥は、少し寂しそうで。
そんな麻弥を見ると少し胸が痛む。
だけど、きっと。
麻弥も、ずっとオレが昔から近くにいたから、そんな気持ちになってるだけのような気がして。
オレが透子に出会ったように、いつか麻弥にも麻弥だけを想ってくれる人がきっと現れるはず。
透子に出会うまでは、別に誰にどう思われようが別に平気だった。
自分が思ってることを、全部理解してもらえるだなんて思ってないし、きっと理解もしてもらえないと思っていたから。
そもそも全部の自分を見せたいとも思わなかったし、知ってほしいとも思わなかった。
だから、誰に対しても自分のことを話したいだなんて思ったことはなかった。
だけど、透子に出会って、オレは初めて怖くなった。
透子がオレをどう想ってるだとか、嫌われたくないだとか、カッコ悪いとこ見せたくないだとか。
今まで気にしたこともなかったことや、カッコ悪い自分がどんどん出て来て、初めてそんな自分がいたのだと知った。
だけど、透子にはどんな自分も見せたいと思った。
どんな自分も知ってほしいと思った。
ホントはカッコ悪いとことか見せたくないし、ずっとカッコつけておきたいけど。
でも、そういうことより、どんな自分も透子には好きになってもらいたい。
どんな自分を見せても、どんな自分を伝えても、透子には好きでいてもらいたい。
自分のいい所も、悪い所も、透子には、全部受け止めてもらいたい。
オレが透子にそうであるように、透子もオレにそうであってほしい。
オレはどんな透子でも愛しくて、どんな透子でも見たいし知りたい。
一つ残らず透子の考えてること、オレに対しての想い、オレを見つめる表情、すべてを受け取りたい。
そんな風に想える相手は、透子、たった一人だけ。
そんな透子に出会えたことだけでも、きっとオレには奇跡みたいなモノ。
だけど、きっとそれは必然的な出会いだとオレは信じてるから。
だから、いつか。
麻弥にも、そんな風に想い合える相手に出会ってほしいと、心から願ってる。