テラーノベル
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黄と別れた後、俺はある場所へ向かった。
そこにある部屋に入ると明るい声が聞こえ、笑顔の男の子が二人いた。
「あっ!赤!」
「えっ?ほんとだ!会いに来てくれたの?」
俺が向かった場所。それは、黒野第一病院。ここは、県内でも結構大きい病院で、難病を患ったり、大きな怪我をした人が入院、リハビリする場所。さっき俺を見て笑顔になったこの子たちは、俺の弟。青と水だ。この二人は昔から体が弱く、入退院を繰り返してた。そして、今は入院している。
「ねー、赤。今日遅かったからさ、来ないかと思ったよ?」
「あー、そうなの?ごめんね?」
「でも、来てくれたからよかった!」
「ありがと。そうだ、はいこれ。お土産」
黄が参考書を買ってる間に俺もクロスワードだっり、色塗りなどを買った。この二人は外にあまり出る事ができないから、やれる事が限られてくる。
だから、運動はできなくても、勉強だけはできるようになって欲しい。そう思って、毎回お土産として、クロスワードや塗り絵をあげる。
「また新しいクロスワード?」
「うん。この前来た時、全部解き終わったって言ってたでしょ?だから、新しいの。前よりちょっと難しいけど、青ならいけると思ってさ、どう?」
「…!ありがと!俺、またこれもすぐ終わらせるね!」
「おー、程々にね?」
青がニコニコしてる横で水は『 水ちゃんのは
?』みたいな顔で見てくる。
「水ちゃんのは、こっち。塗り絵!」
「わー!前よりいっぱいだ!」
「まだ色鉛筆はある?」
「うん!まだ使える!」
「じゃあ、次くらいに新しいの買ってくるか、青ちゃんは、何か欲しいのある?」
「うーん?特に無いかな?」
「了解。じゃ、俺、お医者さんとお話ししてくるから、いい子に待っててね」
「はーい!」
元気に返事をした二人を見て、俺は病室を出た。なんで俺が病院の先生とお話しをしないといけないのか。本来な、親がする事だろうけど、 俺たちには親と言える人がいない。だから、俺がこの二人の保護者として行動してる。大学生として生活しながら、二人のためにお金を稼ぐのも大変。でも、二人の笑顔が見れるなら、どーて事ないと思う。
「あっ、先生。お久しぶりです」
「あ、嗚呼、赤くん。最近忙しいのかい?あまり来ないようだけど」
「まあ、そうすっね。バイトとか色々予定詰まってて、」
「じゃあ、これからまたバイドかい?」
「あー、今日はないと思うんですけど、課題があるので、それを終わらせようかと」
この先生は二人のことだけでなく、俺のことも心配してくれる。この優しさが嬉しいような苦しいような、今の俺には判断ができない。
「だっら、手短に二人のことを伝えるね。最近は、結構調子はいいんだけど、悪い日との差が激しくてね、お家に戻ったとして、しっかりと学校に通ったりできるのかが不明でねだから、まだ退院とまではいけないかな」
やっぱりな。と思った。だって、この前来た時は体調が良くないにだった。その時に、俺一人じゃ何もできないと思った。それに、ずっと一緒にいることはできない。
「でもね、後一カ月、二人の体調がずっと良かったら、一時退院も視野に入れていいと思ってるんだよね。どうだい?」
「一時退院……そうですね、考えてみてもいいかもしれませんね。ありがとうございます」
あの二人の病気は、完全に治るものではない。だって、薬が開発されてないから。でも、二人が健康でいるためには、俺が頑張らないといけない。次のバイトのシフトを確認しながら二人の病室に戻る。
「あっ!お帰り!」
「見て!もうこんなに解けたよ!」
病室に入った途端、二人の眩しい笑顔が見えた。治らない病気を持っているとは考えられないほどの笑顔だ。泣きそうな顔を無理やり笑顔に変える。二人には、明るいお兄ちゃんって思ってて欲しいから。
「すごいじゃん!やっぱり、二人とも天才なんじゃないの?」
「水ちゃん、すごいでしょ!」
「俺も頑張ったんだ!」
すごいすごいと言いながら、二人の頭を撫でる。ふと時計を見ると、五時を過ぎていた。
「あー、ごめん。俺帰らなきゃだ」
「えー?もう帰っちゃうの?」
「ごめんな?でも、また来るからさ!」
「約束だよ?」
泣きそうな顔で俺を見つめてくる二人。まだ一緒にいたい。でも、無理だ。二人にまたねと言って、病室をでる。
「まだ、一緒にいたかったな」
今までは『まだ一緒にいたい』そう思ったのは青と水だけだった。でも、今日は黄とも一緒にいたいと思った。黄は、俺だけを色で認識できる。って言ってた。だから、俺は黄に変化を与えた。でも、俺を黄に何かしらの変化を与えられたかもしれない。
だけど、本当の俺を知ったら、黄も離れていく気がした。
だって、今までも、俺が泣いたり、暗い表情をしていると『赤らしくない 』『赤が落ち込んだりするわけがない』『お前なら、もっといける』そう言われてきた。
だから、作った笑顔を貼り付けて、みんなの頼れる人を演じる。
これは、俺の勝手な憶測だけど、俺から笑顔が消えたら、きっと、黄はまた色が見えなくなると思う。それだけは嫌だ。
「ごめんね、嘘つきで。俺、黄の秘密聞いたのに、俺だけ話してないや。ごめん。やっぱり、俺って最低だ」
無意識に俺は、謝っていた。黄に届くはずもないのに。
だって、黄は、俺のことを明るい人だと思ってるはずだから。
ほんとは、すぐに泣きそうになって、怒鳴り声がダメで、人に愛されたいのに愛されるのが怖くて、人のことをまともに信用できないし、作った笑顔しかできない。
こんな俺を黄が知ったらどうなるか、きっと失望して、離れていくと思う。黄ならそんなことしないと思うが、もう期待したくない。青と水の病気が治る可能性があるって言われても、黄が俺と一緒にいたいって言っても、きっと今の俺は、全てを否定する。何も受け入れない。
「あーあ、俺って、とことんクズだな。きっと、黄に期待させて失望させるんだろうな」
数分後、黒羽町に着いた。しかし、家に帰る気力もなくなり、バス停近くの公園のベンチでボーとする。夜風が冷たく、目が乾燥してきた。目の乾燥とぐっちゃぐっちゃの感情が混ざり、涙ができてた。涙を止めることもできず、ただ一人で泣く。心配してくれる人も俺にはいないのだから。
「とまんねー、やばいな。もう、何をしたらいいんだろ」
「赤?……なんで、泣いとるん?」
一人で泣いていると聞き覚えの関西弁が俺の名前を呼んだ。
「黄………?」
「ちょっ、ほんまになんで泣いとるん?てか、大丈夫なん?もう夜も遅いのにこんな所で、酒でも飲んだんか?」
確かに、寒さのせいで赤くなった顔で泣いているし、空き缶を持っていたらそう思われるのも自然だ。まさか、泣いてるところを黄に見られるなんて思いもしなかったけど。
「別に、酒は飲んでないよ。心配ありがとね?でもさ、黄だって、こんな夜遅くに出歩いたらダメでしょ? 」
ヘラっと笑って話を逸らす。深掘りされたらめんどくさいから。黄からの視線が気になりチラッと見ると、真剣な目で俺を見ていた。
「いや、それもそうやけど、赤、ほんまに何があったん?俺に教えてや」
「何にもないよ。大丈夫。本当に大丈夫だからさ。ほら!もう泣いてないでしょ!だからさ、もう心配しない……で」
「ッ………」
ねえ、黄。なんで、なんでそんな泣きそうな顔で俺のことを見るの?やっぱり、黄も辛いことがあるの?ねえ、なんで?
「赤、じゃあ、なんで泣いとるん? 」
「………俺、泣いてる?」
「めっちゃ。やっぱり、なんかあったんやろ?もう、こんな所で一人で泣かんでや。俺、まだ色を見てたい。赤だけの色でもいいから」
ずるいよ。そんな、優しい言葉を俺にかけないでよ。俺、黄に期待しちゃうよ?裏切らないって思ってもいいの?
「ねえ、黄。…………助けて」
無意識のうちに出た言葉。黄は優しく俺の手を掴んだ。
「助けたる!赤は俺のことを助けてくれた。だったら、次は俺が赤を助ける番や!だから、赤のこと、助けてもええか?」
嗚呼、黄は眩しいな。色が見えていないのが嘘に思えるくらい。止まっていたはずの涙がまたこぼれ落ちた。これは、辛いとか生きたくないとかそういう闇の気持ちから来たものじゃない。ただ、人の優しさに触れ、それに感動しただけ。
「黄、……ごめんね?」
「謝らんで。こういうのは、お互い様ってやつやろ?」
「そうだね、じゃあ、ありがと」
「…!こちらこそ、ありがとーな!」
次回 『幸せ』
コメント
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黄と別れた後の公園のシーン、もう切なくてたまらなかったです…。赤が作った笑顔でずっと頑張ってきたんだなって。弟たちの前では明るいお兄ちゃんでいようとする姿に胸がぎゅっとなりました。でも最後、黄に「助けて」って言えた瞬間、本当に良かった。黄の「助けたる!」がめっちゃ響きました。続きが気になる…!