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「俺は反対だね!」
リトが本部からの作戦を3人に伝え終わるとイッテツが不満そうに声を荒げた。今は時間が惜しいのに勘弁してくれと思う。けれどマナもウェンも口にしないだけでイッテツと同様に不満の気持ちでいっぱいだった。
「あー…言いたいことはわかるけどなぁ。時間ねぇのわかってんだろ!?いいから動くぞ_」
「嫌だ。少なくともこの作戦はありえない。別の方法を考えるべきだ」
イッテツがこうもこの作戦を嫌がるのには理由があった。恐らく作戦をoriensの誰かが考えていればこんな作戦にはならないだろう。
「この作戦、明らかにリトくんへの負担が大きすぎる」
作戦内容を簡潔にまとめるとするならば
リトがすべての敵と戦い、残りの敵をマナとウェンとイッテツで対処する。といえるだろう。
大げさに言い過ぎだと思うかもしれないが、これがこの作戦の内容なのだ。
「俺もこれはあんまり嫌やなぁ。ごめんけどテツに賛成…」
「僕も、今時間無いとはいえ流石にこれは良くない気がする」
「うーん…まぁ。そうなる、、よなぁ…」
たしかに自分に対しての役割が大きすぎると思う。もし自分じゃなくてマナだったら、ウェンだったら、テツだったら。と考えれば多分皆と同じ反応をしているだろう。
それでも今は従って動くしかないのだ。こうしている間にも被害は拡大していく。なんとか3人を納得させなければ。
「一旦俺の話を聞いてほしい。まず、本部から作戦の連絡が来て先に俺だけに伝えられた」
「多分俺のリスクが大きいからだと思う。それを踏まえた上でまず俺に伝えられた」
「そんで俺は作戦を聞いて…まぁちょっと驚いたけど。俺はそれで納得した。覚悟決めた」
“覚悟を決めた”という言葉に3人が少し反応した。
「だから3人は俺を信じて協力して欲しい。心配してくれる気持ちは嬉しいけど…」
「今だけは何も言うな。頼む」
リスクを一番背負っているリトからそう言われれば何も言い返す言葉が出ないだろう。マナとウェンは躊躇いながらも「分かった」と返事をした。
けれどイッテツだけは何も言わなかった。リトの話を真剣に聞きつつも未だに不満そうな表情をしている。
リトは、この頑固なヒーローを説得しなければ恐らく作戦を実行に移せないだろうと思い、今度はイッテツだけに向けて再び話し始めた。
「テツ、そんな顔すんなって。俺も困るんだけど?汗」
「分かってるよ。リトくんを困らせてるって事ぐらい…でも!_」
「俺の事、信じれねぇ?」
「っ……」
できるだけイッテツが言い返せないような言葉を慎重に選ぶ。
「それずるくない?俺がリトくんに絶対的な信頼を置いてること知ってるでしょ」
「うん。だから言った」
あまり重い空気にはしたくないのでリトはできるだけ笑顔を作りながら、からかうように喋った。
「でも……こんなの……リトくんが………」
「そうだな」
リト自身あえて言わなかったし、この作戦を聞いた3人も口に出すことはしなかったが。このままでいけば恐らくリトは死ぬだろう。
分かっている。それ程までに今は切迫した状況なのだと。街に大量に敵が現れたのなら皆で分担して戦えばいい。けれど今回は量ではなく質なのだ。街の真ん中に現れた巨大な敵。
唯一対抗できるのはリトの放つ、天候すら変えてしまえる程の大きな稲妻。
けれど今回は、その稲妻を今までに出したパワーの比にならない程大きく強く放たなければいけない。
きりんちゃんに適合したリトの身体でさえももしかしたら裂けてしまうほどに。
でもやらなければ。たとえ死のうとも。そうしなければたくさんの人々の命が失われてしまうのは明白だなのだから。
それに、こういう時の為に今まで鍛えてきたというのもある。生きていられる可能性だって全く無いわけじゃない。
「テツ、頼めるか?」
「………………っ、、、」
「分かったよ」
「ははっ、ありがとな」
イッテツは頷くしかなかった。嫌だと言ったところで目の前にいる彼が止まるわけないことを知っていたし。
この作戦以外に良い方法なんて思いつかなかったから。
ただ今は、死んでくれるなよと祈ることしかできなかった。
「キリンちゃん、やるよ」
リトが胸元にいる相棒に声を掛ければ身体がバリバリと音を立てながら電気を纏う。
さっきまで自分の事を心配して不安そうだった相棒も今は真剣な目に変わっていてとても頼もしく思えた。
そして、もし自分が死んだら新しい相棒ができているのかな。なんて、余計なことまで考えてしまう。
「スー………ふぅ、……」
少しだけ感じてしまっている死への恐怖を落ち着かせる為に深呼吸する。
そして大気中の電気を集めるように右腕に意識を向けた。段々と集まるソレを今までよりも一層大きく帯電させて。
幸い天候は悪く、近くに雷雲がある。今は天候すらも味方につけているのだ。
帯電中はあまり動くことができないので巨大な敵の近くに移動してから電気を集めていた。
だんだんと電気が集まり帯電していく感覚。 バキバキと音が鳴る。腕が少し痛いくらいに、より一層大きく強く。
『いくぞ』
無線にそう一言声を乗せると、リトはほとんど感覚を失った右腕を振りかざして目の前にそびえ立つ巨大な敵へ攻撃を放った。
拳が敵に触れる。
その瞬間。鼓膜を破るほどの、リトの無線に入ってきた3人の声をかき消すほどの。そんな轟音を立て、巨大な稲妻が街のど真ん中に降り注いだ。
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「「っ!!!!」」
ビカリと辺りが一瞬白飛びし、耳が痛むほどの大きな音が響いた。
離れていてこれなら、発生源にいる彼は一体如何なってしまうのだろう。
「消えとる…あのでっかいやつ消えたで!!!」
先程まで視界の半分を埋め尽くしていたであろう敵はあとかたもなく消えていた。
成功したのだ。リトは。
けれどそれはリトが生きている保証にはならない。
「早くリトくんが無事か見に行かなきゃ…はやく…!」
「リトの無線は壊れちゃったぽいから直接行くしか_」
イッテツが今すぐにでもリトのいる街の真ん中に向かおうとした時。
ぐちゃり、と嫌なものが目の前のアスファルトに落ちた。
「なんや…こいつ…」
泥のようなものだが、それは段々と形を造り先程街の真ん中にいた巨大な敵と同じ形へ変形していると分かった。
「ねぇ、色んなところに飛び散ってない…?汗」
周りを見渡すだけでも百は超えているだろう。信じたくはないが全て今見たものと同じものだ。
「もしかして、、あの敵が稲妻で爆発して消えて…飛び散ったのがこいつら?」
「まさか…」
ウェンの言葉を聞いてイッテツは慌ててゴーグルと耳型のアンテナを作動させた。
目の前の敵を読み取り、表示されたのは、先程あの巨大な敵を読み取った時と同じものだった。
「とにかく急いでしばかなあかんやろ!」
作戦なんて考える時間はない。未だに避難できていない市民もいるのだ。一刻も早く動かなければリトの頑張りを無下にすることにもなる。
1時間ほど経っただろうか。未だに3人は戦っていた。いや、正確には主にイッテツが。
残機のあるイッテツとは違い、生身ひとつのマナとウェンはすでに満身創痍の状態だった。それでも残った僅かな力を振り絞り動いている。
「く、そ……多すぎ…っ、やろ」
「っ、、ハァ……こんにゃろ………っ、く」
「マナくん…!この、っ、、、ウェンくん!!」
イッテツは市民を襲おうとしている敵に気をかけつつも、マナとウェンがやられないように立ち回っていた。
残機も残り少なくなりながら。
「っ……危っっぶねぇなぁ!」
いきなり後ろから現れた敵の攻撃を咄嗟に避けカウンターをかます。かなり出血してしまい視界がぼやけてきたのを感じた。
「絶対……この残機だけは……」
ぶつぶつと独り言を繰り返しながら意識を失わないように力を入れる。
「テツ…どうや、、数は…!」
「あと……………13体!!!」
「よぉ〜し、踏ん張りどころだね!!」
約1時間半に及ぶ格闘の末、いよいよ10体を切り、3人は協力して残りの敵を殲滅しにかかった。
「これで、最後っっ!!!」
最後の敵にウェンが大剣で斬りかかる。
そしてようやく敵の脅威からこの街を守る事ができた。
「ハァッ……ハァッ……これで全部や……」
「はやく、行かなきゃ……」
その瞬間イッテツは街の真ん中を目指して走り出した。 マナとウェンはそれを見て、万が一の為に動き始める。
「リトくん…!リトくん!!…」
イッテツはリトの名前を呼びながら走った。ズキズキと痛む足なんて気にも留めずに。
「っ……はぁっ………はぁっ…はぁっ……」
そしてたどり着いた。
あの巨大な敵を見事に討伐してみせた宇佐美リトという男を、そして目から涙を溢れさせている彼の相棒を。
リトの右半身はぐちゃぐちゃになっていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
続きます