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午後、レンタカー会社へ向かった。係員は無機質にPCを打ったあと、奥の部屋へ消えた。
冷房の効き過ぎた部屋で待つうち、健太はヘラルドにフェスティバの運転席に引っ掛けたままのGジャンを持ってきてくれるよう頼んだ。
十分か十五分ほど経ってヘラルドが戻ってきたとき、ちょうど係員が奥から出てきた。係員は首を振ると、契約書を健太の前に開いた。
「サインは、あなたのものに間違いないですね?」
健太は頷いた。
「残念ながら、今日までのご請求はあなた様のところへ参ります」
健太の目はうわずっている。
週末働いて得た賃金は、ぎりぎりの生活の中に消えていく。そのうえで、旅に出た。マレナの分までかぶって。
そんな状態で、一ヶ月間もの超過料金を、俺に支払えというのか。
「でも、」と店員は言った「今日これからの分は、我が社とマレナさん一家との話となります。おそらく我が社とマレナさん宅との裁判になるでしょう。とにかく、あなたの支払い義務は今日以降ありません。ご安心ください」
健太は黙ったまま立ち尽くした。ヘラルドが心配そうにこちらを見ている。
「お客さん、これは合鍵です」店員は番号の書いてある紙切れを渡してきた「そして、これは車のナンバーです。一刻も早く解決しましょう。協力してください。マレナ側から車を取り返してきてください。家は知ってますね?」