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嫌な予感がした。
あれ程生き生きとしている鋭琉を、宇琳は初めて見た。
──いや、生き生きとしているのは、良い事だ──。
「(良い事、だけどなあ・・・)」
鋭琉は、話が長い。
本当に、結構長い。
話自体はなかなか面白いのに、勿体無いくらいに長い。
どれくらいの覚悟が必要かは、鋭琉と付き合いの長い宇琳には最初の一言でわかる。
「俺は常々思うんだが」から始まる話はとんでもなく長いし、
「すぐ終わる」から始まる話もそこそこに長い。
ちなみに、「長話になるんだが」から始まる話はそこまで長くない。
あと説教はすぐ終わる。
そして──
「そういえば」から始まる話は、途方もなく長い。
本当に、終わる気配がない。
それに、今の鋭琉はテンションが高い。
テンションが高い時の鋭琉は、すぐ脱線する。
脱線した先の話もとんでもなく長いし、その話が終わったら脱線する前の話にしっかりと戻ってくる。
つまり、なかなかに長い話、2本立て。
生き生きと話し出す鋭琉を見る。
こうなったら鋭琉はもう周りが見えない。
──今日はもう帰れないかもしれない。
宇琳がそう思ったのはなぜか。
そう難しい理由じゃない。
もうすでに話が脱線しているからだ。
宇琳は天を仰ぎたくなって、踏み止まる。
せめてと時計に目をやった。
普段はクールな軍人みたいな顔をしているくせに、意外と鋭琉はこういう所がある。
・・・なぜ鋭琉は近代の天気の話をしているのだろう。
精霊異能の話ではなかったか、と宇琳は内心頭を抱える。
果たして今日中に本題まで辿り着くのだろうか。
「突き詰めれば18世紀にまで遡るが」
「遡るな」
・・・やはり、無理かもしれない。
天気の話で18世紀まで遡る人間がどこにいる。
「・・・精霊異能の話じゃなかったのかよ・・・」
多少気が引けるが、話を遮って本題に戻す。
それでも30分天気の話を聞いたのは褒めてほしい、と宇琳は思う。
「勿論忘れてなどいない。所謂スモールトークだ、スモールトーク」
「全然スモールじゃねえ」
「慣用句だ。本題の前にする話、という意味の」
「知ってるわ」
どうやら、話が長かったという自覚は鋭琉にはないらしい。
「──ああ、そうだ。精霊異能の話だったな」
思い出したように鋭琉は言う。
「・・・どこまで話したかな」
「・・・精霊の──霧のせいで視界が悪くなったところまでは聞いた」
「ああ、そこか」
霧で脱線したんだったな、と鋭琉は呟いて、話を続けた。
なかなかえげつない内容の話を、心底楽しそうに鋭琉は話す。
「(・・・多分、シンプルに話好きなんだろうな)」
あれで意外と噂好きだしな、と宇琳は思う。
前にゴシップを喋った時の食いつきを思い出して、再び脱線し始めた話に、 宇琳は内心微笑ましく話に相槌を打った。