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バスルームで──
「先生、髪を洗ってあげる」
シャンプーを手に取り、彼の髪を泡立てる。しなやかでさらりとした髪に、
「触り心地のいい髪ですね…」呟くと、
「そうですか? あまり誰かに髪を触れられたこともないので、そんな風に感じたこともなくて」
彼がそう口にして、「洗ってもらうのは、気持ちがいいですね…」と微笑んだ。
──シャワーの後、濡れた髪をバスタオルで拭いた。
「あっ、髪がぐしゃぐしゃに……」
拭いた髪が乱れて、いつもはきっちりとしている彼のこんな姿なんて、見たこともなくてと思う。
クスクスと笑う私に、
「……そんなにおかしいですか?」
と、照れた様子の彼が、片手で髪を掻き上げると、
濡れた髪がオールバックになって、それだけで格好よく髪型まで決まってしまう。
「やっぱり、素敵……」
上げた前髪が、額にバラけて落ちるのさえ、艶っぽく見える。
「私よりも、君の方がずっと魅力的で……」
耳元で甘く囁かれて、くすぐったさに身をよじると、頬にちゅっとキスをされた。
「あなたとこうしている時間は、たまらなく幸せに感じる……」
「私も、幸せ……」
バスタオルを頭からかぶって、暖炉の前で互いに身を寄せ合う。
外は静かで、思い出したように鳥の鳴き声が聴こえるぐらいは、何の物音すらもしなかった……。