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晃河は目を伏せた後、もう一度あすかの目を見て、小声で言う。
「俺たち、ちょっと距離置いた方がいいと思うんだけど」
晃河のその言葉に明日香は小声で返す。
「距離置いた方が不自然じゃない?いつも通りの方がいいよ。絶対」
(たしかに、それもそうか。それに正直、明日香と一緒に帰りたいし…)
「わかった。一緒に帰ろ」
晃河がそう言うと、明日香はニコッと笑って「うん」と言い、席に戻っていった。
帰りのホームルームが終わり、明日香は荷物をまとめて晃河の席へ向かう。
「晃河、帰ろ」
「うん」
晃河がニコッと笑ってそう言うと、隣の席の莉久がニヤけながら言う。
「あれ〜?お二人さんまた一緒に帰るんですか?付き合ってるって勘違いさちゃいますよ〜?」
(元はと言えば莉久が言い出した話なのに…)
「別に、そう思うなら思っとけばいいんじゃない?莉久もさ、冗談でもそういうこと言うのやめてくれる?」
明日香が怒り気味にそう言うと、莉久はハハッと笑う。
「わかったわかった。ごめんって。じゃあ、また明日ね」
そう言って手を振った後、莉久は教室を出て行った。
「俺たちも帰ろっか」
そう言って歩き出す明日香に晃河はついて行った。
夕暮れの道を明日香と晃河は並んで歩く。しばらく歩いた後、明日香は不思議そうに晃河に言う。
「晃河に彼女が出来たって噂、なんで流れたんだろうね」
「あぁ…」
少し間が空いたあと、晃河は言いずらそうに口を開いた。
「俺が言ったんだよね、それ」
(やっぱり、晃河が言ったのか)
「そう。誰かに聞かれたの?」
「いや…その…昨日、告白されてさ。その時に、″付き合ってる人がいるんだよね″って言っちゃって」
「なるほどね」
「あ、でも、明日香と付き合ってる事は言ってないから」
焦ったようにそう言う晃河に明日香はふふっと笑う。
「そんな顔しなくていいよ。別に晃河の恋人が俺って事はバレてないし」
「うん…そうだね」
晃河はそう言ってニコッと笑った。
しばらく歩いた後、2人の分かれ道に着く。
「じゃあ、また明日ね」
「うん。また明日」
明日香は少し寂しそうにそう言う晃河に軽く手を振った後、歩く晃河の背中を見ていた。その時、ふと寂しさがこみ上げてくる。俺はすかさず名前を呼んだ。
「晃河」
その呼び掛けで晃河は振り向く。
「何?」
「…俺ん家、寄ってく?」
「えっ?」
「…ごめん。なんかもうちょっと一緒に居たいなって」
明日香のその言葉に晃河はふふっと笑った後、明日香のそばに寄る。
「明日香がそんなに寂しいって言うなら仕方ないね」
「でも晃河、ちょっと寂しそうな顔してたでしょ」
「まぁ、ちょっと寂しかったかも」
恥ずかしそうにそう言う晃河に明日香はふふっと笑い、2人は歩き出した。
明日香の家に上がった晃河は明日香に続いて2階に上がる。明日香は扉を開けて、振り向いた。
「ここ、俺の部屋だから。ちょっとまってて。お菓子とかなんかないか見てくるね」
「うん。わかった」
そう言って明日香は階段を降りていく。晃河は部屋に入り、辺りを見回した。
(ここが明日香の部屋か…)
晃河は部屋の中を歩いて、家具や置物を見ていた。そしてふと、ベットの前で足を止める。
(明日香が寝てるベット…)
晃河はジャケットを脱いで、そばにあった机の上に置いた。
(…ちょっとくらいならいいよね)
晃河はベットの掛け布団をめくり、ベットに入った。
(暖かい…明日香の匂いする…)
晃河はそのまま目をつぶって匂いを嗅いだ。
(なんか落ち着くな…てか、眠くなってきた…)
明日香の匂いと暖かい布団に包まれ、晃河の意識は遠のいていった。
キッチンに来て棚などを探してみたものの、何も見つからない明日香は仕方なく水を入れたコップだけ持って、2階に上がり、部屋に入る。
「ごめん、なんもなかった」
明日香はそう言いながら部屋の中に目をやると、晃河はベットに寝転んでいた。明日香はそんな晃河のそばに寄り、しゃがんで顔を覗き込んだ。
(寝てる…疲れてるのかな)
明日香がしばらく晃河を見守っていると、晃河はボソッと呟く。
「明日香…」
「ん?」
起きたのかと思って返事をしたが、明日香は目をつぶったままだった。
(寝言か…)
「あす…か…」
そう言って晃河はニコッと笑った。
(俺の夢見て笑ってるのか)
明日香は晃河を愛おしく思い、ふふっと笑みがこぼれる。
「可愛い」
そう言った後、明日香は晃河の頬にそっとキスをして頭を撫でた。
(触っても起きない…無防備だな…)
明日香は晃河の寝顔を見ながら、ふと颯人との会話を思い出す。
『なぁ颯人。付き合った後って何するの?』
『付き合った後?…ん〜、デートしたり、一緒に帰ったり、あとまぁ、エッチなことしたり?』
(エッチなこと…)
明日香は晃河の上にそっと跨った。そして明日香は、晃河の口にゆっくり自分の口を近づけた。だが、晃河の口に触れる寸前で明日香はパッと顔を離した。
(何考えてんの俺…寝込み襲うとかシャレになんないって…)
(また変な気起こす前に晃河起こそ…)
「晃河、起きて。晃河」
明日香はそう言いながら晃河の体を揺すった。すると、晃河はゆっくり目を開けた。
「ん…あす…か…」
明日香が晃河が起きたのを確認し、上から退こうとすると、パッと腕を掴まれた。明日香が何かと思い晃河の顔を見ると、晃河は眠そうに呟いた。
「明日香も…一緒に寝よ?…」
(…やばい、可愛すぎる…)
理性が壊れてしまいそうになるのを抑えながら、明日香は再び晃河の上から退こうとしたが、晃河が手を離してくれない。
「晃河、離して」
「やだ…一緒に寝るのっ」
晃河は少し拗ねた顔でそう言う。
「…わかったよ。わかったから離して」
明日香がそう言うと、晃河は嬉しそうに手を離した。明日香がゆっくりベットに入り、寝転ぶと、晃河の足に自分の足が当たる。
「…明日香、冷たい。俺があっためてあげる」
そう言って晃河は明日香の体をギュッと抱きしめた。
(ちょっ…近いって…)
「…晃河。ちょっとくっつきすぎ」
明日香は晃河から離れようとしたが、晃河にギュッと抱きしめ続けられ、動けなかった。
(あーもう…)
「…晃河。離れないと俺、晃河のこと襲っちゃいそうなんだけど」
明日香がそう言うと、晃河の抱きしめる力が少し緩んだ後、晃河は呟いた。
「…いいよ。別に」