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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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「…んん…ふぁっ…ふ……はぁ…んぅ」


頭の芯がボーッとする。

なんだ?なにが起きている?

あまりの出来事に剣持の脳は処理速度を大幅に落としていた


わからない

わからないけど、とにかく息が苦しい


人間の本能に従い酸素を求めて口を開けば、ぬるりとした何かが酸素と一緒に舌を絡め取って離さない


「っ…ん」


ぴちゃぴちゃと粘膜の合わさる卑猥な音だけが周囲に響いて正常な思考を奪っていった

ゆっくりゆっくり唇を舐られ食まれ

ただただ目の前の獣に味わいつくされる

舌先から感じるのは火傷しそうな熱と乱暴さの中に見え隠れする優しさ

恋人のような扱いに耐えきれず剣持は薄く瞼を開くと瞠目した


揺れる金の瞳が自分を捕らえて動かない



見るな、そんな目で


変態なら変態らしく低俗な欲望だけを見せてればいいのに、なんなんだコイツは

見ないでくれ、そんな心底愛おしいみたいな目で


せめて僕に心置きなく殺させろ



「ぅ…ん…ん゙っ…ふぁ…ぷは」


ちゅっ


最後に小さなリップ音を響かせて男の唇が離れていく、繋がれた銀糸が消えていくのを放心状態で見送った

はくはくと一気に新鮮な空気を取り込めば生理的な涙が頰を伝って流れ落ちる

同時に周りの喧騒が静寂と入れ替わるように剣持の耳に飛び込んできた


「きゃああああああ♡」

「剣持くんっ」

「ちょっお兄さん、なんでええ!?」


女性客の嬉色混じる悲鳴

青ざめる男性客の絶望感

自分に向けられるはずだったと信じて疑わない青年の悲嘆と怒りの声


霞がかった脳内が少しづつクリアになっていく

ふと見上げた先に嬉しそうに己の唇を舐めあげて食後の余韻に浸る男の顔があった


「っ…!」


一気に現実に引き戻される

剣持は腰に差さる刀を目にも留まらぬ早さで引き抜くと男の首筋にあてがった


「おまえ、なんのつもりだ」


「おっと物騒だな。いやまぁ悪いのは俺か…申し訳ないッス。嬉しさのあまり、つい」


「”なんのつもりか”と聞いている」


「何って…愛情表現?」


「あ”ぁ゙!?」


どんどんガラ悪くなる〜とかヘラヘラ笑っているこの男の首を今すぐ飛ばしたい

刀の切っ先を向けられてなお、笑っていられるような男なのだから碌な奴じゃないだろう

剣持は、より一層眼光を鋭くし相手を見据えた


「そんな睨まないで下さいよ。真面目に話すと、君に一目惚れしちゃってさ。ずっと探してたんだけど全然会えなくて…どこに隠れてたんスか?」


言いながら男が性懲りもなく剣持の髪に触れようと手を伸ばす。剣持は信じられないものを見る目で容赦なくはたき落とした


「知らん!この変態キス魔男!近寄るな!」


「えぇ、そんな妖怪みたいな。…悪かったよ。謝るから俺と『お友達』から始めてくれないスか?俺、伏見ガクって言います」


「お前は、まず反省って文字を辞書で引いてこい!」


男に向ける刀は、そのままに反対の腕で忌々しい唇の感触を乱暴に拭う

視界の端で、ついに動きをみせたあの人に心内で舌を打った

ああ、今日はなんて厄日だ


「用心棒が面倒事の中心にいるとか職務放棄も甚だしいなぁ?剣ちゃん」


聖書に記された海を分けるモーセの如く烏合の衆を切り開きながら歩いてくる女性が一人

不穏な笑みをたたえる彼女は数々の伝説を残し従業員と客、両方から恐れられるこのカジノのマネージャー

樋口 楓。


「ひっ」


「ちょろっーと、こっちおいで?」







「ほんで?何がどうなったら、うちの用心棒がキスされてる事態になんねん」


阿鼻叫喚のフロアをさすがの手腕で散らした楓は、そそくさと逃げ出そうとする主要人物達を羽交い締めにして剣持のテリトリーである最奥卓へと場所を変えた


「そんなの僕が一番知りたい」


「相変わらずやな、ここは」


シリアスな表情とは裏腹に戻ってきた最愛を全力で愛でようと剣持を取り囲む取り巻き達。

男女含めて全身余す所なく撫でられたり口づけられたり抱きつかれたりしているが、いつもの事だからと剣持の表情は変わらない


「何か?」


それに異を唱えたのはディープキスをかました男と剣持に振られた男


「ちょっなんスか、その人達!俺のキスは嫌がっといて」


「そうだよ剣持くん!羨ましい!」


「はんっ僕にとって害にしかならないような人間は僕の世界にはいらないからね。ちゃんと役に立ってくれる子には欲しい物をあげてるだけだよ」


「この人、僕より質悪くない?」


ぼそりと剣持に向けて呟いたのは若干、蚊帳の外扱いになりつつあった愛人くんだ。もう帰っていいかなと虚無顔で明後日の方向を見つめる彼に楓は少し同情した

なりたかった立ち位置をああも見事に掻っ攫われたらそうなるわな


「あ〜なんか面倒になってきた。わかった、剣ちゃんあの2人とゲームで勝負しい」


「はい?」


「得意やろ?いつも言うとるやん『僕が勝ったらあんたの大切な物を負けたら僕をあげる』みたいなん」


「それは…」


顔を引きつらせる剣持とは対照的に男2人は目を輝かせ勢いよく獲物を見つめる

盛りのついた犬かお前たちは


「用心棒なら自分の身も守ってみぃ。勝てばええねん勝てば」


「ぐぅ…」


「このカジノを騒がせた罪は重いで?あんたらも剣ちゃん欲しかったら真剣勝負で挑むことやなイカサマは許さへん。あと負けた方は金輪際、出禁とし剣ちゃんの前から姿消すこと」


「「え」」


「当たり前やろ?うちの可愛い従業員に手だそう言うんやから、これくらいのリスク負ってもらわんと」


人知れず楓は怒っていた

なんだかんだと言いつつも彼女は愛情深い。これを機に危ない橋を渡りつづける大切な仲間が多少なりと反省してくれればと溜め息をつく

あの剣持が負けることは、そうそうないと踏んでの提案だ

さっさと2人追い出して元の平和を取り戻して頂きたいと考えていた


「なんでこんな事に…」


俯いて何やらブツブツと文句を言っているだろう剣持を、よしよしと慰める取り巻き達


お前らマジでなんやねん



何度見せられても慣れない光景に呆れる。しかし、その様子に情緒めちゃくちゃにされているであろう他3人をみてかえって楓は冷静さを取り戻した



やっぱあの子が一番おかしいんやないか?




つづく



取り巻き達は私の中で剣持リスナーだと思ってる。

Place your bets.【リクエスト企画①咎人】

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コメント

5

ユーザー

ふわあ!!リクエスト答えてくれてありがとうございます!!最高過ぎる!! 続き楽しみにしております!!

ユーザー

これは最っ高すぎる😭😭続き楽しみにしてます( *´꒳`* )

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