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なんでもいいからみんな幸せになってくれ、、!!
続き楽しみです!!これから湊さんたちどうなるんだ〜!
自分の気持に整理がつかない…
実態のある相手なら立ち向かうこともできる。
だが、その相手が自分自身となると立ち向かう事も罵倒する事もできない…
できる事は精々自分で自分を憎み、勝手に自分に嫉妬して嘲笑う事だけだ。
「なんで…っ!!」
右手の拳を机に叩きつける。
嫉妬する相手が自分自身ではどうする事もできないもどかしさをシンはどこにぶつけて良いかわからなかった。
記憶の戻らない自分に苛立つ。
その夜ベッドに横たわったシンは自分を責め続けるしかできなかった。
「おはよう。シン」
何事もなかったかのように湊はシンに声をかける。
湊の優しさが今のシンには辛かった…
「…おはようございます」
湊に挨拶したシンの目は赤く充血していた。
湊は忙しなく身支度をしている。
「もう出掛けるんですか……?」
「町内会の会合があるんだ。悪いけどもう出るわ」
出掛けようとする湊に
「湊さん…」
シンが声をかける。
「昨夜は…」
「シン帰ったら話がある」
シンの話を遮るように湊が言った。
「……」
「遅れそうだから、行くわ」
そう言って足早に湊は家を出ていった。
(避けられた……)
1人残されたシンは俯きながらため息をついた。
会合の後、店に向う途中
「湊さん!」
桜子に会った。
「おー。桜子ちゃん」
手を振りながら桜子に近づく。
「湊さん、シン兄とまた一緒に暮らしてくれてありがとうございます」
「お礼なんて…俺がそうしたかっただけだから…」
湊が右手で頭を掻く。
「あれ…湊さん。まだブレスレットしてないんですか? 」
湊の右手首にブレスレットが無い事に桜子が気がついた。
「うん…まだあいつの記憶が戻ってないから…」
「そうですか。じゃあ渡したらシン兄めちゃめちゃ喜びますね!湊さんから貰った日に写真送ってきてくれて、お揃いだってすっごく嬉しそうに話してたから。2人の名前が彫ってあるんですよね~」
「あいつそんな事まで桜子ちゃんに話てたの?!」
「お揃いのブレスレット羨ましいな〜!早くシン兄の記憶戻って渡せると良いですね!」
「…だね」
桜子の嬉しそうな顔に湊は複雑な思いを隠せなかった。
「シン兄と何かあったんですか?」
湊の言葉のニュアンスから桜子が心配する。
「何にもないよ!大丈夫」
無理に笑ってみせた。
「ただいま~…えっ!シン?!」
居間に座って帰りを待っていたシンは湊を睨みつけるように見ている。
「湊さん。話ってなんですか?」
「シンちゃんなんでそんなに怒った顔してんの……?」
「今朝湊さんが俺を避けてたから…」
「避けてなんかねーよ。集合時間に遅れそうだったから…って、それで睨まれてる?」
「話があるってだけ言ったまま出かけちゃったから。俺、今日1日ずっとその事が気になって…」
「まったく…お前は…」
湊は靴を脱いで家にあがるとシンの前に座る。
「で、話ってなんですか!」
「そんなに怒るなよ…シンちゃん…切り出し難いだろ…」
「……」
「えっと……来週の土曜暇か?」
想像していたのとは全く違う事を聞かれてシンは戸惑った。
「予定はないですけど……」
「隣町で花火大会があるんだけど一緒に行かないか?」
「…えっ?!話って花火大会の事ですか?」
「そうだけど…」
「……良かった~…俺はてっきり実家に帰れ。とか言われるのかと…」
「はっ…笑。なんでそんな事俺が言うんだよ」
「だって昨夜、湊さんの事攻めてしまったから…」
「ばーか。あれはお前が悪いんじゃない…俺がいけなかったんだ…」
「でもっ…」
「……」
「……」
「ごめんな。シン。お前の言う通りだ。俺は目の前のお前の中に前のお前を探してた…」
「……」
「前とは違うお前の反応や仕草に寂しさを感じていたのは事実だ… 」
「……」
「言い訳に聞こえるかもしんねーけど…それでもやっぱりお前はお前だけなんだよ。前とか今とかじゃなくて、俺が大切にしたい香月慎太郎は今、俺の目の前に居るシン。お前しか居ないんだ…昨夜はきちんと言えなくてごめんな…」
「湊さん…」
「だから…もう自分を責めるな…」
「……」
「手…出してみろ」
「……」
差し出したシンの右手は昨夜机に叩きつけた時にできた傷跡が残っていた。
シンの苛立をぶつける音は当然湊にも聞こえていた。
「バカだなお前は…なんでこんなになるまで自分を責めるんだよ…」
傷跡にそっと触れる。
「こんなの平気です…」
「……」
「……湊さん?」
湊の肩が震えていた。
触っていたシンの手を強く握る。
「俺が……」
「……」
「俺が嫌なんだよっ!…慎太郎(これ)は俺のだ!」
「……」
「俺の許可なく勝手に慎太郎(これ)に傷つけんなっ!!」
瞳から涙が溢れ出す。
自分の態度でシンを追い詰めてしまった事を湊は後悔していた。
「…ふざけんな」
湊の怒りは自身に向けられていた。
シンをここまで追い詰めたのは自分だと…
シンは湊を抱きしめた。
「なんであんたが泣くんだよ…」
「ばか…泣いてなんか…」
湊の頬を伝う涙をシンは指で拭う。
「ごめん…湊さん」
そう言って湊の頬にそっと口づける。
湊はそんなシンを黙って見つめていた。
互いの目を合わせると顔を近づけ合い唇を重ねた…
「湊さん…今夜一緒に…」
「寝ません!」
「なんでですかっ!」
「お前昨夜ほとんど寝てないだろ…今朝、目赤かったぞ!」
「……」
「先に寝る!おやすみ!」
(………)
いつか見た光景と重なる。
シンの中でパズルのピースがひとつ重なり合った気がした。
【あとがき】
これで正解なのだろうか…迷走し過ぎてわからなくなりました…笑
今までで一番悩んだ話です。
悩み過ぎて投げだそうかな…逃げちゃおうかな…とか色々考えました笑
前作までを何度も何度も読み返し、しんみな ならどうするのか、これからどうしたいのかを作者なりに妄想した結果に書き上げた作品です。
感想など頂けたら嬉しいです♪
もう少し続くかな…
また、次回作でお会いできますように…
月乃水萌