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花月夜れん
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世羅 鈴🎨🎤
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ひより
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#主人公最強
伊織
41
「……上層部の判断だって」
レオンの手の中で、手紙がぐしゃりと歪んだ。
「バイオレッタ。ごめん」
唇を噛み締め、悔しそうに目を伏せる。
「レオンが謝ることじゃないわ」
(上層部……)
(どうせ、王妃が裏で糸を引いたんでしょうね)
ベラドンナの生家――マレフィカ侯爵家。現王妃も同家の出身で、ベラドンナとは従姉妹。王妃派の筆頭貴族であり、第二王子であるレオンとは対立する立場にある。
偽造された婚姻書類。馬車から押収された薬。共犯者たちの証言。証拠なんて、山ほど揃っている。それでも――。権力があれば、全部なかったことにできるらしい。
「犯罪者なのに……!」
フローラが拳を震わせた。
「捕まらないなんて、そんなのおかしいです!」
「理由はこれだって」
レオンが書面へ視線を落とした。
「『ベラドンナ・ウィステリアは、病臥の当主に代わり、後継者たるナルシスを養育・監督する重大な職務がある。よって、身柄拘束を直ちに解除する』……だってさ」
「はあ!?」
思わず声が出た。ナルシス。ベラドンナが前夫との間にもうけた、私より三歳年下の義弟だ。表向きは愛想がいいが、家の中では使用人に手を上げ、私にも執拗な嫌がらせを繰り返す最低な男。
父が病に伏してからというもの。ウィステリア伯爵家は、あの親子に好き放題されてきた。
過酷な重税。手入れを放棄され、荒れていく農地。夜逃げ同然に領地を去っていく領民たち。それでも――。
(今の私には、止められない)
この国では、原則として男子に継承権がある。父が倒れ、後継者としてナルシスがいる以上――。その母親であるベラドンナは、後見人として領地に居座り続けられる。
「バイオレッタ」
レオンが真剣な眼差しを向けた。
「このまま実家へ戻るのは危険だよ」
「それは……私も百も承知よ」
「だったら、夏休みは僕の王都の別邸へおいで」
すっと手を差し出す。
「警備も万全だし、退屈なら夜は毎日楽しい宴でも――」
ぱしっ。その手を、横からアレクが遮った。
「……出過ぎた真似をするな、レオン」
「ちょっと。話の腰を折らないでくれる?」
「バイオレッタは俺の婚約者だ。ベルシュタイン領で保護する」
アレクが当然のように言い切った。
「待ってください!」
今度はフローラが割って入った。
「お姉さまは、まだ体調が万全じゃないんですよ!?」
私の腕へ、ぎゅうううっとしがみついてくる。
「エミリア子爵家へいらっしゃるべきです! 私が朝から晩まで、二十四時間つきっきりで看病しますっ!」
「二十四時間……?」
「はいっ♡」
(それ、看病というより、もはや監禁では……?)
バチバチバチバチッッッ!!
三人の視線がぶつかる。
「三人とも、落ち着いて! 心配してくれるのは分かるけど!」
(逃げてるだけじゃ、何も変わらない)
このまま誰かに守られて夏休みを過ごしても──いずれ、また同じことが起きるだけだ。
その時。頭の奥に、ひとつの記憶が浮かんだ。原作ゲームで見た、ウィステリア領周辺の地図。
「……思い出したわ」
「何を?」
レオンが首を傾げる。
「亡くなった母の領地が、ウィステリアのすぐ隣にあるはずよ」
三人の表情が変わった。
「お母さまの……?」
「ええ」
母は隣国・ロヴァルシア皇国出身の外交官だった。かつて両国の通商条約締結に尽力し、その功績で国王から小さな領地を与えられている。しかも――。
「そこには、母の国の法律が一部そのまま適用される」
レオンが、はっと目を見張った。
「……外国法が適用される特区ってこと?」
「そうよ!」
つまり。この国では女性に継承権がなくても――。
「その土地だけは、娘である私が継げるってこと!」
母は、その領地を管理するためにこの地を訪れた。そして隣接するウィステリアの若き領主だった父と出会い――恋に落ちた。
「決めたわ。夏休みは、母の領地で過ごす」
私は顔を上げた。
「まずは、領地を立て直す。そこを拠点に、力を蓄える」
そして、口角を上げた。
「絶対にベラドンナたちの好きにはさせない。奪われたものを――全部、取り返してやるわ!」
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