番外編
《 エースが料理を作るようになるまで》
何故天気の良い朝一番に……と面倒臭い授業から目を逸らしたくなるが、適当に行うと痛い目を見るのが分かってるので、何とか集中させる。
そもそも理系は嫌いじゃないし、結構得意。
赤のメモ帳に書いた材料や、その他の確認をして教科書と見比べながら、横目で監督生の様子を伺う。
エース「なぁ、監督生最近フラフラしてるし……大丈夫か?……夏バテ?」
監『ん?んー……まぁ、そんなとこ。』
まぁ、大丈夫かと思考を止め、赤の教科書に書いてある材料を取ってくると、その教科書に載っている手順で薬品と大釜の準備をする。
昨日の前回の授業では、クルーウェル先生ではない魔法解析学の教師が授業を行い、今回作ろうとしている魔法薬の解析の解説授業を行った。
その魔法薬の効果に近しいと解析‐発見された、ユニーク魔法や攻撃魔法についての授業を受けた後に、今回作って再度自分で解析することで、より知識を頭に入れるというような、ほぼ教師共同授業になった。
エース「魔法解析学は好きだし、こういう授業は全然アリだよなぁ……やっぱ監督生理系は苦手? 」
監『うん、結構…いや、かなり苦手。……そういえばエース、ブルームバースデーの時のインタビューでそんな感じのこと言ってたよな…実践がどうこう……』
エース「ん?……あぁ~、理論ばっかより実践でやる方が身に付くってヤツ?」
監『そうそう。……理系って公式があんまり得意じゃないんだよね。……てか先生達あれ聞いてこういう混ざった授業始めたんじゃないか?』
エース「そ~か?……他の奴だって文句言ってたし、俺がちょっと言ったからって変えたりしねぇだろ」
監『そういうもんかね?……まぁ、さっさとやっちゃおうぜ。』
デュース「お前ら話してないで始めるぞ!……俺は優等生だからサボったりしないが、きちんと授業受けないと点数貰えないぞ?」
エース「うげぇ、イイコちゃんぶりやがって……」
デュース「っ、んだと!?」
監『はいはい、待たせてごめんなグリム。』
グリム「ホントなんだゾ……子分は真面目に話すと長いからな。」
今回作る魔法薬は、【雫のガラス薬】という名前のついた物で、花や葉等の自然を扱った標本を作る時や、空気等の混合物や水等の常に変化する物質等も香水のように吹きかけると、ガラスのように固まって、飾ることが出来る。
特に、水や空気は雫が凍ったみたいで凄く綺麗だから、かなりお気に入り。
昨日の放課後に、学園長が急に始めた特別授業(補習)での色変え魔法の指導では、この薬品を使って出来た、固められた空気の色を変えて、物体を自由に変容出来る魔法薬【溶けた拘束薬】を使って、作品作り対決をした。
因みに【溶けた拘束薬】は元々普通の拘束薬で、形を変容させるのは同じなんだけど、その後すぐに固まるから、相手の体を縛った後に固まれば簡単に捕まえることが出来る。
ロープに付けると言うことの聞く投げ縄になって便利だし、簡単に作れるので前期の授業の初めの頃に作った。
つまり、それの応用ってヤツだな。作った後に一度冷まして、材料を少し加えた後もう一度大釜に入れて高温で混ぜると完成する。
エース「もし夏バテならさ……いや、監督生……ちゃんとご飯食べてる?」
監『え?……姉ちゃんと風呂入ってるかって?……いやぁ、そんなお年頃かぁ』
エース「いや、ちげぇし!……んで、どうなの?」
監『ん~…食べてると思うよ?でもめんどくて薬だけ飲む時もあるかな。あの腹いっぱいになるヤツ』
エース「お前なぁ、あれって遭難した時とかに非常食として食べるヤツだろ~?」
監『だって最近安くなってるし、とりあえずまだ残ってるしなぁ』
エース「そういえばさ、監督生料理作れんの?」
監『……。まぁまぁまぁまぁ……てか、デュース早く泉の雫入れて!』
デュース「ぇ、あ、おう!」
エース「あぁ~……五滴ね?」
デュース「あ、そうだった!……よし!」
グリム「俺様、まぜまぜするの飽きたんだゾ」
監『マジ?……あぁ~じゃ、エース頼む』
エース「ヘイヘイ、やりゃ~良いんでしょ?」
監『ありがとう……心の友、!』
エース「俺、監督生のそのテンション追い付けねぇわ~」
そんなこんなで授業が終わり、完成品の魔法薬はクル先に預けてストックになるか、麓の街で売って学校の資金になるらしい。 (因みに欲しいと言えば自分で作った分は貰える。)
エース「朝から錬金術で頭使ったし、何か疲れたぁ~」
監『でも朝が一番脳が活発になるらしいし、集中力と注意が必要な錬金術が朝一番で良かったんじゃないか?』
エース「ん~……それもそうか。」
デュース「え、そうなのか!?……朝に勉強か、早起きするのは得意だ!」
エース「いっつも眠そうな顔してるし、案外昔は遅起きだったんじゃねぇの?」
デュース「いや、そんなことは……」
監『はいはい、ほら次は動物言語学でしょ?……てことは教室か、!ここから結構遠いし、早く行くよ』
デュース「そうだな!」
エース「監督生も箒で飛べたら皆で早く行けるのにな~……」
監『何?エース……皆で行きたいから我慢してくれてんの?、ありがと』
エース「っは!?なわけねぇだろ!」
動物言語学は言語も勿論重要だけど、どちらかと言うと行動や習性、その動物が知ってるであろう知識等を知ることが一番大事で、基本的に言語に関しては二の次になることが多い。
そもそも、動物言語は動物とコミュニケーションを取るための一つの手段なだけで、動物との会話や関わりには、普段の行いや心理関係等が大きく関わっているらしい。
中でも、鳥は賢くて人間とは少し違った見方をしていることが多く、犬や猫のように共通言語も無い為、少し難易度が高いと言える。
確かに鳥は空を飛ぶから普通の人とは見ている景色が違うけど……
デュース「あれ、俺達魔法を使って箒で空を飛べるし、あんまり関係無いんじゃないか?」
エース「分かる、!……確かに先生の言ってることは分からんでも無いけどさ……」
監『んー……でも鳥同士のコミュニケーションで獲得した情報を貰えるかって言ったらそうじゃないし、』
鳥には鳥の天敵がいるから、常に警戒しながら飛んでて……確かに俺達は目があるから分かるけど、あんまり気にしないと思うんだよね?……そしたら飛んでる最中に急に攻撃されたりだとか、そういうのを警戒してないから見てる景色というよりは……
監『生きてる世界観が違うと思うんだよね』
エース「あぁ~……なるほどね」
デュース「でも…それは必要なのか?コミュニケーションを取るなら地上でも出来るぞ?」
監『例えば、箒から落ちて何処かに行ってしまった……探さないといけないけど、見つからない……』
こう言う時に質問したり……鳥は魔法が無くても飛べるからね。あとは助けを呼んで欲しい時に伝えることが出来るでしょ?……そして鳥がそれを教えてくれてる相手も言語を理解してないといけない……
監『……だから授業で習うんじゃない?』
エース「な~るほどねぇ……確かにそういう場合なら必要かも」
監『だろ?……あ、先生』
先生「ゴホンッ……お喋りは控えるように。」
監『すみません……』
先生「ただ……そのような教え方はかなり良いと思う。参考にさせて貰うぞ?」
監『はい、大丈夫です。』
エース「あっぶねぇ~……てかデュース寝かけてるしw…肝据わり過ぎだろw」ヒソヒソ
監『早起きしたって言ってたし、先生に見つからないうちに目が覚めるといいけどねぇ~……』
授業が終わり、デュースは普通に見つかって反省文と追加のプリントを貰っていた。
三限目は占星術の授業で、監督生はこの世界の構造を知れる、と食い入るように授業を受けている。
監『占星術はあっちの世界でもあるんだよね……非科学的だけど占い好きな女子がよく話してた』
エース「へぇ、魔法が無いとこだから信じないし、そもそも考えないと思ってたけど……意外とそういうの信じるんだな~」
エース「そっちの世界のこと、ちょっと気になって来てるわw」
監『いつか元の世界と通じる魔法の鏡とか作れたら良いね。……まぁ、多分出来ないだろうけど。』
エース「若干拗ねてんじゃん…w」
監『……なぁ、エース……俺と一緒に来ない?』
エース「………何それ、俺がいないと寂しいの?」
監『うん。』
エース「いや、うんって……」
因みに、俺の誕生日は9月23日の天秤座で、バランス感覚が良く、器用で公平な星座。情に流されない性格なので誰にでも先入観を持たずに相手を観察出来る。
ただし、優柔不断な一面や極度の孤独には弱い等の特徴を持つ。
相性が良い星座は双子座や水瓶座で、監督生は2月8日の水瓶座で、デュースは6月3日の双子座、それを知った時はマジで腹抱えて笑った。
エース「……せんせー!監督生の星座について教えて下さ~い」
監『えぇ!?……先生……良いですか、?』
先生「自分で調べても面白いけど、色んな人の意見や解釈を聞くのも面白いよね……」
水瓶座の人は感情をあまり表に出さない為、クールな人だとか近づきにくい人だと言われてしまうけど、実際はフレンドリーな性格で自分とは違う意見もなるほど、と聞き入れて自分の物にしてしまう不思議な力を持っているので、自然と多才になる傾向がある。
ゼロから考えることや情報を扱うこと、物事を多角的に捉えることが得意で、長いだけの会議や女子トーク……束縛されるのが苦手。
困っている人を放っておけない、お人好しな人でもありますが、結論の無いダラダラとした会話等が特に嫌いだったり、浮気だと思わずに遊びで関係を持つような変わった一面もある……
先生「ただし、それはあくまでも遊びで、浮気だとは全く思っていない。そんな監督生くんはね、恋人は友達の延長のような感覚でいられる人を選ぶと良いよ。」
監『あぁ~……確かに長続きしそうですね』
エース「へぇ、監督生って意外と無自覚の浮気性なんだぁ」
監『ははっ、まぁでも……エースとなら上手くいきそう』
エース「分かる……でも俺男だからね?」
監『へーい、分かってる』
占星術は自分で選択できる科目なので、人数が少ない。監督生と俺は今回選んだが、デュースは違うものを選んでいたらしく、不在だった。
ただ、選択必修科目だから一定の範囲は勉強しないといけないし、基本少ないがテストがある。
エース「午前授業、残すは飛行術だけだな……」
監『あれ俺、暇なんだよなぁ……』
デュース「オーイ!監督生、エース!」
監「おかえり~……てか今から運動場だけど走って来たん?」
デュース「大丈夫だ!陸上部の体力を見せてやる!」
エース「いや、いい。」
監『てかグリムどこ行った?……まぁ、いいか。』
エース「え~……監督不届きなんじゃないですかぁ?監督くん♡」
監『え、いいね(?)』
エース「は?……何が?」
[監督生side]
運動場に着くと、とりあえず校庭を三周しないといけないので、バレない程度にゆったり走る。
バルガス先生による軽いストレッチ体操をしてから、飛行の心得や速さと正確さを測る授業が始まった。
監『これに関しては何度もする必要無いと思うんだよね。……俺が暇だからか、毎回飛行訓練だろ?』
エース「まぁね。でも箒で飛ぶって自分の命掛かってるみたいなもんだし、意外とムズいんだぜ?」
監『ふーん……へぇ。』
エース「って、おい!聞いてねぇじゃんw……てか、グリムは?乗せて貰えば良いんじゃねぇの?」
監『グリムはあそこ。普通に不安定だし、乗りたくない』
エース「お前高いとこ苦手?」
監『うん。高所恐怖症だからね。ちな、海洋恐怖症も患っとります。』
エース「………………監督生、ごめん、!」
監『うん。許す』
筋トレは普通に苦手分野なので、筋肉弱々女子でも出来る簡単なトレーニングメニューをこなし、木陰で先生から貰ったノートに今日の授業内容を日記形式で書いたら、後はひたすら首が疲れない程度に空を見上げてボーッとする。
最近はめっきり食事量が減って、薬やゼリー等でカロリーを補う生活を続けていたからか、目眩や立ち眩み……体力も無くなって、怠さが増したような気がする。
監『料理か……』
一度作ったことがあるが、レシピに書いてある通りフライパンに油を注いだら何か燃えて……オンボロ寮はほとんど木で出来てるから、キッチン全体が燃えて急いで学園長に知らせたっけ。
……まぁ、その後めちゃくちゃ怒られて、しばらくは料理禁止になったから、その頃から薬やゼリーに頼るようになったなぁ……
あ、ゼリーって言うのはこっちの世界の十秒で飲めるヤツ。
監『そろそろカロリーメイト系にするか…』
【エースside】
授業が終わってようやく昼飯が食えると監督生に駆け寄り、フラフラしてる監督生にびっくりしながらも支えて食堂に行く。
今日のメニューはBランチのサーモンのクリームシチューで、添えてあるバケットと合わせて食べる。
エース「もぐもぐ……んま」
監『いただきま~す』
監督生は……
エース「何それ?」
監『ゼリー。』
エース「ゼリー?……え、ゼリー?」
監『うん、ゼリー』
デュース「何ゼリーで会話してるんだ?新しい言語か?」
監『いや、……今日のお昼がこれって話』
デュース「……。監督生、食事を見直した方が良いぞ!……多分これは……ダメだ。」
監『えぇ~……でも俺が料理すると燃えるんだよなぁ』
エース「いや、どういうことだよ!!……んー、トレイ先輩に言ったら何とかなんねぇかな?」
トレイ「ん?俺がどうかしたか?」
監『あ、トレイ先輩、こんにちは』
トレイ「監督生……こんにちは。昼飯それだけか?」
監『そうなんですよ、この前かくかくしかじかで……』
トレイ「なるほどなぁ、よし、ならエース!……お前が作ってやれよ。勿論俺が指導してやる」
エース「……はぁ!?何で俺?」
トレイ「エースは何かと器用だし、オンボロ寮に泊まることが多いだろ?……毎回俺が作っても良いが、寮が違うと毎日作って持っていくには些か時間が足りないとおもってな。」
エース「ん~~”!……確かにデュースは不器用で出来そうにないしなぁ」
監『エース、頼んだ!俺の命が掛かってるんだ。』
エース「はぁぁぁ~~~。マジで感謝して奢れよ?」
監『分かってるって。』
エース「どーだか」
何か色々あってとりあえず解散して食べ進めた。
この後に、エースがトレイに習った料理を、オンボロ寮で振る舞う的な話。
※お知らせ?
ほとんど料理に触れてませんでしたね……
今回のお話はトレエーを描く時に書けたら良いなぁと思っています。
とりあえず、リドル~マレウス(オルト君は書くか分からない)まで書いてみて、需要がありそうだったら先生編も描こうと思います。
因みに全部エース受けです。
上手く出来るか分からないし、もしかしたら忘れたり、中断する可能性もありますが、ご理解の程よろしくお願いします。
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