<いつかの夢は、まだ叶わない。>
※ツララの三人称を「彼女」にしています。
“ 起きて、___。”
[ …此処は何処? ]
“___にとって、大切な場所だよ”
[ …違う。こんな場所大切なんかじゃない。 ]
“ううん。 必ず___は此処が大切な場所だって言うはずだよ。”
[ 違う!だって、此処は…! ]
[ ”ボク”が居たい場所なんかじゃない!! ]
「…っ、はぁ、はぁっ…っ」
仄暗い月明かりが照らす時計を見れば、今の時刻は午前2時過ぎを指していた。
「…大丈夫?ライラ」
横にいるのは友達のツララだった。どうやらずっと手を握ってくれていたらしい。
「…、うん。大丈夫だよ。ありがとう、ツララ」
私はお礼を言って、月の方へと視線を移す。
今日は満月だった。どこも欠けていない完璧な丸は私を釘付けにする。
暗い灰色の壁で埋め尽くされた、外に繋がる場所すら2つの通気口と1つの扉しかないこの部屋に、ただ一つだけある、大きい窓。
その窓でも、鉄格子のような鉄の棒が三本ほど着いているし、魔法が掛けられているから開けれもしない。外の声すらよく聞こえない。が、窓があるだけ、私にとっては充分救いになっていた。
お願いすれば風だけ入るようにしてくれるから夏は涼しいし、窓が開けれなくとも見ればするから秋はお月見も出来る。冬は雪が、春は桜が見える。大人しくしているという条件は付くけれど。
「……ねぇ、ライラ。ライラは、大丈夫なの?」
ツララからの突然の質問だった。私はなんの事かすら分からず問いで返す。
「ん?何が?」
「…こうやって、閉じ込められること…、」
彼女は申し訳なさそうに話す。
視界を私の顔から下の方へと動かした。
そこには鎖で繋がれた私の左手足があった。
鎖の先は彼女の手の先に握られていたはずだったが、ツララの魔法で既に氷漬けにされていて。
先程から何故かひんやりとした空気が漂っていたのはこの氷の所為か、と1人納得した。
監視目的でここに来る時、彼女はいつもこうやって魔法を使う。何故かと聞けば悪いことをしている気分になるからとのこと。善人を勝手に閉じ込めている訳ではないのだが。別に鎖を手で握っておけだなんていう命令は出ていないから、という点では喜の感情が出てくるけども。
「…あー…うん。大丈夫だよ。別に絶対壊せないわけじゃないし。今見せようか?」
「いや…、いいけど…」
話題をかなり無理矢理変えたが、どうにか誤魔化せたらしい。
「…んー、あ、でも…」
少し悩み、口を開く。
「ちょっと、淋しい…かな?」
そう微笑みながら私は言った。
その笑みに、ツララは何も言わずに手を握った。
…今の私は、上手に笑えているだろうか。
いや、きっと多分笑えていない。目の前の彼女の顔を見れば分かる事だ。どう考えたって笑っている人に対する反応じゃない。
(…ごめんね、ツララ。)
(まだ、…まだ君にも話せない。)
これは、______________から。
「…ツララ、呼んできて欲しい人がいるの。」
彼女の方を向き、いつもの声色で言う。
「…誰?」
この時間にか、という顔を浮かべずに、私の願いを聞こうとしてくれるツララはやっぱり優しい。
「…んーとね、名前は_」
その名を口にした時、ツララの顔が心を痛ませたような、少し苦しそうに見えたのは、きっと、きっと私の気の所為だ。
これは、私が君を救いたいという気持ちから生まれた、ただの自己満に過ぎないお話。
これは、勝手にも程がある少女と、その元大親友による、世界を変えに行くお話。
例えその先に、破滅が待っていたとしても。
私は絶対に君を助けに行く。
だから_
どうかその伽まで、貴女の夢が醒めませんように
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