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臣桜
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「涼さんに教えたら、喜びそうですね。恵とのデートコースに」
「あー、確かにカップル向けかもな。特にあの海を見ながらの個室露天風呂は最高だと思うし」
頷いたあと、尊さんは「よし」と立ちあがり、スマホを起ち上げる。
そして動画でグルッと室内の様子を撮影し、露天風呂やデッキなども余す事なく収めたあと、涼さんに送信したらしかった。
「俺もだけど、あいつも結構忙しいから、全国津々浦々、いいホテルがあるのは分かっていても、自由に休んで行動できる時間があるか、って話だけどな」
「でも、妄想が捗るんじゃないですか?」
「だな。今のあいつは中村さんを見ているだけでも、一から百を生み出すぐらいの妄想ができそうだから」
「『大好き!』っていうのが伝わっていいですよね」
私は親友が愛されているのが嬉しくて、ニコニコする。
と、尊さんは私の顎をクイッとして自分のほうを向かせ、尋ねてくる。
「俺の『大好き』も伝わってる?」
急にそういうモードになり、おまけにいつものお色気ムンムンの、お迫りモードの尊さんじゃないので、何だかドキッとしてしまった。
素の表情で見つめてくる彼の前で、私はカーッと赤面していく。
「……しゅ、しゅきですよ?」
自分でもテンパったあまり、いつもの「しゅき」なのか、口が回ってないだけなのか分からない。
すると尊さんは無言で自分の唇を、トントンと指先で示す。
(キ、キスをすれと仰るのか!)
私は照れたまま上目遣いに尊さんを見て、ジリジリと座る場所をずらして彼に密着する。
そしてギューッと抱き締めると、目を閉じたキス待ち顔の尊さんを見つめてムラムラとし、そっと彼に口づけた。
彼は私を膝の上にのせ、顔の角度を変えて深くキスしてくる。
「ん……っ」
口内にヌルッと舌が入り、久し振りの感覚に私は体の芯部を熱くさせた。
温かい舌に口内を探られただけで、自分が尊さんに支配されているような感覚がした。
下唇を軽く噛まれると、ズン……、と下腹の奥に疼きを得る。
ギュッと尊さんのTシャツを握った時、服越しにパフンと胸を包まれ、耳まで真っ赤になってしまった。
思えば夏休みに入ってからバタバタしていて、あまりそういう雰囲気になれなかった。
旅行中はあまり〝おいた〟をすると体力がなくなってしまうし、同行人を気遣わないとならないしで、思いきり愛し合えていない。
(でも今回は、恵と涼さんといた時以上に気を遣わなきゃいけなくて……)
ちゅぷ、と尊さんの唇をついばんだ時、彼は静かに顔を離した。
「勿体ないけど、今回はキスまで」
「……うん……」
私はポーッとしつつ、コクンと頷く。
尊さんはソファの背もたれに身を預け、溜め息をつく。
「本当は休みの時にイチャイチャしたいけど、今年の夏はすげぇ多忙になっちまったな。……まぁ、涼と中村さんが出会ったのは今年だし、速水家のみんなと正式に和解できたのも今年だし、色々人間関係が〝動く〟時期なんだろうな」
「だと思います。……私も去年はずっとクサクサしてましたし、その前は…………ですし」
あえて昭人の名前を出さずに言うと、尊さんは私の頭をポンポンと叩く。
「俺もだよ。……スピリチュアルな事はあまり信じないタチだけど、朱里と出会ってから色んな事が大きく動いて、本当に運命だなって思うよ」
「……えへ。……えへへへへ……。どうも、あげまんです」
ペコリと会釈して挨拶すると、尊さんはクスクス笑って会釈し返す。
「今後とも宜しくお願いいたします」
「……あげまんの効果のほどは保証できませんが、一緒にいると、きっといい気分になりますよ」
私はそう言って尊さんの腕を組み、ピトリと体をくっつける。
「効能として食欲増進、健康意識向上、やる気向上、性欲向上を感じております」
「ひひひ」
私は幸せ一杯に笑い、尊さんの腕に顔をグリグリと押しつける。
そのまま二人で綺麗な水平線を見せる海を眺めていたけれど、尊さんがボソッと言った。
「食事の前にひとっ風呂浴びるか。汗掻いたし」
「そ……、そうですね」
エッチはしないと分かっていても、尊さんと一緒に温泉に入ると思うとドキドキする。
「ちょっと準備します」
「じゃあ、俺、先にサッと洗って露天風呂行ってるよ」
「はい」
あの絶景露天風呂に入れるのが楽しみで、私は笑顔で返事をした。
コメント
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第843話読みました!「あげまんの効果」ってタイトルがもう可愛いし、尊さんが素の表情で「俺の『大好き』も伝わってる?」って聞くところにグッときましたね…!照れながら「しゅきですよ?」って言っちゃう朱里さん、完全に尊さんにトロトロにされてて笑った。キスまでで自制するところも大人で良い。露天風呂、絶対入ってほしい〜!