テラーノベル
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バレンタインの朝、教室にはほんのりとした緊張感が漂っていた。
琥珀は手に持ったチョコレートをじっと見つめ、その温もりが手のひらから伝わってくるのを感じていた。
(今渡したら、どんな顔をするんだろう…でも、どうしても渡したい)
渡す相手はもちろん、蒼真だ。
でもただのチョコレートを渡すだけじゃ、どうしても物足りない気がして、心の中でその一歩を踏み出す勇気を絞り出していた。
「琥珀、今日は顔がちょっと赤いよ?」
莉子が不思議そうに言って、ニヤリと笑う。
「まさか、蒼真にチョコ渡すんじゃないの?」
優香もからかうように言ってきた。
琥珀は驚きすぎて、思わず手に持っていたチョコレートをギュッと握りしめる。
「ち、違うよ!そんな…!」
「でも絶対そうだよ〜」
莉子が嬉しそうに言うと、また琥珀の顔は真っ赤になった。
その時、教室のドアが開いて、蒼真が入ってきた。
「おはよう、琥珀」
その声が琥珀の心をふわりと温かくした。
「あ、お、おはよう…」
琥珀は顔を上げると、蒼真の優しい笑顔に出会う。
その笑顔だけで、心臓が一瞬止まるかと思うくらい、胸がドキドキしていた。
蒼真が少しだけ近づいてきて、琥珀に気づかいを込めて言った。
「なんか、今日はちょっと照れくさそうだね?」
その言葉に、琥珀はますます顔を赤くした。
昼休み、みんながチョコレートを交換し始めると、琥珀の心臓は早くなる一方だった。
そして、とうとうその瞬間が訪れた。
「蒼真、これ…」
琥珀は震える手でチョコレートを差し出す。
手のひらの温もりが少し伝わるような気がして、思わず息を呑んだ。蒼真は驚きながらも、すぐにそれを受け取って、少し笑顔を浮かべた。
「これ、琥珀から?」
その言葉に、琥珀はドキドキしながら頷いた。
「う、うん…」
琥珀の声がかすれたように響く。
その瞬間、蒼真はもう一度笑顔を見せて、ゆっくりとチョコレートを握りしめながら言った。「ありがとう、琥珀。すごく嬉しいよ。」
その言葉が、琥珀の胸の中で静かに広がっていく。
まるであたたかい光が心に差し込んでくるみたいな気持ちだった。「そっか…よかった」
琥珀はホッとしたけれど、それでも心の中にはまだ伝えられない気持ちが残っているような気がした。
その時、蒼真が少しだけ真剣な顔をして、チョコレートを手に取りながら言った。
「琥珀、なんか気づいてる?」
琥珀はドキッとして、目を見開く。「え、何…?」
「さっきから、なんだか照れくさそうにしてるし…
それに、ちょっと意識してる顔してるよね?」
蒼真が少しだけ首をかしげ、にこっと笑う。その優しさが、琥珀の胸をぎゅっとつかんだ。
琥珀は顔が赤くなり、うつむきながら言った。
「ううん、ただ…ありがとうって言いたかっただけ…」
その言葉がふわりと空気に溶けていくと、蒼真はそのまま少しだけ近づいてきて、琥珀を見つめた。
「でも、ありがとう。俺、すごく嬉しい。」
その言葉に、琥珀の心がときめき、無意識に胸が高鳴った。
放課後、教室の片隅で、二人きりになると、蒼真は少し照れたように顔を赤らめながら言った。
「さっきのチョコ、ほんとに嬉しかったよ。」
その言葉に、琥珀はまた胸があたたかくなるのを感じた。
「うん、よかった…」
琥珀は照れ隠しに少し笑って、そのまま顔をそらしたけれど、心の中では幸せな気持ちが溢れていた。
「それに、なんか、俺…琥珀がちょっと意識してくれてるって、わかってたんだよ。」
蒼真は少し照れながらも、真剣な顔で言った。
その言葉に、琥珀は目を大きく見開いて、ドキッとした。
「え…?」
その声に、蒼真は少しだけ微笑み、優しく言った。
「だって、チョコレートを渡すときの顔、なんかすごく可愛かったよ。」
その言葉に、琥珀の顔がまた赤くなる。でも、その照れくさい気持ちが、逆に心地よく感じられた。
「私…蒼真のこと、気になってるだけだよ。」
琥珀はそのまま小さな声で言った。その言葉に、蒼真は少しだけ驚いたように目を見開き、でもすぐににっこりと笑った。
「俺も、ずっと…」その言葉に、琥珀は心の中で「ずっと」っていう言葉が何度も繰り返されていくのを感じた。
夕暮れ時、二人は並んで帰り道を歩いていた。
夕日の光が二人を包み込んで、空気はどこか甘く、ほんのり切なかった。
「これからも、ずっと一緒にいてくれる?」
蒼真が少し照れたように言うと、琥珀はその言葉が優しく心に響いた。
「うん、ずっと…」
琥珀は小さく頷き、ほんの少しだけ笑った。
二人の間に言葉は少なくても、気持ちだけはしっかりと通じ合っている気がした。
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