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rtとttの話(mnとwnもいます)
cp要素はありません
※血液型捏造
※何でも許せる人向け
「だから嫌って言っただろ」
地面に横たわるリトを見つめながら力なく、やり場の無い怒りをぶつけてみる。もちろん返事なんて返ってこない。
リトの相棒のキリンちゃんは今も懸命に小さな電気を放ち心臓マッサージを続けている。その振動でリトの体は小さく揺れた。
トンッ、トンッ、トンッ
「キリンちゃん、一回離れられる?」
そう話しかけるとキリンちゃんはコクリと頷いてリトの体から降りた。
それから恐る恐るリトの胸に耳を当てる。
トクッ………トクッ…………トクッ
僅かに聞こえる。今にも消えてしまいそうな心音。
「まだ………生きてる………」
イッテツは震えた声でそう呟くとキリンちゃんを肩に乗せて話しかけた。
「君の相棒、絶対助けような」
その言葉にキリンちゃんは涙を我慢しながら強く頷いた。
それからすぐに救急車がやってきた。
イッテツが無線でマナとウェンに頼んだのだ。
「リ…………ト」
「うそ、、やんか…。こんな……」
マナもウェンもリトの状態を見て言葉を失っていた。イッテツもあえて喋らず救急隊員の人にリトを任せる。
[っ……急いで搬送します!]
隊員の人も慌ててリトを迎え入れた。すぐに病院に向わなければ、、いや、間に合うのかもわからずに。
「あの、俺もついていっていいですかね」
[え、あ、はい。…では出発します!!]
イッテツは初めから着いていくつもりだったらしく、そのまま救急車で病院へと向かった。
マナとウェンもついて行きたかったが怪我がかなり酷くその場で簡易的な治療を受けることにした。
リトの無事を願いながら。
普通、救急車の中ではできるだけ応急処置をし始めるのだが、リトの状態が悪すぎるのであまりできる事が無いようだった。
そして追い打ちをかけるように女性隊員が大きく声を上げる。
[正直助かりませんよこんなの!汗だってこの人適合者なんですよね??!適合者の血は+型で…普通の人間とは違うじゃないですか!!]
[そんな事言うな!方法を…っ、方法を考えるんだよ!]
[でも…っ。そんなこと言われたって!この人は大量に血を流しすぎました!!それだけの血液パック……+型なら尚更在庫がありませんよ!全然足りないです!!!どうしようもないじゃないですか!!!!]
「……」
イッテツはそんな隊員達を静かに見つめていた。
彼女の言うとおりだ。リトの血液型は+型で、この世に2桁も居ないだろう。
「あの…俺から話があるんですけど」
ーーー約三年前の出来事
その日リトが書類で指を切ってしまった。
「いっって、、…うわ、最悪だ。指切った…」
「うわー、紙で切るの俺絶妙に嫌いなんだよなぁ。リトくん絆創膏いる?」
「分かる、俺も嫌い。あと絆創膏貰うわ」
「えーーっとたしかここに………あ、可愛い猫柄しかねぇや。まぁいいよね?」
「コココッ笑なんでそんな可愛いの持ってんだよ笑笑笑」
「この前近所のおばあさんがくれたんだよね」
「へー、有難く使わせてもらうな」
何気ない日常だった。そして、会話は指の怪我から血液型の話に変わる。
「そう言えば俺の血液型変わったんだよなぁ。たしか」
猫柄の絆創膏を指につけながらリトがふとそんな事を呟いた。その言葉にイッテツが反応する。
「え、リトくんも?」
そう聞くとリトはとても驚いた。血液型が変わるなんてそうそうにありえない事なので同じ人間がいるなんて思わなかったようだ。
「まさかテツも変わってたのかよ」
「うん」
そしてお互い何型に変わったのか確認すれば同じ+型だった。
思わず2人共爆笑してしまう。
「やっば笑笑こんな事ってあるんだな」
「ね笑笑笑でも確かにヒーローにならないと起きないことだからかなぁ」
+型になる人間=適合者だからだ。なのでリトはキリンちゃんに適合した瞬間に+型になった。
イッテツは適合者ではなかった。けれど∞の呪いや残機という異例の体質を持っている。そしてその影響なのか、血液型がいつの間にか+型に変わっていたのだ。
「特別な血液って聞くとなんかかっこいいけど、怪我した時怖いよなぁ…」
リトがそんな不安を漏らす。ヒーローとして活動する以上怪我はよくしてしまうからイッテツはとても共感した。
「ま、その時はお互いに助け合い…じゃない?」
「ハハッ笑そうだな。俺からテツに、テツから俺に。…ならどっちかは無事でなきゃな」
「だねぇ…頑張らなくちゃだなぁ」
イッテツがそう言いながら体を後ろに倒して天井を見上げるとリトは笑った。
「テツ今たばこ吸いに行きたいって顔してんな笑」
「あ、バレた?」
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ピ、ピ、ピ
朦朧とする意識の中、何かの機械音だけが聞こえる。
「……ん………」
そして段々と目が開けるようになり徐々に視界に光が差し込んだ。
「あ…………俺、生きてたのか」
意外にもすぐに意識を失う前の記憶が鮮明に蘇った。
あの巨大な敵に、この右腕で攻撃を放った。大きな稲妻が目の前に落ちて、その瞬間耳に音が入らなくなった。拳から腕へと右半身が裂け、そして間もなく体が地面に倒れ込む。ぼやけていく視界に映る相棒…
そして今、自分はベッドの上にいる。まだいくつかの点滴で繋がれてはいたが。
「ん………、、?」
ゆっくりと顔だけを動かしてあたりを見回すと、ベッドの横にある小さいテーブルの上に一通の手紙がおいてあることに気がついた。
送り主は誰だろうと手に取ると、裏側に“リトくんへ”と書いてあるのを見つけた。これがイッテツからの手紙だと分かる。
「テツのやつわざわざ手紙かいたのかよ」
あれだけこちらの事を心配してくれていたのだから目が覚めた時すぐに駆けつけてほしかったが、まぁ忙しいのだろう。
早く自分も復帰しなければと思いつつ手紙を開けた。
中には当然だがイッテツの字で文章が綴られている。急いでいたのかかなり書き殴ったような字になっているが、まぁ読めなくは無かった。
〜〜〜おはようリトくん
目が覚めたかな?時間がないから適当な字でごめんね
リトくんは+型だから病院の在庫が足りなくて俺の血をあげることにしたよ
勝手に同意書を書いたけどまぁ許してくれるよね
それから俺が君を見つけた時、君の状態は酷くてそれはそれはもう見ていられなかった
体が所々足りなくて、だからね
俺の体をあげる。本当は残機を使って上手いことやろうとしたんだけど
俺が弱いからもう残機が無くてさ
だから
目も、腕も、足も、血も
俺の全部を君にあげるから生きてよ、頼むから
キリンちゃんも泣いてたしね
バイバイ、リトくん 〜〜〜
2枚に渡る手紙はそれで終わっていた。
「は…………なんだよそれ…ふざけんなよ……」
リトは残された手紙を読んでシーツをぎゅっと強く握りしめた。まさかこんなことが書いてあるなんて、イッテツがそんなことを考えていたなんて思いもしなかった。
「くそ、、っ」
一人きりの静かな病室にリトの小さな怒りだけが響いた。
「…テツ、もう。………いねぇの?」
リトはふらりとベッドから立ち上がった。点滴のカートを掴みながら。
リトは暫く病院内を歩き回った。まだ怪我をした人達が運び込まれており少し慌ただしい。
マナやウェンも見当たらない。もしかしたらまだ避難誘導に協力しているのかもと思い、仕方がなく病室に戻る為、来た廊下を戻った。
ガラガラと扉を開ける。この病院の扉は引き戸だったが、まだうまく右手に力が入らないので仕方なく左手を使って。
けれどリトは気づいていなかった。リトの病室は120号室。
この部屋は121号室だということに。
「…………あ、、リトくん」
「テ……ツ??」
扉を開けてみれば視界に入ったのは紛れもなく、ベッドの上で体を起こしているイッテツだった。もうこの世には居ないと思った、二度とこの目で見ることはできないと思っていた。
「お前………っ、、生きて………」
リトがそう言うとイッテツはリトの持っていた手紙を見て気まずそうに目を逸らした。
「その手紙…あー。忘れてた…汗」
イッテツは視線を下にしながら言った。
「その時は色々焦ってて…!…引き算すら間違えるくらい余裕なくて…汗
まだ残機あったっぽい…へへ汗」
「だから…俺、生きてました………。ごめんなさい…」
リトはぎこちなくピースしながら笑うイッテツに何も言わずに抱きついた。
「…っ、、良かった………」
「テツが俺のせいで死んじまったかと思った…」
思わずリトは涙目でイッテツに走り近づいて顔を埋めてぎゅっと抱きついた。
「いや、っ、リトくんのせいにはならないからね!?汗………でも、俺も安心した。リトくんが生きててくれて…」
イッテツも少し涙目になる。
そのまま暫く2人は強く抱き合った。
「結局テツは何したんだよ」
「えーっと、、まず隊員の人に自分も+型だって説明して。血を使ってもらうことにしたんだ」
「残機を使ったとしても前の死体は残るからね。人一人分の血液が採れる」
「でもその時内心パニクっててそういえば残機無くねぇか??って勘違いしちゃってさ」
「それで病院着いて急いでその手紙書いて。でも結局生き返って…」
イッテツ自身、最後の最後まで残機を消費したことはなかったので生き返ったといっても体調が優れずそのまま入院することになったらしい。
「テツはもう平気なのかよ」
「うん、大分良くなったよ」
それからイッテツはやたらとリトの目を見た。目を合わせるのが苦手なくせに何なんだと思い、リトは“言いたいことがあるなら言え ”と言わんばかりの顔をしてみせた。そして、それはちゃんと伝わったようでイッテツが喋り始める。
「その…リトくん。俺とお揃いになっちゃったね。はは…笑」
「……何が?」
「え、リトくんもしかして鏡見てない?!」
イッテツが何を言っているのか分からなかった。何がお揃いなのだろうか。
「俺、さっき目が覚めたばっかなんだけど?鏡なんて見る暇無かったんだよ」
「あっ、そうだよね!ははっ、、ごめん…」
イッテツは慌てて謝るとリトの背後を指さした。
「そこに鏡あるからさ」
イッテツの言葉にリトはゆっくりと鏡に近づいた。そして鏡に映る自身の顔を見て驚きの声を上げる。
「うぉ、っ……紫…?」
リトの右目が鮮やかなアメジスト色の瞳に変わっていたのだ。軽く擦ってみても変わる様子はなく本当にイッテツのものだと分かる。
よく自分がみつめていたあの瞳と同じ。
「もしかして…俺の右腕と右足もテツの…」
「いや、俺の体を使ったのは間違いなく右目だけだよ。眼球が一番原型なく潰れてて、しかも血管が細いから別のに取り替えるしかなかったって」
「でも腕や足は輸血する度に再生したらしい」
「こればっかりは適合者だということを喜ぶしかないね」
前までは適合者として、+型の人間として血の事で不安に思っていたが、まさかそれに助けられる日が来るなんて思いもしなかった。
「ほんと、ありがとな…テツ」
「君に死なれちゃ困るからね」
そして2人は再び抱きしめ合った。もう二度と離れないと願うように。
そしてその時扉の外から声が聞こえてきた。
恐らくあの2人だろうと思いイッテツとリトは顔を見合わせて笑う。
それから間もなくして、泣きじゃくった関西弁と、それからぎゃうな声共に扉が勢い良く開かれた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
終わり