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外を眺めるうち、窓の隅が奇妙に暗いことに彼は気が付いた。エネルギー分布計を見ても、質量分布計を見ても、近隣に光を遮るようなガスもなければ暗黒物質が横たわっているわけでもなかった。

スクリーン脇の縮小ボタンを突っついて見る。画面の端にあったプロミネンスの沸き立つ恒星と、もう一方の端にあったこの船が、中央で一つの点になる。余った背後には、浮世絵に描かれる雨のような、幾筋もの平行線が次々と現れた。近隣星の移動線だ。

「あの星だけじゃないのか」

郷田はボタンを押し続けた。どこまで宇宙を濃縮してみても、直線の群が弧になる気配が見えてこない。これでは、この次元を支配するルールが壊れてしまう。さらにボタンを下げ押すうち、ついには画面の端にアポロンが現れた。地球がこの中に隠れている銀河だ。

通信手段のない今、これは郷田と母なる星をかろうじてつないでいる、皮一枚の希望だった。急に目頭が熱くなる。

ラッシュの電車。駅前の喫茶店。正門の守衛。研究棟。いつまで経っても来ないエレベーター。狭苦しい研究室。新旧入り混じった実験機器。不格好な白衣を着た学生達。焼酎ホット梅入り。さきいか。まっすぐな線が走りまくる無機質な画面を見ているだけで、どうしてここにいることを忘れてしまえるのか、彼にはよくわからない。

しかし、どうやら今は思い出に浸っている場合ではなさそうだった。よくよくスクリーンを見ると、アポロンと船との距離は、以前と較べて少しも縮まった様子がない。これはおかしい。絶対におかしい。あれだけ思いきったワープ幅を繰り返し取ってきたのだ。

郷田は上半身をスクリーンに寄せた。

いやむしろ、距離は以前よりも開いているようにさえ見える。こんなはずはない。位置関係が何らかの事情で、地図に正しく表示されていないのは明らかなことだった。

宇宙の果ての向こう側

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