テラーノベル
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宿の消灯時間を過ぎてから、もうすぐ一時間が経とうとしている。生徒たちが静まり返った旅館の畳の廊下を、司は懐中電灯を片手に歩いていた。
真面目な彼は、スリッパの音さえ立てないように細心の注意を払っている。
🌟「ふぅ……。よし!今のところ、どの部屋も静かだな。これなら見回りは早く終わりそうだ」
ホッと胸をなでおろしたその時、後ろから気配もなく、長い影が伸びてきた。
🎈「おやおや、司くん。こんなところで奇遇だね!」
🌟「ひゃい!?!?!?!?!? ……っ、る、類!! 驚かせるな! 声が大きい!」
ボサボサの髪の毛を少しだけ整えた。それでも普段通り崩れているが!
私服姿の類が、くすくすと笑いながら立っていた。
今回の修学旅行、理科の類と国語の司は、運悪く同じ班の引率担当になっていた。
🌟「はぁ……まったく!……心臓が止まるかと思ったぞ。お前も見回りか? 自分の担当区域はどうしたんだ?」
🎈「ふふっ…ボクの担当エリアはもう完璧さ。それよりも、夜の旅館で一人きりで歩く司くんが心配でね。折角だから、お供させてもらおうと思って」
🌟「心配無用だ! オレは教師だぞ、一人で見回りくらい……んぐっ!?」
類の長い指が、優しく司の唇を塞いだ。
🎈「しー……。さっき自分で『声が大きいぞ!』って言ったばかりじゃないか。こんなんじゃ生徒たちが起きちゃうよ?」
🌟「う、うう…………お前が急に現れるからだろう!」
真っ赤になって抗議する司の顔を、類は宝物を見るように見つめる。
旅館の薄暗い常夜灯に照らされた類の瞳が、妖しく、そして優しく光った。
🎈「ねぇ、司くん。ちょっとこっちに付き合ってよ。」
🌟「おい、どこへ行くんだ! 見回りは……」
類に手を引かれ、連れて行かれたのは、今日の夕食会場の片隅。
障子を閉め切った空間は、完全に二人きりだった。
🌟「な、何なんだ急に……」
🎈「昼間は生徒たちの目がたくさんあって、全然司くんと話せなかったからね。……少し、寂しかったんだ。」
いつもはマイペースで飄々としている類が、少しだけ声音を落として、寂しげな表情を見せる。
そのギャップに、司の心臓がトクン、と大きく跳ねた。
🌟「さ、寂しかったって……。仕事中だぞ? 仕方ないだろう。」
🎈「分かっているよ。でも、他のクラスの生徒に囲まれて楽しそうに笑う司くんを見ていたら、なんだか『実験』したくなっちゃって」
類が一歩、歩み寄る。司の背中が、すっと襖に当たった。逃げ場がなくなる。
🌟「じ、実験って……ここは学校じゃないんだぞ! 爆発するようなものは……」
🎈「爆発なんてさせないさ。……ボクがしたいのは、こういう実験だよ」
類の大きな手が、司の頬に添えられる。親指で、司の熱い唇をゆっくりとなぞった。昼間の理科準備室での記憶が、司の脳裏にブワッと蘇る。
🌟「ん……っ、類……だめ、だ……また誰か来てしまったらどうするつもりだ!……」
🎈「大丈夫。冬弥くんは今頃、自分の部屋で東雲くんに数学の難問について教えている頃だから。たぶん誰も来ないよ」
🌟「は!そっ…そういう問題じゃ……!んぅ……///」
重なる唇。驚いて声を漏らした司の隙をつくように、類は深く、深く、吸い込むように口づけを交わした。
学校の準備室よりも狭く、静かな空間。聞こえるのは、衣類が擦れる音と、二人の甘い吐息だけ。
🎈「ふふ、やっぱり司くんの唇は、いつ触れても心地いいや。……ほら、息して?」
🌟「はぁっ、はぁ……っ! お前、本当に……っ、いい加減にしろ……///」
涙目で類を睨みつける司だが、その顔は完全に真っ赤で、拒絶しきれていない。
類は満足そうに微笑むと、司の耳元に顔を近づけ、熱い息を吹きかけながら囁いた。
🎈「修学旅行はまだ始まったばかり。……明日の夜も、ここで見回りの約束、してくれるよね? 司先生。
」
そう言って微笑んだ。
🌟「っ~~~~~!!」
真面目な国語教師の夜は、まだまだ終わりそうにない。
コメント
1件
あおいです🌷読み終わりました〜。夜の旅館のしっとりした空気感がすごく良くて、特に類が「少し寂しかったんだ」って声を落とすところに胸がきゅんとしました…! 昼間は生徒の前でちゃんと教師してる司とのギャップがたまらないです。それでいて「実験」なんて言いながら唇を塞いじゃう類の妖しさ、二人きりの障子の空間がまた甘くて。明日の夜も約束しちゃう展開、続きが気になりますね😊