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ここ
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3.死ぬ覚悟
命に変えてでも
「ここは…?」
気がつくと私はベットで寝ていた。
「起きたのね。」
保健室の先生が言う。どうやら私は保健室にたどり着けたみたいだ。
「保健室に入ってきた途端、倒れたからびっくりしたのよ。大丈夫?」
思ってもないことを。そんな気軽に『 大丈夫』なんて言わないで欲しい。
「稲荷ほとけさんも来てたわよ。とっても心配そうだったわ。」
ほとけさん――突然現れ私の人生を変えた人。
「そう、ですか…。」
私は立ち上がる。
「あら、もう行くの?まだ休んでた方がいいんじゃない?」
「もう大丈夫です。ありがとうございます。」
本当は早く出てって欲しいんでしょ。
「無理しないで。いつでも相談乗るわ。」
!?私ははっとする。人を簡単に信用してもいいの?でも…。信用したい。沢山話したい。
「大丈夫?」
その一言で我に返る。
「大丈夫です。お世話になりました。」
そう言い、保健室をあとにした。
教室に入ったら、しょうさんが泣きついてきた。
「うぇーん!!大丈夫だった!心配したよ!!」
泣きじゃくるしょうさんにふっと笑う。すると聞こえていたのか
「笑えてる!良かったぁ!」
と言った。私はみんなといる時、笑えてなかったのか。
「何かあったの?大丈夫?」
そう聞かれる。どうしよう。何もいい訳を考えていない。
「あー…。男の人が苦手でさ…。」
咄嗟に嘘をつく。また自分を自分じゃなくする。そんな私が嫌い。
「そっか。自分勝手なことしちゃったな…。ごめんな。次はりうちゃんと『 3人』で食べよーな!」
3人――。私も入っていることに嬉しさを感じた。
「また笑ってる!いふちゃん笑うの好きやな!」
笑うのが好き――昔はね。でも今はあまり好きじゃない。どうしたら私は私でいられるのかな…?
チャイムがなる。授業が終わり、部活に行く準備をする。って言っても、写真部で、写真を撮って、人と関わらないようにする。部活に行こうとしたら、
「いふちゃん、部活に行くの?」
しょうさんが言う。
「う、うん。」
私はぎこちなく返事をした。
「そっか…」
悲しそうな表情をする。なんだろうと思う。でも、私には関係ない。と思い、立ち去ろうとしても足が動かない。すると私はこんなことを言っていた。
「どうしたの?私に何か用があった?」
自分でもびっくりした。まさか、こんなにスラスラ言うなんて…。しょうさんは驚いた表情をしていたが、すぐに笑顔に戻ってこういう。
「いや、どこか遊び行きたかったなーってね。でも、部活ならいいよ!また今度!」
そう言って、しょうさんはばいばーい!といい、去っていった。唖然とする。どこかおかしく、面白く、笑ってしまう。切り替えて部活に行く。早足で教室をあとにした。
部活が終わり伸びをして、いつもの公園へ向かう。家に帰るのを遅らせるため。少しでも。
公園の前まで来ると、見覚えのある顔。こちらに気づいたのか
「おーい!」
という。正直立ち去りたい。でも、お礼も何も彼にしていない。だから――
「ほとけさん、あのこれ…」
といい、コートとお菓子を差し出す。
「えぇ!そんな!お菓子まで…。ありがとう!!!」
そう言いニコニコしながら受け取る。私はわかってしまった。彼が作り笑いしていることに。
「またここに来るってことは何かあった?」
また彼に迷惑をかけるの?それだけは避けなきゃ。
「こ、コートを、返さなきゃって」
「そっか」
ニコっと笑う彼につられて口角が上がる。「あ!」と彼は言う。どうしたのかと思うと、
「僕、まだ名前教えてもらってない。」
ムスッとする。そっか…。教えてなかった。前の私は絶対教えなかった。でも…今は何かが動かされた。私の何かが変わろうとしているのに気がついた。
「乾 いふ…。高校1年生。」
「そっか!僕高校2年生!」
ニコニコする彼に調子が狂う。すると彼が
「いふちゃんって呼ぼうかなー!」
という。私は頷く。
「僕のことなんて呼んでくれるのー? 」
そういう彼。私はびっくりした。
「ほと…けさん?」
そう疑問に言うと、彼は笑って
「なんで疑問形なの(笑)?せっかくだし、さん付けなし!」
と言う。私も釣られて笑ってしまう。
「じゃ…じゃぁ、ほとけ!」
大きな声で言う。私ははっとする。大きな声を出し、恥ずかしがっている私に対し、彼はびっくりする。顔を赤くする。すると彼は、笑いながらこういう。
「あはは!!面白すぎ!顔がりんごちゃんみたい(笑)!」
めちゃくちゃ笑う彼に私も釣られる。恥ずかしいような、嬉しいような気持ち。
あぁ。こんな時間がずっと続くといいな。
ほとけに家まで送ってもらった。いいよっと言ったら、『 僕が送りたいの』と駄々をこねるものなのでふふっと笑ってしまう。自分で言うのもあれだけど、ほとけといると自然に笑顔が増える。まだ親が帰ってきてなくてよかった。っとほっとするのもつかの間、ガチャと音を立て、『 ただいま〜』と聞こえた。もう帰ってきたのか。と思う。体が震える。そんな時、私の部屋のドアが開く音がした。反射的に顔を下げ、俯くように小さく「なんですか?」という。
「顔を上げて!」
そういう声が聞こえ、恐る恐る顔を上げると、お兄ちゃんだった。
「今日、俺ら見た時、早足で去っていったよね?しかも、屋上の時だって、呼吸荒かったし…。俺、なにかしちゃったかな?」
心配そうな目で見つめる。お兄ちゃんに恨みは無い。でも、お兄ちゃんだけ親に甘やかされ、育てられて羨ましがっている自分がいる。そして、それを憎む。それなのに、そんなことを思ってるのに、私を心配してくれるお兄ちゃんは優しい。私が惨めになる。
「なんでもないよ。」
ニコっと笑うと、お兄ちゃんは、
「うそ。作り笑いしている。何年一緒だと思うの?」
声のトーンが少し下がる。『 何年一緒』って言われても何も響かない。だって私は比べられて生きてきた。お兄ちゃんは何も分かっていない。
「なんでもないからッッ!」
声を荒らげて言う。お兄ちゃんはビクっとした。私ははっとする。
「ご、ごめん」
すぐに謝る。すると心配そうに、
「謝るの禁止。まろのなんでもないはなんかあるときだから。」
ニコッとする。はぁ。この笑顔がウザイけど好き。ドタドタと階段を上がる音が聞こえる。お母さんだ。最悪。私の部屋に来る。
「何事ッッ!?」
声のトーンでわかる。怒っている。
「母さん、なんでもないよ。」
お兄ちゃんが言う。
「ないこには聞いてないのよ。」
ニコっと言うお母さん。大丈夫よ。という。その後、私の方に目を向け、はんにゃみたいな顔で私に尋ねる。
「声を荒らげてどうしたの!?うるさいじゃない!?」
怒る声。私は聞くふりをする。この説教に意味はない。真面目に聞いてたって、比べられるだけ。
「聞いてるの!?」
またお母さんが大きな声で言う。お兄ちゃんも私もびっくりする。私は顔をあげると、顔を赤く、すごく怒っているお母さんの顔。私は耐えきれなかった。もう、この家に居場所がないとわかった時、体は動いていた。
「あぁ!ちょっと!!」
お母さんは私の動く体を止める。でも、私はいち早く離れたかった。だから、お母さんの手を振りほどいて階段を降りる。お兄ちゃんも、お母さんも、追いかけてくる。やめて。着いてこないで。これ以上、自由を奪わないで。楽にさせて――。…。『 楽』その言葉が頭によぎる。そっか。私はもう、死にたいと思っているみたい。この世には居場所がないとわかったみたい。そうすると体は外へ、外へ出ていく。そんな時、追いかけてきたお兄ちゃんと、お母さんが止める。
「どこ行くの?」
や、
「何するつもり?」
と、聞いてくる。私は嘘をつく。
「少し散歩に行く。」
すると、お母さんは「そう。」と答えお兄ちゃんの手を引く。すると、お兄ちゃんはお母さんの手を振りほどき、こういう。
「本当に散歩?今にもいふが…。消えちゃいそうな気がする…。」
それを聞いた瞬間、どうしてバレたの?と疑問に思う。でも、私は楽になりたい。だから、また嘘をついて自分じゃなくする。
「本当に散歩」
「絶対帰ってきてね」
小指を差し出すお兄ちゃん。私はそれを無視して、去っていく。すると無視したことに怒ったのか、お母さんが私の頬を叩く。
「無視しないの!!」
頬に熱が伝わる。ジンジンと。お母さんは最後までお兄ちゃんの味方なんだね。と思う。だから、もういいの。私はその場から走った。息が切れても、足が疲れても、とにかく遠くへ。追いかけてくる2人。「まって!」と声が聞こえても振り返らない。もう決めたことだから。
私は、崖の上まで来ていた。この先に行けば死ねる。そう飛び降りようとしたら、足がすくむ。頭に彼――ほとけの顔が浮かぶ。何故?私はもう消えたいんじゃないの?一息つく。ふぅーっと。何かを覚悟して、私は飛び降りた。
ザパーン!っと音を立て、海の中へ沈む。さようなら。みんな。お兄ちゃん。ほとけ。
コメント
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うわ…第3話、一気に来ましたね。保健室の先生やしょうさんとのやりとりで、少しずつ「普通の関係」を取り戻しかけてただけに、家に帰ってからの母親との緊張感、あの叩くシーン、そして崖での決断…読んでいて胸が締め付けられました。 特に「ほとけの顔が浮かぶ」一瞬で足がすくむところ、あそこがすごく人間らしくて。完全に諦めきれない何かがまだ彼女の中にあるんだろうなって思いました。続き、絶対に読みたいです。