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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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hnnmハマったからちょこっっとだけみせる


現実のものとは一切関係ありません

コウノドリ

胃がひっくり返ったような吐き気。喉の奥の方からじくじくと熱い液体が遡ってくる感覚がした。


四宮は反射的に口を抑える。口内に少し苦みを帯びた唾液がたまり、胃がビクビクと痙攣する。

しかし、遡ってるのはあくまで感覚で、胃の内容物が上ってくることはなく元気に胃の中で暴れている。


しかもこの症状は今日に始まったことじゃない。最初は倦怠感、次に微熱、頭痛、眠気、食欲不振。

おまけにこの吐気。


薄々感づいていたものの、四宮は仕事に支障が出ると医者のくせに一度も受診せず普通に過ごしていた。恐らく、仕事に支障をきたすという事実とプライドが彼を許さなかった。


だが現実はそう上手くはいかない。当直室で誰にも譲ることのないジャムパンを頬張っているとき、胃酸があなから這い上がってくる虫の如く逆流しはじめた。これまでの気持ち悪さとは比にならない。冷や汗が一気に湧き出た。咄嗟に手で口を抑える。


「四宮先生?大丈夫ですか?」


四宮の異変にいち早く気付いたのは下屋だった。顔色が悪いと、少し汗をかいてないかと、後輩に心配されるのはこんなにも申し訳なく心痛むものだと思い知らされた。


「構わない。2日前から風邪気味なだけだ、薬も飲んでるから大丈夫」


日本人の大丈夫は大抵大丈夫じゃない時に言うものだ。実際座ってても気持ち悪い。何をしても収まらない吐き気、目を瞑りたくなるようなめまいと頭痛。この状況を終わらせることができるのなら死んでもいいと思った。


下屋は大丈夫と聞いて諦めたが、奥の方でサクラは不思議そうに否、疑いの目で四宮を凝視していた。



「今のところ特に以上はありません。なにか気になることがあれば何時でも来てください。お大事に」


「しのりん、冷たい。もう少し優しくできないわけ?」


喋る先輩お団子頭。やはり何度見てもドアップはきつい。心のなかでポツリと呟いた。


それに、今日小松さんの担当は四宮じゃないはず。なら何故四宮に付いてるのかそんなの答えは一つしかない、サクラが小松さんに言って勝手に担当を変えたのだ。


とんだ迷惑。小松さんが元いた場所に担当があったのは理由があるから。もちろんサクラがそんな事を考えていないなんて思っていないが、たかが医者が体調不良で無理して外来の受付けをして、心配だからって勝手に変えていい訳が無い。


「小松さん。元の持ち場に戻ってください」四宮はカルテを睨みながら言った。

「しのりん、ならちゃんと初診に行ってくれる?最後のヒート、いつだった?最近来てないでしょ」

四宮はただの不順ですと、冷たく答えた。オメガのヒートは基本的には定期的にやってくる。しかし、稀にヒートが遅れたり、早まったり、来なかったり、或いは連続できたり、原因はストレスや、体の不調等様々だがオメガにとって対して珍しいことじゃないのは確か。小松さんは四宮にそう反論されては言い返せない。四宮は次の妊婦の診察に移った。


「私、担当が四宮先生で良かったです!救われたんです、先生の言葉一つ一つに。もし、あのとき先生がいなかったら私も、この子もいませんでしたから…」

妊婦は臨月間近の大きなお腹を愛おしそうにさすった。

この妊婦は妊娠6ヶ月頃線路に飛び込み、自殺を図ろうとしたところ四宮に見つかって未遂になった妊婦。彼女曰く夜道を歩いていたところ見知らぬアルファに乱暴され望まぬ妊娠をしてしまい、どうすればいいかわからず悩みに悩み22週を超えてしまったという。


こんな過去を抱えて生きるのも腹の子に申し訳ないし、堕ろすのも腹の子に罪はない結果自殺という結論に落ち着いたと言う。


「そうですか、ではもう二度とあのような真似はしないでください。迷惑です。」

「妊婦の自殺は無責任だ…」


四宮の強い言葉に妊婦は俯いた。自分の身勝手な行動に振り回される命があるそれはどうしようとも言い訳できない。


「はい、今日はありがとうございました」

彼女は顔を上げて優しく微笑んだ。そのままゆっくりと立ち上がり診察室を出るとぱしっと空気を裂くような痛々しい音が響く。


「言い過ぎ」


四宮の左頬がじんわり紅く染まってる

小松は目を紅くした。


「すいませんでした、次は気をつけます」

慣れた口調で言い返すと小松は震えながら大きくため息を付いた。



無責任。自分が放った言葉に心を抉られた。


埃っぽい密室

欲しがる獣の声

抗えない本能

鈍痛

息苦しさ


忘れられない快楽と苦痛。何度サクラに上書きしてもらっても忘れることはできない。

あの時の子は生まれ変わって幸せに暮らしているのだろうか…

四宮は唇を噛んだ。口内にゆっくり流れ込んだ微量の血液は生ぬるくて、しょっぱくて苦くて、少し甘かった。





帰り際、鴻鳥が半透明の袋を下げて家で呑まないか?と。四宮は俺は呑まないぞと言いつつも結局鴻鳥の家に寄った。


「ねえ、四宮。隠してることあるでしょ」


鴻鳥が優しく四宮の手を握って聞いた。番になって5年以上が過ぎた。最初は同棲してとか、子供作ってとかそういう絵空事を二人で考えて楽しんでいたものの仕事に追われ月に2回もしくは四宮がヒートの時に交互に互いの自宅に訪れる程度に鳴ってしまった関係。


四宮のフェロモンは鴻鳥にしかわからない。いま此処で嘘をついたとていずれバレてしまうだろう。四宮は腹をくくった。


「ヒートが…2ヶ月ぐらい来てない。」


震える声でそう言うと鴻鳥はまっすぐ四宮を見つめる


「他には?」


「吐き気、不眠…」


「どうしてすぐに教えてくれなかったの?」


鴻鳥の優しい口調に四宮は得体のしれない罪悪感を覚えた。

恐らく、恋人でパートナーなのに自分の話ましてや、子供ができたかもしれないという二人の責任の話をできない。自分は鴻鳥を信用していないのではないか、鴻鳥は自分のことを信用してくれているのに、情けない。というような心情であろう。

『何故教えてくれなかったのか』

その問いに答えるのに二人の間を沈黙が隔てた。



「怖かった」




四宮は服の裾を強く握った。怖い、新しい命に対しての恐怖というより自分自身に対しての恐怖。


育てられる自信がない、愛せる自信がない、もし何かあったとき受け止めるのが怖い、責任が怖い。

小刻みに震える四宮の冷たく華奢な体を割れ物を扱うように優しく、優しく抱き寄せた。


久しく人の温もりに触れていなかった四宮はダムが崩壊したかのようにぼろぼろと泣き始めた。

声にならない声、誰にも話せない過去、行き場のない悔しさと怒り、不安。


鴻鳥は赤ちゃんの背中を擦るように優しく四宮に触れた。


「明日の朝だけお休みもらって検査に行こう、四宮。ペルソナなら明日の午前中の外来担当は下屋だし、ペルソナが嫌なら別のところでもいい」

「赤ちゃんに罪はない。四宮が最終的に育てられないって決めたら養子とか里親とか手段はいくらでもある。これは僕の責任でもある。二人で頑張ろう?」


四宮は鴻鳥の懐で小さく頷いた




「今回が初診ですね」


下屋はカルテとにらめっこした。名字も名前も自分の先輩と全く同じだったからだ。

世界も広いものだなぁなんて思いながら先輩と同姓同名の患者さんのお顔を伺う。


しかし、これまた不思議。髪型も、目の形も、ほくろの位置も例の先輩のアイデンティティのメガネまでそっくりなのである。それに付き添いで来てる旦那さんの髪の癖まで瓜二つ。


「しっ、四宮先生??!」


四宮は軽く舌打ちをした。待たせないで早く診ろと言わんばかりに。


問診が始まった。最後のヒートはいつか、アレルギーの有無、過去にかかった病気や最近の体調等。


それに加えて、尿検査、触診、エコー。


「おめでとうございます。11周目です」下屋はすこし申し訳無さそうにというか、遠慮がちに

「あの、四宮先生。今までつわりとか体調不良とか我慢…してたんですか?」


四宮は小さくため息をついた。

「ああ、季節の変わり目だったしただの不調だと」


「今日は午後からで当直ですよね」


「ああ、それが何だ」


「休んでください」


「無理だ、回らない」


二人のきりのない言い合いを見かねて鴻鳥は自分も当直だから四宮の様子が見れる、だからそんなに心配しなくてもいい、と。


「わかりました。絶っっ対に無理はしないでくださいね?!」

下屋の強い言いつけに四宮は後輩の成長を感じつつ少しばかり微笑んだ。


「ああ。」





「しのりんお帰り〜どうだった?」


「11週です。これから迷惑をかける事があると思いますがよろしくお願いします」


四宮は深々とお辞儀をした。これから急な体調不良で戦力にならなかったりお腹が大きくなれば産休に入ったり、子供が生まれれば育休に入る。旦那も産科医で一気に二人いなくなってしまうのはかなりの痛手なのだ。

小松は「迷惑だなんてそんなことはない、無理だけはしないでくれ」と肩をぽんと叩いた。


今日は新月。小松予報によると五、六人生まれても不思議じゃないとのこと。現在数名の妊婦さんが陣痛を起こしていて、二人は今日中に生まれる予定だ。

四宮は心のなかでよしと呟いて患者一人ひとりの部屋に診察に向かった。




夜の十一時を過ぎた頃四宮の患者の妊婦の赤ちゃんの心拍が下がり始めた。この妊婦は切迫気味だったものをなんとか持ち堪え十月十日を迎えることができた。今日の朝から陣痛があるものの、あまりお産が進まず子宮口4センチ。だんだん母体の体力も赤ちゃんの体力もなくなってきてしまった。日付を越えてもこの状態が続く場合カイザーすることが決まった。


「中崎さん、難産だね。」

鴻鳥がペットボトルを開けながら呟いた。

此の儘子宮口が開いてくれればいい。二人共できるだけ初産でカイザーはしたくないという意見は一致したらしい。

四宮は手元にあるパンを適当にとり袋を乱暴に開け口の中に詰め込んだ。


朝は食べそこね、昼はつわりでほぼ手がつけられず、1日に必要なエネルギーを全く取れていなかったのだ。しかしこれから帝王切開をしなければならないかもしれないのに何も食わず途中で低血糖で倒れました。なんて冗談は通じない。


本当は今すぐにでも戻ってきそうなパンを全力で押し込み、詰め込む。どれだけ体が受け付けなくとも食べなければならない。牛乳で流し込んでは詰め込んで、口内に溢れる苦みを帯びた唾液もまとめて飲み込む。


サクラはそんな四宮をみてやるせない気持ちになる。変わってあげられないものか、せめて休ませてあげたい。でも彼は一人の患者の前に医者で、たくさんの妊婦を抱えていて、自分の不調で、行ってみれば身勝手で妊婦らを見放すわけには行かないのだ。


まだ書き終わってない

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志摩ってさ、最近長袖しか着ないよね。なんで?


密行中、車内の沈黙を破ったのは伊吹だった。目の中に一等星を埋め込んだかのようにキラキラさせて運転席の志摩を見つめる。


志摩小さく舌打ちをし、お前の知ったことが

かと冷たく吐き捨てた。


でももう夏だよ?暑いじゃん?志摩が途中で倒れたらおれは嫌だ!だから半袖を着てください!


私情たっぷりのそのお願いに志摩は首を縦に振るわけもなく大きな、呆れたため息をつくだけ。

伊吹もあまりに相手にされなく気に入らなかったのかふんっと鼻から息を出して拗ねてしまった。



興味をなくした伊吹にほっとした志摩だが、安心の先には不安があった。


『この野生児だけにはバレたくない』


志摩は無意識に左腕に視線を寄せた。



こんな馬鹿げたことに手を付けたのは3ヶ月前。


以上!


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