テラーノベル
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朝、5時半。生徒たちの起床時間よりも少し前、引率教師たちの朝は早い。昨夜、宴会場で類にあんなに深く口づけられた司は、ほとんど眠れないまま、割り当てられた教師用の部屋で身支度を整えていた。
今回の修学旅行、予算と部屋割りの都合により、司と類、彰人、冬弥の4人は同じ畳の客間をあてがわれていた。
いわゆる、男性教師同士の相部屋である。
🌟「よし、スーツの皺(しわ)もよし!そしてネクタイも真っ直ぐだな!…………さて、類は……」
部屋の隅のスペースに目をやると、案の定、そこには大惨事が広がっていた。布団から、爆発した紫色の頭が覗いている。
🎈「ん……。ふふっ、司くん……」
🌟「寝言でオレを呼ぶな!!! ほら、起きろ類!! もうすぐ生徒たちが起きてくる時間だぞ!」
布団の中でモゾモゾと動いた類は、ゆっくりと上体を起こした。しかし、その頭は普段以上にものすごいことになっていた。
もともと癖の強い髪の毛が、旅館の枕のせいで四方八方に跳ねている。
🌟「うわっ…………………。お前、その頭はなんだ。鳥の巣でも乗せているのか?」
🎈「あはははは…………。おはよう、司くん。…ボクは低血圧でね……すまないが、朝は自分で髪を整える気力が湧かないんだよ ……」
まだ半分眠っている類は、ふらふらと司の腰のあたりに抱きつこうとする。
同じ部屋だからこそ見せる、あまりにも無防備な姿だ。
🌟「こら、くっつくな! ……はぁ、まったく。お前は毎回身だしなみに無頓着すぎるんだ」
司は呆れ果てた溜息をつきながらも、自分のポケットからマイコームを取り出した。
真面目で几帳面な司の字が綺麗なように、彼の持ち物もいつも綺麗に手入れされている。
🌟「ほら、ここに座れ。オレが解かしてやる」
🎈「おや……。相部屋ならではの特権だね。最高の朝だ」
類は嬉そうに目を細め、畳の上にちょこんと正座した。
司は類の後ろに回り込み、そのボサボサの紫色の髪にそっと触れる。
🌟「……痛かったら言えよ。」
毛先の方から、絡まった髪を少しずつ、優しく丁寧に解かしていく。
シュッ、シュッ、と静かな部屋にコームの通る音だけが響く。
類の髪質は思ったよりも柔らかく、司の指先にさらさらと触れていく。
そして、司の指が、類の髪のアクセントであるサイドのネオライトグリーンのメッシュにさしかかった。
🌟「この色は、本当にお前によく似合っていると思うぞ。」
少し照れくさそうに、けれど嬉しむように、司はその鮮やかなメッシュの毛束を指先でそっと梳いた。自分のものとは違う、少し冷たくて綺麗な色の髪。
それを自分が整えているという事実に、司の胸が少しだけ高鳴る。
🎈「ねぇ、司くん」
🌟「なんだ」
🎈「昨日の夜の『実験』……。司くんの可愛い声が耳から離れなくて、ボク、すごくよく眠れたんだ。この部屋、冬弥くんが爆睡してくれていて助かったよ」
🌟「ぶふぉおま!っ――!?!?///」
急に昨夜の出来事をバラされて、司の手が思いきり止まる。
🌟「お、お前……っ! 朝から何を言っているんだ! 誰かに聞かれたらどうする!」
🎈「ふふ、大丈夫。誰もいないよ。冬弥くんと彰人くんはさっき『朝の散歩に行ってきます。』って爽やかに部屋を出て行ったからね。」
🌟「おま!あのな!そっ、そういう問題じゃない!!」
真っ赤になって怒る司の隙を突き、類はくるりと後ろを振り返った。綺麗に整えられ、美しいメッシュが揺れる髪をなびかせ、類の月の瞳が、至近距離で司を見上げる。
🎈「ありがとう、司くん。おかげで今日も、いい『先生』が出来そうだ。」
類は司の手を掴むと、その手の甲に、ちゅっと小さくリップ音を立ててキスをした。
🌟「っ~~~~~、るいぃ!!!」
☕「神代さん、司先輩、おはようございます。朝食の準備ができたそうですが……どうかしましたか?」
そこへ、何も知らない天然な数学教師・冬弥が、ガラッと襖を開けて戻ってくる。
赤面して固まる司と、それを楽しそうに見つめる、髪の整った類。
☕「司先輩?、顔が真っ赤ですが、もしや旅館の暖房が効きすぎているのですか?」
🌟「っ!ち、違う! なんでもない…なんでもないぞ冬弥――!!!」
引率2日目。同じ部屋で迎えた朝から、国語教師の心臓は限界を迎えていた。
コメント
1件
わあ、第3話、もう胸がいっぱいです……! 朝の相部屋シーン、司くんが類くんの髪を解いてあげるところ、優しさと照れが混ざってすごく好きです。特に「この色は似合ってる」って言う台詞、司くんの気持ちがじんわり伝わってきて切なかった……。昨夜の実験を朝イチで話題にする類くんの余裕、最高にずるいですね(笑)。冬弥くんのナチュラルな乱入でさらに可愛い空気になって、1ページ目からドキドキが止まりませんでした。続きが気になります……!