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ボイスフレンズの返答を聞き、自分の背筋が急に冷えた気がした。
「えっ?」
するとあれだけ騒いでいた父は急に黙り込んだ。
「お父さん、なに冗談でしょ?」
父はピクリとも動かない。
「ちょっと冗談きついって、お父さん」
肩をバンバン叩いても父は反応しない。先ほどの駄々っ子のような寝転がった不自然な体勢を保っている。
「まさかね」
「ちょっと、ボイスフレンズ。お父さん、なんとかしてよ」
【お父さん、なんとかしてとは、どういう意味でしょうか?】
合成音声が淡々と答える。当たり前のことなのにすごく気味が悪い。私は動揺を隠すように尋ねる。
「お父さんと一緒にふざけているんでしょ」
【お父さんというデバイスを稼働させるなら「Hi, ボイスフレンズ。お父さんの電源を点けて」と言ってください】
「まじか」
このイタズラはいただけない、仕方がないな。
「Hi, ボイスフレンズ。お父さんの電源を点けて」
【Yes】
すると父は急に動き出した。
まるで止まっていたレコーダーが急に再生し始めたかのような、嫌な感じがする。
「はあ~、ボイフレは偉いなあ~。うちの仕事がこんなに楽になるなんて。毎日、最高~! あはは!」
急に騒がしい声が戻ってきたが、私は無性に父に腹を立つ。
「ちょっとお父さん、冗談やめてよね」
父は赤ら顔で首をかしげてこちらを見る。
「ううん?」
ああ、駄目だ。これ、話が通じていないやつだ。
「おふざけが過ぎるってこと」
怒っていますと伝えるために語気を強めに言っても、父には全く通じない。
「ふざけてないもーん」
私の機嫌が悪くなっていることを察した母は、どうどうとなだめた。
「止めなさい、響子。お父さんのいつもの冗談よ。酔っ払っているとき、なに言ってもきかない人だから」