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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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『えらい事になった』と剣持は嘆いていた

あれよあれよと言う間に揉め事に巻き込まれ、いつの間にやらこの身を賭けたゲームに強制参加

ただアキくんに頼まれて助っ人にきただけの用心棒があわや貞操の危機だなんて

本当に、なんて厄日だ


「さぁ剣ちゃん、お着替えしようか?」


「別にいいですよ、なんで僕がわざわざ着替えなんかしないといけないんですか」


ずいっと楓から押し付けられているのは黒ベストのシンプルな男性用ディーラー服。


「なんやバニーガールの方が良かった?」


「そうじゃない」


「ええやん!店の宣伝なるし、あんた顔は無駄にええんやから常連客にファンがいっぱいおんねん。たまにはサービスしとこ?はい、どーん」


笑顔の圧とともに更衣室へと追い詰められ終いには強引に押し込まれる


「パワープレイすぎだろ…」


外からガチャリと鍵のかかる音がする。つまり着るまで出てくるなと彼女は言いたいのだろう

パワハラ、脅迫、監禁と脳内で罪状を読み上げてみるが気づいてほしい人物には届きそうもない

剣持は腕の中にある上質な生地を使用した黒いベストとパンツを一瞥して深い溜め息を吐いた。






剣持以外の三人が通されたのは人通り少ないVIPルーム。何故表ではいけないのだろうかと伏見が疑問に思っていると答えをくれたのはカジノマネージャーの樋口楓だった。


「別に、うちの宣伝になるから表でやってもらってもええんやけどな?剣ちゃんの人気ぶりを甘くみたらアカンねん。もし万が一あんたらの誰かが勝ってみぃ?血の雨降るで。」


そう脅されて先ほど見た剣持の取り巻き達を思い出す。

でろでろに溶けた眼差しを剣持に向けた同じ瞳で射殺さんばかりに周りを牽制していた。なるほど命がいくらあっても足りなさそうだ

だからって諦める気はさらさらねーけど。


「とはいえ、全部隠してしまったら可哀想やからな。常連さんにもたまにはサービスせんと」


意味深に笑う楓に首を傾げていると何やらドアの向こうが騒がしい

バンッと勢いよく開けられたかと思えば扉の先に真新しいディーラー服に身を包んだ怒り心頭の剣持がいた


「お、おぉ…」


隣に座る社長のおっさんが彼の姿を見て感嘆をもらす。いつものスーツ姿も色気だだ漏れだが黒のベストに白いシャツ。ちらりと手首の覗く先には黒の手袋。ピッタリとしたサイズ感ゆえに足のラインがわかる黒のパンツは普段より体の線がハッキリとわかり、つまるところ総じてエロい。

情欲隠さず剣持を見つめるおっさんに自分を棚に上げて若干イラッとした伏見は目潰しでもくらわせてやろうかと邪な考えが脳裏を横切る。しかし物凄い剣幕でカジノマネージャーに詰め寄る剣持に気圧され成り行きを見守る事にした


「マネージャー!!なんですかこれ!」


「何ってネコ耳セット」


樋口さんから淡々と放たれる単語に『え?』と驚愕したまま、狼狽える彼の頭を見る。制服に気を取られていたがそこには立派な黒いネコ耳とパンツから伸びる尻尾がゆらゆらと彼の感情のままに揺れていた


「しかもアキくんに僕を説得するよう頼んだでしょ!卑怯ですよ!」


「いや〜何事も適材適所やなぁ。剣ちゃん動かしたかったらアキくんに頼むのが一番やわ」


「この悪魔ぁ」


「何言うとんねん。これでさっきの騒ぎを水に流そう言うんやで?ついでに、お客様達へのサービスも出来る。天使様の間違いやろ」


「くっ…」


屈辱に顔を歪ませながら、これ以上声を上げても仕方のない事だと受け入れテーブルの前、つまりは伏見たち三人の前に立つ

数秒間の葛藤のすえ顔を上げた彼は諦めたように口を開いた


「お待たせしました、始めましょうか」


顔を真っ赤にさせながら震えている姿にちょっと鼻血が出そうになったとは言えない。





「ゲームはシンプルに『ブラックジャック』とします。ルールは大丈夫ですね?」


「あ、はい!ルールわかりません。」


元気に手を上げたのは伏見の反対隣に座る社長の愛人。

え、というか君も参加すんの?しかもなんで俺は二人に挟まれて座ってんの?

色々と納得いかずに複雑な視線を送る伏見に気付いた青年は、にこりと笑いかけ伏見の肩に頭を寄せて上目遣いにコソっと囁いた


「もし僕が勝ったらお兄さんは僕のものね」


そーいう事かよ。

うわぁという表情を隠しもしない伏見にさえニコニコと笑顔を向ける青年を無視して、もう隣を見やる

おっさんは最早、自分の愛人には目もくれず穴が開くほどディーラーを見ている。やっぱ目、潰しとくか。


「あなた、もしかしてゲーム経験なしですか?」


そんな中、静かなキャットファイトが始まった


「だったら何?」


「いえ失礼。社長の愛人なんてされているしカジノにまで付いて来られているのでご存知かと」


「なっ」


挑戦的に微笑むディーラーと小馬鹿にされた怒りで顔が赤くなる青年の睨み合い

やめて!その言い方だと勘違いしたおっさんが、喜んじゃうから!

案の定、顔赤くしてるから!

見目麗しい二人が自分を取り合って喧嘩している(勘違い)状況に二人まとめて相手してやろうかなんて鼻息荒く、とんだ妄想を膨らませている変態おやじを力で押さえつける

おいコラおっさん!手を伸ばそうとすんな

とりあえず、なんでもいいから話を逸らそうと伏見は口を動かす


「あー!俺も改めてルール知りたいっス。教えてくださいよ刀也さん?」


「あんたに名前呼びを許可した覚えはないけど」


「え〜いいじゃないスか、それくらい」


片手に顎を乗せて上目遣いに見つめると彼の視線がふと自分の唇まで落ちてくる

じっと熱い視線を感じたかと思えば

ハッと我に返って慌てて顔を逸らした

どういう原理なのか彼の動揺を表すように忙しく尻尾が揺れている

顔を隠していても髪の隙間から覗く耳は真っ赤だ


おやおや?



少なからず意識はしてくれているみたいっスね


これは何がなんでも勝たねばなるまい


静かに闘志を燃やした男は長く綺麗な指でカードを切る意中の彼をどうやって手籠にしようかと薄く微笑んだ。




つづく



亀更新な上に話がゆっくりで申し訳ない!でも書きたい!

次こそゲーム開始するぞ〜


たくさんのフォローありがとうございます✨いつの間にかフォロワー様が増えててびっくりしました。

びっくりといえばアキくんまで卒業すると聞いて作者は泣いております。

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