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むかしむかしあるところに
小さなレンガの家に住む、
影売りのおじいさんがおりました。
影売りのおじいさんはお気に入りのパイプを
咥えながら
ぷかぷか ぷかぷかと
クラゲの形をした煙を吐きました。
かんからりん、と音がして
「おじいさん、影三つちょうだい。」
と元気な女の子がやって来ました。
「あいよ、ケホッ、ちょっとまっとくれ。」
おじいさんはそう言うとのそっと椅子から
立ち上がり
本棚から影を二つとりだして
「はい、銀の硬貨二つね。」
と女の子に影を渡しました。
「ありがとう。」
女の子は元気一杯に銀の硬貨を渡すと
白いハトとなって出ていきました。
おじいさんは眼を閉じました。
かんからりん、とまた音がしました。
腕と心に傷を負った兵がおじいさんに言いました。
「影を二つ売りたい。」
「あいよ。」
おじいさんはそう言うとのそっと立ち上がり
兵の影を二つ、掬い取りました。
そして、その影を本棚の中にしまいました。
おじいさんは兵にキャンディーとチョコレートをあげました。
カリッとチョコレートを齧りながら、
兵はゆっくりと店を出ていきました。
おじいさんはあくびをしました。
おじいさんはのそっと椅子から立ち上がり
本棚の影達を整理した後、
ゆっくりと影の中に潜り込んで
どこかへと消えていきましたとさ。