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#mtp
ひより
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kurara
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コメント
3件

わ、わか、若井さんのストレートさが....刺さって抜けません😇 夏に良いイメージはありませんが、このお話を見ると、夏が好きになります(?)!! 休日投稿ありがとうございます❣️
読了しました🌷 夏の暑さと学校の静けさが匂い立つようでした。若井くんが抱きついた瞬間を「拒絶しないのは無自覚に嫌じゃないから」と書く距離感、そして「会えたから良かった」と言いかけて飲み込む元貴くんの心の揺れが、もう本当に甘酸っぱくて…。最後、若井くんがさらっと言い放つ一言で鍵を落としそうになるシーン、最高でした。お互い同じ気持ちなのに照れ隠しする二人、これからどうなるんだろうと胸がきゅんとします🍀
────七月二十五日。
夏休みが始まってはや五日。
早起きしなくていいことも、制服の袖に腕を通さなくていいことにも慣れ始めてきた頃。
なのだが。
「…っあー、最悪。なんで忘れ物……」
見事に早起きして制服の袖に腕を通し終えていた。
自転車のスタンドを足で乱雑に蹴りながらボヤく。
まさか学校にワークを置き忘れてくるとは。
こういう時に限って課題範囲のやつ。
どれだけ愚痴を言ったって慰めてくれる人は居ないしワークは手元に無いし。
終業式の日に比べても気温は上がる一方で。
じわじわと肌を蝕むような暑さがどうにも心地悪い。
自転車を走らせながら溜息がひとつ、夏の空気に落ちた。
学校に着くと正門は開いていた。
長期休み中でもやはり部活はあるらしく、今回ばかりはその事に感謝。
昇降口で靴を脱いでいると後ろから足音が聞こえた。
「元貴!」
聞き覚えしかない底抜けに明るい声。
振り返ると同時にがばっと抱きつかれた。腰にぎゅっと回る腕の感覚。
勢いで数歩後ろによろけながらも何とかその衝撃を受け止める。
相変わらずパーソナルスペースが狭いし躊躇いも無い。
「うわっ、危な………」
言いながらも拒絶しないのは無自覚に嫌じゃないと感じているから。
そんな僅かな甘さを若井も理解しているからいつもこうなる。互いに辞める気も辞めさせる気もないのだから。
「おはよ、今日めっちゃ暑いね」
身体を離した若井の頬は少し上気していて、多分見つけた時から走ってきたんだろう。
暑いならくっつかなきゃいいのに、とも思ったがそれを口にしなかったのは諦めかはたまた自分の為か。
「なに、若井も忘れ物?」
「そ、課題忘れた」
「俺も同じなんだけど」
運命かな、なんて戯ける若井の事は軽く流してみたけど若井に会えたこの偶然がちょっとだけ嬉しかったり。
教室までの距離を歩きながら、抱きつかれた瞬間の体温と感覚を無意識に思い返していた。
「よし、ゲット。元貴もあったー?」
此方も机の中からワークをゲット。
近付いてきた若井にそれをひらひら振って見せた。
「あったあった。」
一応ロッカーの方や机の横も確認してから教室を出た。
夏休み中に忘れ物取りに来るとかもう御免だから。
校舎の中は静けさで満ちていて、グラウンドから聞こえる野球部の掛け声と二人分の足音だけが響いている。
真夏を実感させる明るい廊下を二人並んで歩きながら。
「ほんと二人して馬鹿やってんね。」
自虐込みでそんなことを言えば若井が笑う。
「課題忘れるのは確かに馬鹿かも」
横目でその表情を見てからまた視線を前に戻した。
「まぁでも」
そこまで言いかけてから言葉が途切れた。
この場合、切ったという方が正しいかもしれない。
あれ、今。なんて言おうとしたんだ。
口をついて出そうになった言葉を脳内で反芻する。
若井に会えたから良かった、とか。
自分でもちょっと驚いた。
素直にそんなことを思ったこと、言おうとしたこと。
自覚したら少し照れくさくて言えなくなってしまった。
「運動にはなるから良かったかもね。」
結局当たり障りのないことを言って誤魔化した。
実際体育の授業以外で身体を動かしてないから事実ではある。
「確かに。元貴全然動かないもんね」
「動いてるよ。家の中で多少。」
「ほぼ動いてないよそれ。」
昇降口へ続く階段を降りて下駄箱で靴を履く。
自転車を停めてある駐輪場へ向かう最中、手の中で鍵を弄びながら若井が口を開いた。
「元貴、運動になって良かったって言ってたけどさ」
自転車に鍵を差して回せばガチャンと音が鳴る。
「俺は元貴に会えたから良かったかも」
さらっとそんなことを言うから、一瞬鍵を落としそうになった。すぐに取り繕って平静を装う。
同様に鍵を回して駐輪場から自転車を引っ張り出した。
「随分とストレートなことで」
「だってほんとの事だから」
俺もだよ、ともそういう所だよ、とも言わなかった。
言えなかった、が正しいだろうか。
「早く帰ろ。暑くて死にそう」
代わりに言えたのは、その場凌ぎのそんな言葉。
若井がそう思っていたことも、自分が若井と同じように考えていたことも。
その全部が少しづつ嬉しくて、帰り道は行きよりも少し熱く感じた。