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「お前はいつもいつもっ、俺の苦しさなんて知らずに、ヘラヘラ笑って、っいい加減目障りなんだよ…!」
廊下いっぱいに彼の叫びが響く。
そんなことどうでもいいように、彼は続ける。
「いいよな、お前は。 駄目なところばかり指されて、頑張れと、努力だけを求められなくて…! さぞかし緩く、暖かい日々を送っているんだろうな」
嘲笑を浮かべこちらを睨み、俺を傷つけるための言葉を放つ彼自身が、自分の言葉で傷ついているようで。
俺よりもずっと大きな彼が、必死に自分を守ろうとする小さな子猫のように感じて、 そんな大きくて小さい彼を強く抱きしめた。
「…俺には、お前の苦労なんて一生わからない!悩みも、辛さも…! それでも、今お前がボロボロなのはわかる!」
彼の心に届くように、こちらもがむしゃらに叫ぶと、腕の中で暴れていた彼が、動きを緩める。
俺の左肩に、暖かいものが落ちる。
俺の目からも暖かいものが伝っていく。
「きっと俺は、将来もお前の苦しさの上で笑うと思う! だけどっ、お前の苦しさがあること、絶対忘れない! 絶対、覚えてる…!!」
彼の肩に顔を埋め、涙をぼろぼろとこぼしながらそう続ける。
声を震わせ、ぐずぐずと鼻水を啜りながら、彼は反論する。
「お前は、俺の、苦しさの何を知っているつもりだ。 なんにも、知らないくせにっ、勝手なこと言うな」
「だったら、俺に教えてくれよ。 小さなことだっていい、お前が一人で苦しむより、ずっといい」
ひゅっと、彼が息を飲む。
俺の言葉が届いてくれたのかな。彼が、おそるおそると、それでもしっかり抱きしめ返してきてくれた。
「っうえ、うっ、ずっと、ずっと…! 苦しかった…!!」
暖かい、大粒の涙が肩を濡らす。回された腕にぎゅっと力が入り、俺と彼との隙間が埋まる。
「勝手に期待して…! ぅっ、駄目だったときは、勝手に失望してっ、結果が出せても、更に上を目指せと、できて当たり前だとっ!」
泣きじゃくり、縋るように俺を抱きしめる彼が、なんだか可愛い。
ゆっくりと、あやすように彼の頭を撫でる。
「そっか、そうだよね。 認めてもらえてもらえないのって、苦しいよね。 できていて当たり前のことなんて、ないはずなのにね」
俺だって、一生懸命やったことが当然だと思われるのも、勝手にできると思われてがっかりされるのだって嫌だ。
ずっとそんな中で頑張ることを続けられてるお前はすごいよ、頑張ってるよ。
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