「兄さんっ!!!!!帰ろ!!!! 」
僕は帰りのHRが終わった瞬間に
兄のクラスに来た。
「しーっ……!!お前、あんま大声出すな。
ジロジロ見られるだろ……!」
ジロジロ見られると言うより、
もう見られ”てる”んだけどね。
兄さんはこう見えて繊細だから、
こういうのが苦手らしい。
僕にはちょっとよく分からないけど
「それより早く帰ろうよ!!!早く早く!
スーパー寄って誕生日ケーキとか色々
買うんでしょ!?」
「………………それよりお前、部活は」
「ああ、剣道部のこと?今日だけ
休んじゃおうよ。せっかくの誕生日
なんだし」
「ダメだ。行け」
「えーっ、なんでよ!?」
「そもそもお前、大会が近いだろ。
こんな大切な時期に休んでどうする」
「でも…………」
「安心しろよ。部活終わってからでも
スーパーは行ける。どうせ部活やってたら
一緒に行けないとでも思ってんだろ」
「ほんとっ!?えへへ、 バレてた」
「……あと、1つ言いたいことがあるんだが
いいか?」
「なあに?」
「図書館で待つのが面倒だから、お前の部活
見学させて欲しいんだよ。」
「えっ、つまりそれは、僕たちが部活
してる所を端っこで見させて欲しいって
こと……??」
「あぁ。そうだ。その方が早く帰れるしな」
「全然いいよ!!あ、でも今日は……」
今日は木曜日。
僕は毎週、月曜日と木曜日に
部活の皆に稽古を教えている。
僕は前世での力を引き継いでいるようで、
剣道部の全国大会で 2位を勝ち取っている。
そのため、部活のメンバーから
『時透さんから剣道を教えて欲しい。』
と言われたため、会議の結果、
週2で 僕は剣道をみんなに教えているのだ。
教えていると言っても、
打ち込みで変な所があれば指摘したり
僕と相手で対戦したりとかするだけだが。
兄さんにはまだそのことを言っていない
んだった。
「ダメだったか?」
「あ……いや、ダメではないんだけど……
僕、その日はみんなに剣道を教える日
なんだよね 」
「は?」
「いや、実はさ、週2で僕が剣道を
みんなに教えてるんだよ。稽古みたいな
もん。それでもいい?」
「…………別にいいけど、お前
教えられるほどの語彙力あったか?」
「酷い!!兄さん僕が全国大会で2位を
取ったの知ってるでしょ!!」
「…………まぁそうだけど」
「とにかく早く部活行こう!!
遅れちゃう。」
「ああ、そうだな」
*
活動場所は体育館なため、僕達は
体育館に移動した。
「にいさん、ここの端で見ててね」
「わかってる」
僕は兄さんを端っこで座らせた後、
剣道防具に着替えた。
「よぉ無一郎。今日も稽古よろしくな」
こいつは同じクラスの佐藤。
いつも仲良くしている良い奴だ。
「……あ、佐藤。今日もビシバシ指導
するから、覚悟してね。」
「ははっ、わかってるよ。お前の稽古、
厳しいもんな~。ギャップがあるって言うか」
「……そうかな」
「そうだぞ!?お前、周りからは
昆布頭の鬼って言われてるんだぞ」
「なにそれ知らない」
「まぁそのぐらいお前はすごいって
ことだよ。」
「…………うん、ありがとう。」
*
10分後、僕はメンバーを集めた。
「「今日もご指導、宜しく お願いします!」」
「…………うん、今日も遠慮なく厳しく
いくから、そこの所よろしく。
まずは……、打ち込みからだね。
みんな2人グループになって。」
「「はい!!!」」
そう言うと、みんなはいつもの
二人グルーブになって打ち込みを始めた。
「……君さぁ。ふざけてる?
そんな打ち込み じゃ大会で勝てないよ。
もっと出来るよね?」
「すっ、すみません…………次は本気で
やりますから!!」
「本気でやれるなら最初から
やって欲しいんだけどなぁ……。
というか、前も言った気がするんだけど。
いつになったら覚えるの?」
「…………ごめんなさい」
「………はぁ。もういい。君は1人で
あの打ち込み台に打ち込みしといて。」
「……えっ、でも…………」
「まさか、もう1人のこと心配してるの?
安心しなよ。僕がその人の相手になるから。
君は1人で打ち込み台に行ってきなよ。
無能なんだからさ」
「………………はい」
そう言うと、1人はしょんぼりした顔で
打ち込み台に向かって言った。
僕は気にせず、残されたもう1人と
打ち込みをした。
「…………君、相手がいなくなったから、
僕と相手をしよう。いいね?」
「はいっ……、!」
「うん。いい返事だね」
*
「っ…………はぁっ、はぁ…………」
「……はい負けた。君もやっぱり
弱いね。鍛錬が足りないんじゃないの? 」
「……はい」
「もっと手に力を込めなよ。
その振り方じゃ相手を倒せない。
いつどこから打ってくるのか
予想出来ないの?」
「できます!!!」
「ならちゃんとやりなよ。もう1回。」
「はい!!!!」
*
数十分後、僕は休憩を挟もうと思い
皆を集合させた。
「……よし。休憩入るから、
水を飲んでおいで。…… それから、
もう一つ言いたいことが あるんだけど。
君たちさ、今日調子が悪いと思うんだ。
どうしたの?全然ダメなんだけど。
動きも鈍いからすぐ相手に行動を
先を読まれるよ。
そのままじゃ 大会には勝てない。
勝つ気ある??」
「「……あります!!!!」」
「ならちゃんとやりなよ。 本気なのが
伝わってこないんだよね。
今のままじゃ到底大会には勝てない。
もっとこうしなきゃとかさ、
思わないわけ??」
「「…………。」」
「…………休憩の合間に体を休めておいで。
次は1人ずつ僕と対決してもらうから」
「「っ……はい!!!」」
僕はそう言い放った後、端に置いておいた
水筒を飲み、ため息をついた。
「…………………………ふぅ。」
「……おい、むいちろ、う……」
「あっ、……兄さん」
集中しすぎて兄がいることを 完全に
忘れてしまっていた。一体どうしたんだろう
「……おまえ、厳しすぎないか?」
「え?」
「だ、だってほら……みんな怖がってた
じゃないか」
「……でもあれは稽古だし」
「あのなぁ、限度というものが……」
「………ねぇ兄さん。大会に 勝つためには
これくらい厳しくしないと 行けないんだよ。
それに、 ……僕は、あの子達に大会で
負けて欲しくはない。だからこそ、
厳しくしてるんだ。だから、なんて
言うか……、 僕なりの優しさ、かな」
「………………お前、なんか俺に似てきたんじゃないか? 」
「……ふふ、そう? それより、そろそろ
休憩終わるから 戻るね。」
「……あぁ、頑張れよ」
*
その後、1人ずつ僕と勝負をした後、
部活は終わった。
「「ありがとうございました!!!」」
「うん……。みんな疲れたと思うから、
ちゃんと体を休めてね。」
「「はい!!!」」
*
「無一郎、お疲れ様」
「兄さんっ!疲れたよぉ……」
「さっきはハイライト消えてたくせに
今は甘々モードかよ……」
「兄さん限定だからいいの!!それよりさ、
早く買い物しようよ!!! 」
「…………わかってる」
「ふふ、何買おうかなぁ~、ケーキと
ふろふき大根と…………」
*
僕達は学校出たあと、スーパーに移動した。
「ねえ兄さん何買うの?」
「そうだな……。ケーキとふろふき大根と
寿司だな。」
「ほんとっ!?嬉しい!!」
「はいはい良かったな」
「えへへ、2人だけの誕生日パーティ
楽しみだなぁ」
「せっかくだしコーラも買ってくか?」
「え、いいの!?いつもならコーラは
あんまり飲むなって言ってるのに」
「今日だけ特別な」
「やったね。ふふ、」
珍しく兄さんも少し微笑んでいる気がして、
僕は最高に幸せな気持ちになった。
*
家に帰ると、早速兄さんは料理をしていた。
とか言っても、 ふろふき大根しか
作っていないが。
「おい無一郎。テレビばっか見てないで
風呂の掃除をしろ」
「はーい」
風呂掃除が終わったあと、僕たちは
“誕生日だから”という理由で
僕と兄で一緒にお風呂を入ることを
にした。
本当はいつも兄さんとお風呂に
入りたいけれど、顔真っ赤にして嫌だと
言うので諦めていたが、こういう時だけは
甘々な兄さんである。
「おい、お前……タオルくらい巻けよ、
なんで裸なんだよ!?」
「別にいいじゃん、家族なんだし」
「俺が困る!!」
「もー、そう言わずにさぁ。
兄さんも下に巻いてるタオル 脱ぎなよ 、
別にいやらしい事考えないから。多分。 」
「いやダメだろ!!!」
「兄さんったら恥ずかしがり屋さん だね、まぁそういうところも可愛いけど」
「うるさい…………早く入るぞ」
「んー」
*
「ふー、やっぱり兄さんとのお風呂は
気持ちいいなぁ~。」
「そうかよ」
「…………、」
兄さんの首筋に目が止まる。
兄さんはお風呂に入る時はいつも髪を
お団子にしていて、そのお団子にしている
首筋がなんとも…………。
「なんだよ?ジロジロ見て…………」
「…………かわいい」
「は?」
「ねえ兄さんキスしていい?」
「はあっ!?何言ってるんだよ……!
昨日たくさんしてあげただろ!」
「兄さんの首筋見たらなんかムラムラ
してきちゃって。お願い兄さん」
「ッ…………」
「なんにも言わないならするね。」
「ちょ、ちょっとま………んんっ!」
僕はゆっくりとキスをしお互いの舌を
絡ませた。
「んっ……んぅ……ふぅっ……あ……
むいちろ…………ぉ、」
「はぁ……っ、かわいい、有一郎」
「やっ……ぁ、!やだっ……あぅ、」
何その喘ぎ方。可愛すぎでしょ。
あぅって何、赤ちゃんなの?
ほんとに兄さん可愛い。食べてしまいたい。
そもそもキスだけでこんなになっちゃう兄さん可愛い。
ゆっくりと口を離すと日さんの顔は
とろとろ溶けており、目尻に涙が
溜まっていた。
「…………有一郎、大丈夫?」
「……………………ん」
ダメだ、この人ぼーっとしすぎて
多分聞いてない。
いつも兄さんキスした後はこんな感じに
なるんだよなぁ、しかもお風呂だから尚更。
「兄さん上がろっか、のぼせちゃうよ」
「…………………………うん」
やばいかわいい。可愛すぎる僕の兄さん。
絶対に誰にも渡したくないし同じ空気を
吸わせたくない。
*
「「頂きます。」」
お風呂を終えた僕たちは、
夕飯を食べ始めた。
「ん~!!おいしい」
「そりゃよかったな」
「やっぱり兄さんのふろふき大根が
世界一美味しいよ」
「………………そうか」
「ねぇ兄さん」
「ん」
「僕達、もう15歳になったんだね」
「…………そうだな」
「僕、前世、14歳で死んでたからちゃんと
15歳になれて良かった。」
「………………」
「………前世でも、兄さんと一緒に
15歳迎えたかったなぁ」
「………やめろよ、そんな悲しい話
食事中に聞きたくない」
「うん、分かってる。でもね、僕、
やっぱり悲しいんだ。前世でも兄さんと
一緒に15歳迎えて、そのまま大人になって
いきたかった。欲張りかもしれないけど。」
「それは俺だって……!」
「ふふ、そうだよね。でも、現代で
迎えられて良かった。
………………来年も祝おうね」
「…………当たり前だ。死ぬまで
祝ってやるよ」
「わあ、本当?約束だよ」
「ああ……」
「あ、そういう言えば、買ってきたケーキ
いつ食べるの?」
「22時」
「ええっ、遅くない!?ぼく夜ご飯
食べ終わったら食べたいんだけど」
「ダメだ、そもそも腹一杯のまま
ケーキ食べたらなんか勿体ないだろ 」
「…………ぅ、そうだけど、、」
「それまで我慢してろ」
「…………ちぇ、はーい」
*
「ねぇ!!時間になったよ!!ケーキ!!
早く食べようよ!!」
「わかったから大声出すな……!」
兄さんはため息を着くと冷蔵庫に向かい
ホールケーキを取り出した。
「あれ、ろうそくは?」
「…………ある」
「じゃあつけようよ!!」
「分かってる」
兄さんは慎重にろうそくをケーキに指し、
ライターで火を付けていく。
「わあっ、きれい!」
「電気消すぞ」
そう言うと兄さんは電気の灯りを消し、
ろうそくの火しか灯りがなくなった。
「ふふ、なんだかちょっとわくわくする」
「そうだな……。」
「ねぇ、はっぴーばーすでー歌おうよ。」
「俺は音痴だから嫌だ。お前が歌えよ」
「嫌だ!兄さんと一緒に歌うの」
「なんでだよ……。別に歌わなくてもいいだろ」
「歌わなきゃ誕生日じゃないもん」
「………………ダメだ」
「兄さんのけち!!」
「うるさい。考えが子供なんだよ」
「もー、兄さんわかってないなぁ」
「お前がな……。ほら、さっさと火消すぞ」
「ちぇ、はいはい」
僕たちは一緒に火を消した。
「…………前が見えない」
「あはは……、電気つけようか」
「おう」
*
「このケーキ美味しいね!!」
「そりゃ高いやつ選んだからな」
「ふーん……、」
「……なぁ無一郎」
「なーに?」
「誕生日おめでとう」
「…………兄さんもね。
あと、今夜は抱いていいよね」
「嫌だって言ってもどうせお前抱くだろ」
「うん。で、返事は?」
「…………べつに、いい」
「ふふ、わかった。」
そうして僕たちは口付けを交わした。
僕たちの誕生日はまだまだ
終わらなさそうだ。
コメント
2件
最高ですね、、部活などになると厳しくなって有一郎だけには甘々なのも解釈一致です!!
相変わらず神ですね······