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蘭【朝には帰る。飯はいらねーから♡】


恋人は残酷だ。そしてそれを無機質に部屋に鳴り響く通知音と共に伝えるスマホも

何度目だろう、“仕事以外”で彼が朝帰りをするのは…

初めは理解しようと私も努力したが凡人というか、私のような一般人には到底理解でき無い。

きっと彼の仕事上ハニトラ?とやらがあるのだろうと淡い期待を寄せていた時期もあったが、ことごとくその期待根本からへし折られていた。

彼の弟に彼が世間で言う壁ドンをしている時はついつい「お幸せに。」と勢い良く扉を閉めたのはいい思い出。

その後弟の竜胆くんが涙目になりながら必死に私へ弁明してる姿を、面白いのか愛おしいのかよく分からない表情で見つめる彼には嫌悪を抱いた。きっと自分の楽しめる“玩具”なら性別や血縁も関係なく遊び尽くすのだろう。そんな人間だ。

そうやって思い出を振り返りながら、自分の為に夕飯作りに取り掛かる。

正確には取り掛かろうとした。


【ガチャ】

和食の気分で、久々に出汁取りから味噌汁作ってみるかと息巻いているところに鍵の開く音。驚きと同時に身体が強ばる。

ここの家主は朝まで帰宅しないハズなので、考えつく相手が居ない。最悪の場合を想像してゴクリと生唾を飲み込めば、聞きなれた声と共に初めて聞く柔らかい声が近付いてきていた。

「あ゛。あー、キミ誰?出て行ってくんね?」

私に気付くなり、聞きなれた声の主である蘭が一瞬バツが悪そうに顔を顰めたがすぐ真顔になり言い放つ。隣の可憐な女性は蘭の服の裾をキュッと掴み恐怖の色を瞳の奥に落としていた。

きっとその様子だと、一人暮らしだと話を聞いていたのだろう。

それに気づいたのか、怯えている彼女をまるで私に見せつけるが如く愛おしそうに大切に大切に壊れ物を扱うように髪を撫で仕舞いには額にキスをして「大丈夫だからな。」と優しく微笑む。見た事のない表情、私には見せない一面。

ピキッ。ヒビが入った音がした。心にも彼を想う気持ちにも。氷点下まで気持ちが冷める、目が覚める。目の前の彼は迷惑そうにしては、私の数少ない私物をこちらめがけて放り投げると、耳元で今は邪魔しないでくんね?と囁き体を離してはそそくさと女性の元へ向かう。

彼女はきっと私と蘭の関係性に気付いたのだろう。私に視線を戻すと、ごめんなさい。と口パクをすれば大きな瞳を揺らした。

それから、私も身体を動かすのに時間は要さなかった。

浮気相手がとんでもないクズなら話は別だ、それでもあんな顔されたら最低で恨むべきなのはただ一人。

なにかの衝動に駆られたように外に飛び出す。

行先なんかどこでもいい。とにかく遠くへ行きたい。アイツの顔が見れなければいい。そしてこの涙が乾く場所へなら何処へでも……

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