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「俺の名はマッハ・スピード。
見ての通り冒険者だ。
お前は?」
「ハーデス・デイモンロード。」
「そうかそうかハーデスって言うのか。
見た感じ逃げるって感じじゃないよな。
闘うつもり何だろハーデス?
なら俺と一緒だな、共にゴブリン達を蹴散らしてやろうぜ」
初対面にも関わらず物凄く馴れ馴れしく肩を組んでくる男マッハにハーデスは少なからず苛立ちを覚えた。
暇を持て余した所にやって来たイベントにカルラ村の緊張感に反して、もの凄い軽い気持ちでゴブリン達の相手をしに行こうとしていたハーデスを警告しながら村を回っていたマッハに見つかり、早い話絡まれた。
どうも軍刀片手に村の外に出ようしている様子から声を掛けて来たようだ。
「見た感じハーデスはかなり強いみたいだしお前と一緒なら村に被害を出さずに済むかもな。
こう見えて俺も結構強い方だと自負してるからゴブリンの群れなら二人で掛かれば余裕さ。
共にカルラ村の為に頑張ろうぜ」
正直に言おう。
かなりウザイ。
もう1度言うがハーデスとマッハは初対面である。
にも、関わらずまるで知り合いのように話しかけマッハは一人で笑っている。
ハーデスが何の反応も示さないのを気にせず一人で殆ど喋っている状態である。
絡まれているハーデスからすれば至極鬱陶しい状況と言えよう。
「随分と馴れ馴れしいな貴様は」
「お、よく言われるぜそれ。
けどな、いつ死ぬかも分からない職だからどうしても人と関わりたくなっちまうんだ。
自分の命の他に守らないといけないものある。
それがプレッシャーになるし、結構精神的に来ることもある。
けどよ、人と話すとそういうのが吹っ飛ぶような気がするんだ。
そうしたら何時も通りの実力が出せて結果的に良い方に転んできた。
こればかりは俺のジンクスとも言えるからな辞める事は出来ないし、するつもりはない」
「そうか」
「それに共に闘う者だからこそ話したくなる。
どんな思いで闘うか、どんな理由で闘うか知りたくなる。
そしたら共に闘う理由も出てくる。
コイツを死なせたくないって思いが何時も以上の力を発揮させてくれる事もある。
だから話す、だから関わる。
俺は共に闘うお前の事が知りたいからな」
それをフレンドリーと取るか馴れ馴れしいと取るかは人それぞれである。
残念ながらハーデスは後者を取った。
それに理由があろうと馴れ馴れしいものは馴れ馴れしいのだ。
心底嫌そうにハーデスがため息を吐けばマッハは大して気にした様子もなく肩を組んでいた手を外しにこやかに笑う。
その様子に毒気を抜かれたハーデスはマッハを無視して村の外に出る事にした。
「ちょ、待った!
流石に一人でゴブリンの群れの相手するのは無理だって!」
「貴様と余を一緒にするな。
貴様に出来ずとも余にとっては容易い事よ」
ハーデスの前に周り込み、先に行かせないようにしていたマッハもハーデスの自信に満ちた発言に思わず固まる。
過信ではない。
確信めいたその発言にはそれだけの力があった。
その言葉が表すようなハーデスから僅かではあるが威圧感を感じた。
その様子にマッハは笑いながらサムズアップし。
「なら、俺と一緒に行ったら超容易い事になるな。
俺も共に行こう!
共にゴブリン達が村に来る前に倒してしまおう!」
その歯を光らせながらマッハは口にする。
───ぶっちゃけ足でまといある。
マッハは自分の仲間にカルラ村の事を任せ、ハーデスと共にゴブリンの群れが村に来る前に迎撃する事を選んだ。
至極嫌そうな顔をするハーデスを気にする事なく勝手に決めたマッハは、何だかんだ言いながら仲間に伝えて来るまで待っていてくれたハーデスと共に『クオンの森』のある方角に向かって駆け出した。
ゴブリンの群れが行き先を変えさえしなければいずれ鉢合わせする事になるだろう。
「俺自身、『音速』って異名を与えられている程度には足に自信があったし、足の早さで負けた事は無かった。
俺の早さは他の者を置き去りにしてしまう。
けど、お前は俺の早さに付いてきた。
流石は俺の見込んだ通りの男だぜ!」
「その鬱陶しい口を閉じよ、耳障りだ」
疾風の如く駆けながら温度差のある会話する二人はグングンとその早さを増していき、常人の目では見ることも出来ない早さで草原を駆けていく。
(これからゴブリンの群れとの闘いだというのに随分と余裕がある。
余程自分の力に自信があるのか。
まぁ、足でまといにならないならいいが、一人の時と違って気軽に魔法が使えなくなるのだからコイツとの共闘は正直やりづらい)
魔法が存在する事は分かったがどのレベルのものまで使っていいかをまだ判断出来ていない。
一人だったなら他人の目を気にしないでいい為、ある程度気軽に使う事が出来る。
最も、威力が高すぎるものは除く。
そう考えるとマッハとの共闘はハーデスにとってデメリットしかない。
短時間で凡そ把握したマッハの性格的に今から帰るような事はないだろう。
ならば、足でまといにならない事を祈るのみである。
尚も話しかけて来るマッハを無視しながらハーデスは駆けた。
「来たぞ」
「───っ!」
それから暫く二人が走っていると不意にハーデスがその目にゴブリンと思わしき緑色の肌をした醜悪な小人を視界に捉えた。
ハーデスの言葉に無視されても話し続けていたマッハもその口を閉じその顔を真剣なものへと変えた。
それから彼らがゴブリンと交戦したのはハーデスが発見した数秒後。
「【風の鎧】」
そう短く紡いだマッハの体を緑色の風が鎧のように包むのを横目で見ながらハーデスは右手に持った軍刀で先頭にいたゴブリンの頭をすれ違い様に切り落とす。
マッハの方に視線を向けると風を纏ったその足でゴブリンの頭を蹴り飛ばしているのが見えた。
その光景に足でまといにはならないだろうと判断してハーデスは次々とゴブリンの頭を軍刀で切り落とす。
素早く的確に、相手の命を容赦なく奪うハーデスの剣にマッハは一瞬見惚れ、口元に笑みを浮かべると近くにいるゴブリンの頭を蹴り飛ばす。
───接近していた事にすら気付いていなかったゴブリン達は次々と死んでいく仲間に驚愕し、恐怖しその動きを一時止め敵の姿を探した。
だが見つからない。
見当たらない。
敵の姿を確認出来ずただ、気付けば仲間が死んでいる光景にゴブリン達がパニックを起こすのは必然であった。
「ハーデス!デカイの使うから一旦下がれ!」
マッハの言葉に素早く距離を取るハーデスの姿を確認すると直ぐ近くにいたゴブリンを踏み台にして空高く跳ぶと呪文のように言葉を紡いでいく。
否、マッハが紡ぐその言葉こそが本来魔法を使う為に必要な詠唱。
高まる魔力とそれに比例してマッハに集まる風。
漸く、敵の姿を捉えたゴブリン達がその敵意を向けるがそれはあまりに遅すぎた。
「|大竜巻】」
マッハの言葉と共に巨大な緑色の竜巻現れ、ゴブリン達は吸い込まれるように引き寄せられ竜巻によってその身を切り刻まれ絶命していく。
マッハの魔法によってみるみる内にその数を減らすゴブリンの姿を少し離れた所で見ながらハーデスは感嘆の声を上げた。
どうやらマッハの評価を変えなければならないらしい。
その顔に微かに笑みを浮かべたハーデスはマッハの評価を少しだけ上げ。
「うぉぉおぉぉっ!!」
自身の使った竜巻に吸い込まれないよう必死に抵抗するマッハを冷めた目で見ながら、その評価を大幅に下げた。