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夜9時。そらとの部屋に入った瞬間、まなみは大きく伸びをした。
「ふぁぁ~……おじゃましまーす」
「おじゃまって、お前もう何回目や」
「えへへ、でも一応言っとかんと」
「はいはい、勝手にくつろげ」
そらとはそう言いながらも、冷蔵庫から麦茶を取り出してまなみに渡す。
受け取って一口飲むと、まなみはにこっと笑った。
「ありがと、そらと優しいねぇ」
「お前にしか優しゅうせんっちゃ」
「……っ、なにそれ」
「なにって……そのまんまや」
唐突にそんなこと言うそらとに、まなみは耳まで熱くなった。
でもそらとはケロッとした顔でゲームの電源を入れている。
「なぁまなみ、今日学校で同棲疑惑出とったん覚えとるやろ」
「う、うん……めちゃ言われた」
「おれ、別に否定せんでええと思っとるけん」
「え……」
「だって、泊まりに来とるし、朝も一緒おるし、もう同棲みたいなもんやろ」
「そ、そんなん言わんでよ……」
まなみは膝を抱えてそらとを見上げる。
すると、そらとは手を止めて小さく笑った。
「……なんや、顔赤いぞ」
「そ、そらとの言い方が悪いんよ!」
「おれのせいか?」
「せいっ!」
まなみがふくれっ面になると、そらとは前のめりになって目線を合わせてきた。
低い声で、囁くように。
「……おれが旦那になるん、嫌なんか?」
「っ……きゅ、急になに言うん」
「答えんか」
「……いやじゃ、ない」
「ふーん……そっか」
そらとは満足そうに小さく笑って、
急にまなみの頭をぽんぽんと撫でた。
ゲームを一緒に始めたはずなのに、
まなみは全然集中できなかった。
そらとの距離が近すぎるし、膝と膝が触れるたびに心臓が跳ねる。
「おい、全然操作できとらんやん」
「だ、だってそらとが近いんやもん」
「おれが悪いんか」
「そらとが悪いっ」
そう言って拗ねた声を出すと、そらとはにやっと口元を上げた。
「……お前、ほんま可愛い」
「は、はぁ!?」
「さっきからおれの理性、ずっと試しよるんやない?」
「試してないっ!」
「無自覚が一番たち悪いっちゃ言うたやろ」
そらとはまなみの腰に手を回し、
軽く引き寄せて耳元で囁く。
「……今すぐ証明したろか」
「っ……そらと、待って……!」
「嫌なんか?」
「……嫌じゃ、ないけど」
「ならええやん」
頬が触れるほど近づいた距離で、
そらとの息がかかるたび、まなみは震えた。
そして、夜はふたりだけのものになった。
翌朝。
まなみはそらとのベッドで、シーツにくるまったまま目を覚ます。
まだ眠そうなそらとは、片腕でまなみを抱き寄せながら小さく呟いた。
「……おはよ、まなみ」
「おはよ……」
「今日、学校行きたくない」
「だめよ、単位落とすよ?」
「……落としてもいい」
「なんでぇ?」
「お前とこうしときたいけん」
顔を真っ赤にして返事ができないまなみに、
そらとは薄く笑いながら、額にキスを落とした。