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どれくらい経ったのだろう、よくわからない。加速度病の胸焼けがするのと、首筋が痛い。ハンドルを握る薬指と小指が真っ赤になっていた。恒星風が穏やかになるのを待って、郷田はアクセルペダルを徐々に入れていく。
遠ざかる炎の恒星の軌跡をスクリーンに確認する。彼は首をかしげた。移動線が、あまりに真っ直ぐだ。これでは、どこかで他の天体群と衝突しないわけにはいかない。大に小がぶつかりクレーターをつくる程度の質量差があれば別だが、そうでなければ破壊し合ってしまうことになる。宇宙倫理に反する動きだ。地球で習う物理学曰く、宇宙では物体は等速に直線運動をすることになっているが、それは屁理屈というものだ。いくら離れていたって、所詮ここもあの星と同じ三次元世界だ。純粋な直線など一つとしてない。光でさえ重力に歪む。ましてや物質の塊である天体は、質量の大きい方を中心に弧を描いて動き回るのが慣わしだ。そうしてできる太陽系のような系グループもまた、銀河の中心に対して円運動している。銀河も同様に、より質量の大きな銀河の周りを廻っている。銀河団だってそうだ。マクロ的に見れば、最終的には郷田の知るこの世の物質は、大宇宙の中心に対して弧を描いているはずだった。