(どうしてこんな所に……)そう思いながら、とりあえずはご挨拶をしようとして、気づいた。
政宗医師は、泣いていた。
うつむいてむせび泣く顔を片手で覆い隠し、肩を小刻みに震わせ嗚咽をこらえていた。
そのあまりに哀しげな姿に、そっとそこを離れようとした。
──と、彼が顔を上げて、こちらを見た。
「なぜ……」
私を捉えた瞳が、潤んで揺らいでいた。
「ごめんなさい…あの……」
なんて声をかければいいのかわからないでいると、
「なぜ、あなたがいるんです……」
彼の方から、そう話しかけてきた。
「……電話をしていて、それで……」
「……どうして、よりによって君が……」
言いながら、こちらへ近づいて来ると、
「……私のこんな姿を、なぜあなたが……」
泣き腫らした目で、私をじっと見つめた。
「見るつもりでは……」
いたたまれない気持ちで、踵を返して、立ち去ろうとすると、
「待ってください」
不意に、腕を引かれた──。
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