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第2話、めちゃくちゃ面白かったです!「無害な空気」でありながら「圧倒的背景」を極めようとするテウルのスタンスが最高ですね。弟のルークへの教育も含めて、危機管理能力の高さに笑ってしまいました。一方で、無自覚に周囲を狂わせるレイの「狂気の愛され体質」と、それを遠くから生温かく見守る構図がたまらない。この二人が学園でどう絡むのか、めちゃくちゃ気になります!
一方、その頃。テウルが木の上で双眼鏡のピントを合わせ、弟のルークを愛でながら着々と「絶対安全圏」を構築していた同時期。
『掘られすぎて滅』の真の主人公――レイ・シルフィード(当時7歳)は、すでに「狂気の愛され体質(災難)」の渦中にいた。
◇
王都の郊外、緑豊かな小さな村。
平民の仕立て屋の息子として生まれたレイは、幼少期からあきらかに作画が違っていた。
ふわふわとした柔らかい髪、吸い込まれそうな大きな瞳、守ってあげたくなる華奢な身体。そして何より、息を吸って吐くだけで発動する『謎の全方位魅了(フェロモン)体質』である。
「レイちゃん! 今日も綺麗なお花を摘んできたよ! 僕と結婚して!」
「バカ言え! レイは俺と将来一緒になるんだ! 邪魔するやつはぶっ飛ばす!」
「レイ、僕の家に来たら美味しいお菓子を毎日あげるよ!」
村の男児たちが、連日のようにレイの家の前で取っ組み合いの喧嘩を繰り広げている。
ただの子供の喧嘩ではない。目つきがマジなのだ。
当のレイはというと、家の窓からその光景を怯えた目で見つめ、小さな肩をギュッとすくめていた。
(どうして……どうしてみんな、僕を巡って喧嘩ばかりするんだろう……)
レイの本音は切実だった。
彼は誰かと争いたいわけでも、特別チヤホヤされたいわけでもない。ただ「みんなと普通に仲良く、平和にお友達になりたい」だけなのだ。
しかし、神様は彼に無駄すぎる美貌と総受けの業(さが)を与えてしまった。
彼が誰か一人に微笑めば、翌日にはその「相手」が他の男児たちに裏で呼び出される。
彼が誰かに優しく手を差し伸べれば、周囲の男たちの嫉妬の炎が燃え上がり、村の平和が揺らぐ。
「レイ、お前は本当に可愛い子だけどねぇ……」
父親はため息をつき、母親は困り顔でレイを抱きしめる。
「もう少し大きくなったら、学園の特待生試験を受けなさい。貴族様たちが集まる大きな学園なら、こんな小さな村よりは安全かもしれないから……」
(学園……。うん、僕、頑張って勉強するよ。学園に行けば、きっと僕を争いの種にしないで、普通に接してくれる素敵な友達ができるよね……!)
純粋で無垢な7歳のレイは、目を輝かせてそう誓った。
――知る由もなかったのだ。
これから進む先が、村レベルの男ガキの喧嘩どころではない、「国のトップ層(王子・騎士・魔導士)」が愛憎をこじらせて世界を物理的に滅ぼしにかかってくる『ほら滅』の本陣であるということを。
そして、そのドロドロの地獄絵図の中で、「自分を全く奪おうとせず、遠くの木の上から温かい目(オペラグラス越し)で見守ってくれる銀髪の少年(テウル)」だけが、自分の唯一の精神的オアシスになるという未来を。
◇
一方その頃、俺――テウル・エクス(8歳)は、屋敷の自室で「ほら滅」の年表を羊皮紙に書き殴っていた。
「よし……これで第一王子ジュリアス殿下と、騎士団長の息子カゼルが学園でレイ(主人公)に出会うまでの時系列は完璧だ」
前世の記憶と、全108ルート走破の知識は伊達じゃない。
彼らが何歳でどんなトラウマを抱え、どういう経緯でレイの「狂気の愛され体質」に脳を灼かれるのか、俺はすべて把握している。
だからこそ、この幼少期という準備期間が重要なのだ。
(さて……問題は、俺がどうやって学園生活を【観客席】で過ごすか、だ)
原作のテウル・エクスは、子爵家という中途半端な高貴さに甘んじ、学園で平民出身のレイを見下していじめ抜く。結果、ジュリアスの冷徹な処刑剣か、カゼルの脳筋大剣によって「はい、退場!」となるわけだ。
だが、今の俺は違う。
**「無害な空気」**かつ**「圧倒的背景」**を極める所存である。
◇
「にいさまー、またむずかしいかおしてるの?」
部屋のドアがぽこんと開き、天使(弟のルーク)がぬいぐるみを抱えて入ってきた。
俺は瞬時に羊皮紙を裏返し、満面の笑み(毒気ゼロ)を浮かべる。
「やあルーク。いやなに、将来我がエクス家が『愛の泥沼紛争』に巻き込まれないための安全対策を練っていただけだよ」
「あいのどろぬま……?」
「そう。例えばだなルーク、もし将来、学園で『とてつもなく顔が良くて、周りの男を無自覚に狂わせる儚げな美少年』に出会ったらどうする?」
ルークは小さく首を傾げ、一生懸命に考えたあと、可愛らしく答えた。
「にいさまの言ってた通り、500メートルは離れる!」
「満点だルーク!! さすが俺の弟、理解が早くて助かる!」
俺はルークを抱き上げて頭を撫でまわした。よしよし、エクス家の危機管理能力は着実に上がっているぞ。
◇
だが、ただ逃げるだけでは「ほら滅」の世界は生き残れない。
なぜなら、攻めたちの愛が重すぎて最終的に世界が物理的に滅びるからだ。
「逃げるだけじゃ駄目なんだよな……。あいつらがレイを巡って国を崩壊させようとしたら、俺たちの平和な子爵家ライフも道連れだ」
つまり、俺に課された真のミッションはふたつ。
テウル・エクス自身の死亡フラグ回避(絶対安全圏の確保)
攻めたちの暴走による『世界滅亡』の陰ながらの阻止(観賞環境の維持)
「……まあ、2に関しては、彼らのドロドロの愛憎劇を特等席で観賞しつつ、ヤバい爆弾(世界滅亡フラグ)が破裂しそうになったら、遠くから小石を投げて軌道修正するくらいでいいか」
なにしろ、俺は前世で全108ルートを見届けた男だ。
あいつらの「萌えポイント」も「キレるスイッチ」も熟知している。
「待ってろよ、未来の総受け主人公レイ……そして狂愛の男たち……。俺は決して邪魔はしない。ただ屋根の上から、4K画質の双眼鏡(魔法具)で君たちの最高に尊い泥沼劇を見守らせてもらうからな……!」
庭の大木のうえで、夕日を浴びながら双眼鏡のピントを合わせる8歳のテウル。
その頃、遥か遠くの村で「男ガキどもの争い」に怯えていたレイ少年は、突如ぞくっと背筋を震わせたという。
(……なんか今、遠くから温かい……ううん、すごく『生温かい視線』を感じた気がする……?)
のちに学園で出会う二人の、これが(一方的な)運命の第一歩であった。
ありんす
981
隼人
71
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