テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
橋まであと少し──そのはずだった。 先頭を走るヒョンソがギリョンを抱えて渡り始める。
その背中が光の中へ消えるのを確認し、俺は速度を上げた。
だが、その時。
ミョンオが突然サンアの腕をつかみ、そのまま肩に担ぎ上げた。
涼介「……おい、何して──」
ミョンオ「悪いな!」
短く吐き捨てると、ミョンオはサンアを抱えたまま橋へ飛び込む。
光の橋が淡く揺らぎ、二人の姿を飲み込むと──直後に霧のように消えた。
偶数の人数でしか渡れない橋。
残されたのは、俺ひとり。
【観測者《静かに囁く策謀家》が愉快そうに笑っています】
【観測者《悪魔のような炎の裁定者》があなたの状況を興味深く見守っています】
背後から湿った足音と、肉を引き裂くような低い唸りが迫る。
振り返れば、黒いエーテルをまとった魔人が数体。
その中の一体は、異様な速さでこちらに迫っていた。
(……この距離じゃ逃げ切れない)
握り締めた拳に、無意識に力がこもる。
選択肢は──戦うか、死ぬか。