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ドレイクは、ヤマトとセーカに抑え付けられた後、自由の国の王城内へ逃げ込んでいた。
「よぉ! 博士長のドレイクじゃないか! またこの国の為にいい発明でもしてくれたのか?」
ドレイクに話し掛けたのは、国王 キングだった。
「えぇ、国王様。とても良い兆候ですよ」
「ハッハッハ! それは何よりだ! 今後とも励んでくれたまえ!」
キングは腕を組み背を向ける。
その瞬間、
「 “雷魔法 ジャック” 」
ドレイクはキングに触れ、魔法を唱えた。
一方、自由の国のアイドルたちは、いつか自身の演奏をちゃんと聴いて欲しいと願い、練習に励んでいた。
「わっ! またスティック折れちゃった!」
「レレちゃんは一人で練習しすぎだよー」
「ララちゃん、コード進行固まったから、あの曲のメロディに沿って少しBPM落として歌える?」
「ほい来た! 任せなさい!」
そこに、国王 キングが現れる。
「ありゃ? 国王様? どうかしましたか?」
「ロロ、次回の公演についての話だ。着いて来てくれ」
ロロは「は、はい……」と頷いた。
二人が出て行った後、
「ロロちゃん大丈夫かな……」
「国王様、いつもロロちゃんのことチラチラ目で追ってたもんね。絶対好きだよあれー!」
「でも公演の話でしょ? また演出家さんたちと一緒に打ち合わせでしょ? 考えすぎだよ」
コツコツ、と、二人の足音が響き渡る。
「あ、あの……いつも打ち合わせしてる部屋……通り過ぎちゃいましたけど……」
キングは、黙って足を運ばせる。
「あ、あの……」
「ロロ」
そして、キングは立ち止まり、ロロを見つめる。
「な、なんでしょうか……?」
「相変わらず、小芝居に興じるのが好きですね……ガンマさん。もうとっくに気付いているでしょう?」
ロロは、その容姿からはとても似合わないような不敵な笑みを浮かべる。
「ドレイク、時間を厳守し過ぎだ。君がここにいると言うことは、君の計画は上手く行かなかったんだろ? 臨機応変さが欠けているんだよ」
「それは申し訳ない。天使族が思ったよりもキレ者でしてねぇ……。ただ、愉しめましたよ。貴方の言う通り」
すると、ロロの姿は徐々に緑髪の男性へと変貌する。
「やっと君にも伝わってくれたか。そう、この世は愉しむ為に作られている! 僕が演技に興じるのも、幻影魔法と言うものを最大限に愉しむ為なのだよ!」
そしてキングの姿もまた、ドレイクに変わった。
「まあいい。敗因は何だ。端的に答えろ」
不敵な笑みを浮かべていたガンマは、突如、顔付きも口調も変わってしまった。
「手筈通り、パーティを削った上で仙人の元へ行かせ、異郷者 ヤマトを洗脳に掛けるところまでは成功しました。しかし、異郷者 ヤマトを洗脳に掛ける魔力がかなりのもので、私自身の攻撃魔法が封じられてしまった。そこを突かれ、天使族の光魔法により救援が来て、押し負けました。仙人の元にも一人、防御魔法の特殊な者にも加担されました」
「天使族もかなり魔法制限が解けてきた……と言うところか。ふふふ……それは実に愉しい光景だっただろう」
すると、ガンマは再び不敵な笑みを溢す。
「成熟した果実を捻り潰すのが愉しいんだ」
「仰る通りです。私が、危険は早く排除した方が良いと、急ぎすぎてしまっていたかも知れません。ヤマトくんも、まだまだ強くなりそうだ……」
ガンマはドレイクに背を向ける。
「どこへ?」
「ふふ……ちょっとした遊戯だ。ドレイク、先に長の元へ向かっていていいぞ。この国の幻影も解く」
「分かりました」
ガンマは、国の中心である噴水公園へ行くと、大きく右手を挙げ、指揮者の様に思い切り手を握った。
その瞬間、国内にいる全ての人間が倒れた。
その時である。
ラーチに信号が渡った。
「さて、これでお気楽の水の神にも伝わっただろう。見せてくれ……神の怒りを……」
そう言うと、ガンマは影となり光の底に消えた。
ラーチがヤマトの仙術魔法 神威で孤島へ辿り着くと、ラーチは真っ先に足を進めた。
向かった先には、地下へと続く階段が広がった。
「この奥だね」
ラーチの目は血走っている。
その怒りを微塵も隠せない程、怒っていた。
コツコツ、と、薄暗い階段を下って行く。
すると、昏睡状態で魔法封じの札が両手に貼られたロロと、それらを警備する者たちの姿があった。
「なんだ? このガキは?」
「ここをどこか分かってるのか? さっさと消えろ!」
警備兵たちは、全員が黒い甲冑を身に付けていた。
「僕は子供だ。本来であれば、君たちの親玉を聞き出したり、君たちを拷問に掛けるべきだろう……」
「は? 何を言ってんだ?」
「でも、僕は子供。バベルにそう創られたんだ。だから、感情のままに行動するよ、バベル……」
「ラーチ? 何それ、バベル!」
「いや、ライチ。果物の名前なんだ」
「ライチ? どんな果物なの?」
「うーん、果物だから甘くて……感触としては少し固いかな……。皮はゴツゴツしてて、中身はプリっとしてるんだ! ライチ自体も美味しいけど、飲み物に混ぜたり、色んなものと一緒に合わせられる! 水の加護を与える君にピッタリの名前だと思うんだ!」
バベルは楽しそうに話す。
しかし、ラーチはご納得行かない様子を浮かべる。
「うーん。ライチだと、なんだかイチー!って、歯を食いしばって言い辛いよ。ラーチって伸ばさない?」
「ははっ! いいぞ、じゃあ君の名前はラーチだ! 自由で、君の楽しめる国が作れるといいな!」
「ありがとう! バベル!」
ラーチは、昔の記憶を巡らせながら片手を上げる。
「強制発動 “加護魔法 スコール” 」
すると、守護神 ロロの加護魔法が勝手に発動され、ロロの身体は液状化し、水となった。
そして、ラーチは両手を大きく広げた。
「 “水神魔法” 」
目は大きく開かれ、ラーチの全身は青いオーラに包まれ、少しの風が吹き荒れる。
「 “レイニー・デスマーチ” 」
詠唱と同時に、ラーチの背後には雨雲が出現する。
雨雲から、人体をも突き刺す速度で豪雨が放たれる。
水神魔法 レイニー・デスマーチは、発動者以外の全ての生体反応を、
「うわああああ!!」
「なんっ……」
「ギャアアアアアアアア!!」
刺殺する。
ザーザーと横向きに流れ落ちる豪雨の中、次々と死体へと変貌し、血の溢れる地下の中、ラーチはそっと呟いた。
「全然楽しくないよ……バベル……」
暫くし、警備兵全員を殺したラーチは、液状化したロロに話し掛ける。
「ロロちゃん、終わったよ!」
「ラーチ様……助けて頂きありがとうございます……」
「んーん! 僕が自由すぎたんだ。ごめんね……」
そう言うと、元の姿に戻ったロロを連れて外に出た。
「水神魔法……恐ろしい力だ。流石は神の魔法か……」
影からゆったりとガンマの姿が現れる。
「僕に攻撃が来なかった点を見る限り、生体反応を感知するタイプの魔法かな? 最後の一人が殺されたら自然と魔法攻撃は終わったみたいだしね……」
ニヤリと笑うと、また影の中に消えて行った。
「水神の力は凡そ分かった。僕の仕事はこれにて終了。僕も長の元へ向かおうか……」
龍族の一味 “狂宴者” 。
闇龍の加護を受けた最初の一味。
闇魔法 幻影魔法を扱う龍族 ガンマ。