テラーノベル
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橋は、もうない。 俺と魔人の間の距離は──十メートル。
黒いエーテルが肌を焼くように迫ってくる。
その姿は人間の形を留めながらも、肉は裂け、白濁した眼球がぎょろりとこちらを見据えていた。
(真正面から殴り合えば、確実に負ける)
胸の奥で、冷たい声が響く。
【専用スキル《書庫のしおり》が発動します】
【使用可能なしおり:3枠】
脳裏に、半透明のリストが浮かんだ。
そこには、俺が今まで接触し、理解度を得た人物の名前が並んでいる。
1. 赤城龍真(理解度25)
2. カン・ヒョンソ(理解度35)
3. 空き枠
(……今はこれしかない)
俺は一番上の名前を選択した。
【しおり No.1 が使用可能になりました】
【該当人物の理解度が低いため使用時間が短縮します】
【使用可能時間:1分】
【スキル《黒化 Lv.1》が一時的に解放されます】
血管を焼くような熱が腕を駆け抜ける 。
視界の色がわずかに暗く沈み、魔人の輪郭が異様なまでに鮮明になる。
(……来い)
魔人の腕が振り下ろされる。
紙一重でかわし、逆にその首筋へ拳を叩き込んだ。
手応えは、腐った木を殴ったように鈍い。
【残り時間:30秒】
魔人がよろめいた隙にもう一撃。
黒いエーテルが霧のように散り、魔人の動きが鈍る。
【残り時間:5秒】
最後の力で蹴り飛ばし、距離を取った瞬間──
【しおり No.1 の効果が終了しました】
体から熱が引き、膝がわずかに沈む。
まだ息はある……だが、奴らは一体じゃない。
(……間に合うのか、これ)
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