テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
情報提供日:2024年11月20日
調査終了日:2025年6月8日
※情報提供者および取材協力者の氏名は、本人の希望により仮名または非掲載としています。
情報提供
2024年11月、編集部宛てに次のような相談が寄せられた。
”毎日、家にイタズラ電話がかかってくる。
電話に出ると、相手は「もしもし」「もしもーし」と繰り返すだけで、こちらが何を言っても返事をしない。
声は毎回違うが、言っていることはいつも同じである。“
情報提供者は、滋賀県在住の50代の女性である。
女性によると、電話はほぼ毎日、午後7時前後に固定電話へかかってくるという。
電話口から聞こえる声は、成人男性、成人女性、若い男性、高齢者と思われる声など、その都度異なっていた。
しかし、いずれの人物も一貫して、
「もしもし」
「もしもーし」
「もしもしー?」
と呼びかけるだけであった。
女性が返事をしても、相手の反応に変化はない。
無言になることもなく、同じ呼びかけが数分間続いたのち、相手側から一方的に通話が切断されるという。
着信番号は通知されていなかった。
女性宅での録音
編集部は女性宅を訪れ、電話がかかってくるとされる時間帯に待機した。
午後7時を過ぎた頃、女性宅の固定電話に着信があった。
女性が受話器を取り、編集部員が受話器の受音部へレコーダーを近づける形で通話内容を録音した。
電話口から聞こえたのは、成人男性と思われる声であった。
男性の声
「もしもし?」
「もしもーし?」
「もしもしー?」
「もしもし?」
「もしもーし?」
女性は応答せず、受話器を耳元から離した状態で保持した。
男性の声は約2分間にわたって同様の呼びかけを繰り返し、その後、相手側から通話が切断された。
録音中、男性の声が女性や編集部員の物音に反応した様子はなかった。
通話終了後、編集部は女性に対し、これまで相手へ応答したことがあるかを確認した。
女性は次のように回答した。
「最初の何回かは、もしもしとか、どちら様ですかとか言ったと思う」
「何を言っても向こうはずっと同じなので、最近は出ても何も言わない」
「同じくらいの時間にかかってくるので、今は鳴っても無視することが多い」
編集部は女性に録音機器を預け、以後数日間、同様の電話があった場合には可能な限り録音するよう依頼した。
音声の反復
女性から提供された録音には、複数の人物による「もしもし」が記録されていた。
声の特徴は録音ごとに異なっていたが、同一の録音内に、抑揚、発音、息継ぎ、語尾の伸ばし方が完全に一致する箇所が複数確認された。
たとえば、ある男性の声による、
「もしもし?」
という発声が、一度の通話中に合計7回使用されていた。
それぞれの発声の前後には異なる長さの無音部分があり、別の「もしもし」と組み合わされていた。
これらの特徴から、電話口で人物がその都度話しているのではなく、あらかじめ録音された複数の音声を切り分け、順序や間隔を変えて再生している可能性が考えられた。
編集部は女性に対し、過去の通話で「もしもし」という言葉を使用した記憶があるかを改めて確認した。
女性は、
「たぶん言っていないと思う」
「電話に出るときは、はい、と名字を言うことが多い」
「向こうがもしもしと言っているので、こちらも言ったことがあるかもしれないが、覚えていない」
と回答した。
応答実験
編集部は、電話の相手が特定の発声を収録している可能性を検証するため、次回の着信時に女性から「もしもし」と応答してもらうことにした。
女性の同意を得たうえで、編集部員が同席した状態で着信を待った。
翌日、前日までとほぼ同じ時刻に電話がかかってきた。
女性は受話器を取り、次のように応答した。
女性
「もしもし?」
「聞こえますでしょうか?」
「もしもーし?」
「もしもし?」
女性が最後の「もしもし」を言い終えた直後、相手側から通話が切断された。
それまでの録音では、女性が話している最中も相手の音声が継続していた。
しかし、この通話では女性が応答を始めた直後から、電話口の「もしもし」が停止していた。
翌日以降、女性宅への電話はかかってこなくなった。
編集部が調査を終了するまでの間、新たな着信は確認されていない。
類似する相談
編集部は、総務省の迷惑電話対策相談センター、通称「でんわんセンター」に本件について問い合わせた。
匿名を条件に取材へ応じた職員によると、過去にも本件と類似する相談が数件寄せられていたという。
いずれの相談も、
* 毎回異なる人物の声が聞こえる
* 相手は「もしもし」と繰り返すだけである
* こちらの発言に反応しない
* 一定期間を過ぎると突然かかってこなくなる
という点で共通していた。
職員から過去の相談者へ編集部の取材依頼を伝えてもらったところ、うち一名から連絡があった。
取材に応じたのは、県外に居住する中年男性である。
男性は数年前、自宅の固定電話に同様の電話が繰り返しかかってきたと証言した。
男性は当時、迷惑電話の証拠として通話を録音しており、そのうち数件を現在も保管していた。
最後の通話
男性宅へ最後にかかってきたとされる電話には、次の内容が記録されていた。
電話の相手
「もしもし?」
「もしもし?」
「もしもーし?」
男性
「もしもし?」
「もしもーし?」
「聞こえてます?」
「もしもーし?」
男性が応答した直後、相手側から通話は切断されていた。
この通話以降、男性宅へ同様の電話がかかってくることはなかったという。
編集部が男性の発声と、女性宅で録音した幾つかの男性の声の録音を比較したところ、一件の「もしもし」が一致した。
発音、抑揚、呼吸音だけでなく、語尾のわずかな震えも共通していた。
一方、男性が同じ通話内で発した、
「聞こえてます?」
という部分は、女性宅で録音された音声には含まれていなかった。
男性の声から「もしもし」に該当する箇所だけが切り出され、別の電話に使用された可能性が高いと判断した。
それ以前の録音
男性が保管していた別の録音には、次のやり取りが残されていた。
電話の相手
「もしもしー?」
「もしもし?」
「あのー、もしもしー?」
男性
「あのー、おたくどちら様ですかね?」
「えーとね、いっつも同じ時間にかけてきますけど、迷惑なんです」
「あのねぇ、こっちも暇じゃないんで……」
男性が抗議している間も、電話口からは複数の人物による「もしもし」が繰り返されていた。
相手の発声は男性の発言と重なっており、会話として成立していなかった。
音響解析
編集部は、男性本人が直接話した「もしもし」と、女性宅の電話口から録音された同一の「もしもし」を比較した。
女性宅で録音された音声には、男性の原音には存在しない微弱なホワイトノイズが重なっていた。
音響機器を扱う専門家に解析を依頼したところ、次の見解が得られた。
通信回線や録音機器に由来するノイズだけでは説明しにくい。
元の音声を電話回線へ直接入力したのではなく、スピーカーや小型の再生機器で流し、その音を別の受話器で拾わせている可能性がある。
再生機器と送話口の位置が近い場合、同様のノイズが混入することがある。
すなわち、何者かが録音済みの「もしもし」を再生し、その再生機器を電話の受話器へ近づけることで、別の相手に聞かせている可能性がある。
使用されている機器や発信場所については特定できなかった。
テレビ番組の音声
後日、男性宅で収録された音声の複製を保管していた専門家から、編集部へ連絡があった。
専門家によると、録音のうち一件に含まれる「もしもし」の背後から、極めて小さなテレビ音声が聞こえたという。
該当部分を分離し、雑音を低減した音声データが編集部へ提供された。
抽出された音声は短く、不鮮明であったが、司会者と思われる人物の発言、観客の笑い声、効果音の一部が確認できた。
聞き取れた語句をもとに調査した結果、その音声は
テレビ番組『家族対抗クイズ合戦』の一部と一致した。
同番組は、1979年3月に放送を終了している。
録音から聞こえた音声が本放送時のものであるか、後年に録画または録音されたものを再生した際のものであるかは判断できなかった。
このため、本件の電話が1979年当時から継続していると断定することはできない。
一方で、少なくとも数十年前に放送を終了した番組の音声が、電話に使用された「もしもし」の背後へ混入していたことは確認された。
調査結果
本件の電話では、過去に同様の電話を受けた人物が発した「もしもし」を切り出し、別の受信者へ聞かせている可能性が高い。
電話を受けた人物が十分な回数「もしもし」と応答すると、その人物への着信は停止するものと思われる。
収録された音声が、その後どのように選別され、どの地域の誰に使用されるのかは分からない。
また、この行為を行っている人物または団体、その目的、開始時期についても確認できなかった。
音声を収集すること自体が目的である可能性も考えられるが、なぜ「もしもし」だけが必要なのかは判明していない。
何者が、どのような目的でこの電話を繰り返しているのかは、現在も分かっていない。
以上をもって、編集部では本件の調査を終了した。
-編集部 初田
コメント
1件
うわ、これめっちゃ怖い……! 毎日決まった時間に「もしもし」だけを繰り返す電話って時点でじわじわ来るのに、声が毎回違うってのがまた不気味すぎる。編集部の調査で明らかになった「過去に電話を受けた人の声を切り出して別の相手に流している」って構造がゾッとした。しかも1979年終了のクイズ番組の音声が混ざってたとか、時間の感覚が狂うわ……。応答したらピタリと止まるのも、何か目的があって収集してるのかなって考え始めると夜眠れなくなりそう。続きが気になる!
りす
259
辻󠄀美音🩷
64
OUSER

30
夏秋槌
14