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#主人公最強
伊織
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「守護……契約?」
「ああ」
私はこめかみを押さえた。
「つまり何? あなた、私の知らないところでルピに何かしたってこと?」
「……必要だった」
「『必要だった』で済まされる話じゃないでしょうがーっ!!」
「まったくもって、お姉さまのおっしゃる通りです!」
フローラが即座に同意する。
「この人、本当にありえませんよね!」
「お前は口を挟むな」
「はいはい」
レオンが二人を制した。
「バイオレッタ。《守護契約》が何かは知ってる?」
「全然」
(ゲームにも、そんな設定なかったし……)
「簡単に言えば、魔獣を媒介にして危険を知らせる契約だよ。守る相手に重大な危険が迫ると契約紋が反応する。発動中なら、魔獣の魔力を辿って大まかな方角と距離も分かる」
「じゃあ……」
私はアレクを見る。
「私が攫われた時、それが発動して、ルピの魔力を辿って助けに来たってこと?」
「そうだ」
「なるほど……」
そこで、ふと気になった。
「あなたにも、その契約紋があるの?」
「…………」
アレクは答える代わりに、左手の手袋を外した。
「え……」
手首の内側。そこには――。金色の蛇が、自らの尾をくわえて円を描く紋様が刻まれていた。
(これ……)
(どこかで見たような……)
「あっ!」
私は慌てて手首のブレスレットへ触れた。
「ルピ!」
「きゅいっ!」
光とともに現れたルピを抱き上げる。
「ちょっと見せてね」
「きゅ?」
後ろ脚の白い毛をかき分ける。
「やっぱり……!」
そこには、アレクとまったく同じ金色の紋様。
「これ、あの時の……!」
「《守護契約》の契約紋だったんですね」
フローラがむっとした顔で答える。
「金のウロボロスです」
「私も実物を見るのは初めてだったので、あの時は気づけませんでした」
「…………」
私は二つの紋様を見比べた。
「でも、ちょっと待って」
「何?」
「危険を知らせて、居場所まである程度分かるんでしょ?」
私はレオンを見る。
「便利な魔法じゃない。なんで禁忌なの?」
「そこなんだよね」
レオンの表情が曇った。
「《守護契約》を結ぶ時には、契約者と媒介になる魔獣――両方が、生命力の一部を代償として差し出す」
「…………生命力?」
私は反射的にルピを抱き締めた。
「じゃあ、ルピも!?」
「いや」
アレクが淡々と答えた。
「ルピの分も、俺が払った」
「…………は?」
馬車の中が、しんと静まり返った。
「……待って」
レオンの顔色が変わる。
「君、まさか……術式を書き換えたの?」
「ああ」
「「ルピが払うはずだった代償まで、全部自分に集中させたっていうの!?」
「ああ」
「そんなの……」
レオンが絶句する。
「契約した瞬間に意識を失ってもおかしくない。術式が少しでも狂ってたら――命を落としてた可能性だってある」
私は、ゆっくりとアレクを見上げた。
「あなた……」
「何だ」
「何だ、じゃないわよ!!」
「…………」
「なんでそんな無茶したのよ!?」
「ルピを契約に巻き込んだのは、俺の独断だ」
アレクは平然と言い放った。
「なら、代償まで負わせる理由はない」
「だからって、自分が全部払えばいいって話じゃないでしょ!?」
「ルピに代償は払わせていない」
「そこじゃない!」
「お姉さまのおっしゃる通りです!」
フローラも勢いよく頷いた。
「そもそも勝手にルピを巻き込んだ時点でアウトですよ!」
「じゃあ……」
私は腕の中のルピを見る。
「ルピはもう大丈夫なの?」
「うーん……よっぽどのことがない限りはね。ただ、契約後も二人の魔力は繋がったままなんだ」
「どういうこと?」
「例えば、アレクが魔力を使い果たせば、ルピまで魔力不足になる可能性がある」
私はルピをぎゅっと抱き締めた。
「きゅ?」
何も知らないルピが、きょとんと首を傾げる。そして私は――アレクを睨んだ。
「あなた」
「何だ」
「結局ルピまで危険に巻き込んでるじゃないのよ!!」
「……それについては、否定できない」
「はあぁぁ……!」
この契約があったから、アレクは私の危険に気づいた。みんなが助けに来てくれた。しかも、ルピに払わせるはずだった代償まで、自分一人で背負っていたなんて。
(そんなの……)
(ずるいに決まってるじゃない)
「……助けてくれたことには、感謝してる」
「ありがとう、アレク」
ほんの一瞬。アレクの表情が緩んだ。
「当然のことをしただけだ」
「でもね!」
私は人差し指を、ぴしっと彼の鼻先へ突きつけた。
「次からは、絶対に事前に相談しなさい!」
「私を守るためなら、何をしてもいいわけじゃないのよ!?」
「……ああ」
しばらく沈黙したあと、アレクが頷いた。
「……分かった」
その時。コンコン。
「ん?」
馬車の外から、扉を叩く音がした。馬車がゆっくり停車する。扉が開き――。
「クンッ!」
「ソル?」
淡い光をまとったソルが、車内へ飛び込んできた。レオンの前へ降り立ち、くわえていた封書を差し出す。
「王家から……?」
レオンが封を切った。
「…………」
書面を読み進めるうちにその表情が凍った。
「どうしたの?」
「…………嘘でしょ」
信じられないものを見るように、書面を見つめる。
「ベラドンナたちが――裁判を待たずに、釈放された」