合ってた。
渡辺の家の鍵だ。
オートロックを通り過ぎてエレベーターに乗る。
だが、部屋が分からない。
もう一度来よう。
彼女は帰って行った。
別の日。
彼女は、渡辺の乗った車の後ろからタクシーで追いかける。
途中から追い抜き、先に渡辺のマンションに入る。
エレベーターホールで、電話をかける振りをし渡辺を待つ。
エレベーターに乗る。
渡辺1人だった。
何階で止まるか確認して帰る。
明日、来よう。
笑いながら帰って行った。
翌日、早朝からマンションの近くで渡辺が仕事に行くのを待っている。
フィルムを貼ってある車がやって来た。
すぐ出て行く。
彼女は、住人のような顔をして、オートロックを通り過ぎてエレベーターに乗る。
階は分かっている。
端から見て行く。
表札が出ている。
出てない部屋が2軒。
どちらかに渡辺の家がある。
だが、すぐに分かる。
1軒はドアに「welcome」とプレートが掛かっている。
もう1軒に決まりだ。
鍵を差し込む。
カチッと音がして、ノブが回る。
噂には聞いていたけれど、何もない部屋。
彼女は腹が立って、洗面所の化粧品をリビングにぶちまけた。
ガラスの割れる音。
化粧品の香り。
クローゼットから服をばら撒く。
部屋を荒らして、何も取らず帰って行った。
彼女の欲しいのは目黒の私物であり、渡辺のはいらない。
あの日、目黒の家で会わなかったらこんなことしない。
今はもう、目黒の家の鍵は使えない。鍵を替えたのだろう。
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