jkside
🐰「大好きなヒョンのフェロモンが、
ずーっと僕のこと誘ってくれてるんです、、」
そう囁いた途端、
ヒョンがはっと息を飲んだ。
沈黙が走る。
🐣「う、、、、そ、、、、うそだ、、、泣
そんなわけ、、、、ないじゃん、、か、、泣、」
震えた声が耳元で聞こえる
🐰「ほんとですよ、、、、泣
こんなにも大好きな香り、忘れられるわけないです、、泣」
🐰「それにね、たぶん、、
ヒョンは今、発情期です。」
そう、
昨日からのヒョンのフェロモンは、発情期のそれに違いないと思えるほど強かった。
つまり、、、、もう3ヶ月。
ヒョンと、絶望の崖に落とされてから、
3ヶ月もの日が経っていた事を彼のフェロモンは示していた。
長かった。
もう二度と感じられないと思っていたこの甘い香り。
もう片時も離したくなくて、抱きしめて、キスをして、
自分のαの部分が、
どんどん興奮させられている
🐰「だから僕、抑制剤持ってきておいたんです。
今は、僕が抱きしめているから多少は大丈夫かもしれないけど、、きっとしんどくなるから。
ね、、飲んでおきましょ?」
🐣「うん、、、」
少しだけ身体を離し、
ベッドサイドに置いておいた薬を渡す。
ヒョンは僕の意図に気づいてくれるだろうか。
渡した薬は、発情期用のものでは無い。
それを飲んでもほとんど意味がなくて、
すぐに効果は切れてしまうだろう。
でも、
“それで十分”
少し話をする時間さえ、
彼のしんどさを抑えられれば十分だった。
だって僕がいるから。
すぐに僕の手で、ヒョンを気持ちよくしてあげるから。
なにも心配はいらない。
そのつもりでこの薬を渡したんだけど、気づいてくれたかな。
でも、
🐣「こんな、、こんな弱い薬で、、いいの?
ぐが、、僕なんかに誘われて、、、、苦しくないの、、?泣」
あぁ、、、
やっぱり分かってない、、、、
素直に飲んでくれたヒョンが、そんなことを聞いてくる
それでも、きっと無意識なんだろうが、
発情期のせいか、やたらとくっついてくる少し火照っている彼の身体。
🐰「僕は、誘って欲しいから、この薬にしたんですよ、、」
ヒョンをまた抱えあげて、そのかすかにとろんとしている瞳を覗き込んで、訴えるようにそう言うと、
ヒョンは僕が言いたいことに気づいてくれたように、目を潤ませ、僕の首根に顔を押し付けた
🐣「ぐが、、ぐがが、、、、僕のこと治してくれるの、、、?泣」
泣きそうな、でも恥ずかしそうなヒョンがかわいくて、押し付けられた頭をそっと撫でた
🐰「ヒョンが許してくれるなら、、もちろん僕が治してあげます。そっちの方がずっと幸せでしょう?
でも、、薬が切れる前に、、今までのこと話してもいいですか?」
そう聞くと、火照っていた彼の身体がビクンッと揺れて、
一瞬、我に返ったように冷たくなった気がした。
顔をあげたヒョンの、潤んだ目をしっかりと見つめる
🐰「聞きたくないかな、、、?」
🐣「ううん、、、ぜんぶ、、、、ぜんぶ教えて、、、泣」
🐰「ヒョンを安心させたくて話すだけです。
だから、少しでも聞きたくないと思ったら、やめるから言ってくださいね。」
🐣「聞くよ、、ちゃんと聞くから、泣、」
辛かったことを思い出したのだろうか、また涙を流し始めたヒョンをしっかりと抱きなおして、
🐰「あの日、、覚えてますか、、、?
久しぶりに一緒にココアを飲んだ夜・・・」
あの夜、彼の寂しそうな瞳を見て
グクは、ジミンを取り戻すために命を賭ける決意をした。
片方が死んだとしても、
解消されない可能性の方が高い、
それほどまでに強い、αとΩの番の誓い。
グクももちろん、
片方が死んだ時、噛み跡が消えて解消されるという儚い可能性にかけて、
あの男を殺害することを考えた。
でも、そんなことをジミンが望むはずもなかったし、
もし、男が死んでも、ジミンが奴から解放されなかったら、もう二度とチャンスはなくなってしまう。
だから、そんな方法は使えないことは分かっていて、早々に諦めた
でももうひとつ、、
もしかしたら、、と考えていた方法があった。
それは、
“αを性転換させること。”
あの男をΩに変えられれば
この世界に、あの男がαであったという証が無くなれば、
ジミンと男の番の誓いも、無くなるかもしれない。
そんな話を聞いたこともなかったけれど、
命に関わるような危険も沢山あったけれど、
理屈的には、それが成功するかもしれない可能性も、否定はできなかった
だからあの夜から、
グクは毎日、男の元へ、押しかけた。
最初はもちろん嘲笑われ、拒絶されたという。
警察が絡んでしまったいざこざで、
閉じ込めておいたのに見つかってしまって、
ジミンを連れ去ることが出来なかったことに、怒り狂っていた男は、
ジミンを早くここに連れてこい、
お前はいらないと、
何度も罵倒した
グクは夜中まで、男の家のドアにすがりついて自分を好きにしていいからと、泣きながら訴えた。
それを繰り返していたら、
いつの間にか満更でもない表情に変わった男が、
ある日、グクを乱暴に部屋に引っ張りこんだ
錯乱するほどの媚薬を打たれ、抱き潰され、思うがままに体を傷つけられても、
ただ、その男が
グクだけに、
ジミンを忘れ、グクだけに
愛情を注ぐようになるまで必死に耐えた
ジミンが壊れていくのを目にしながら、
本当はジミンに伝えたい好きを、
全て男に伝え、男を洗脳した
なかなか帰ることが出来なかったのは、
与えられる耐え難い暴力に、意識を失ってしまったり、
ジミンへの執着を疑われたりして、
男の家に監禁されていたから。
だから、ジミンの心を壊すきっかけになってしまったあのキスマも、ひとつ残らず全て男のものだった。
所有と束縛の印だった。
もともとグクに好意があったその男は、
グクがなんの抵抗もせず、服従していると分かると、あっけなく虜になった
そうしてようやく昨日の夜、その時は訪れた。
グクは男への愛情を偽り通し、
体を重ね、
お互いが発情状態に陥った。
乱暴な刺激に錯乱していたグクの項を、
男が噛もうとしたその一瞬。
グクは奇跡的に自我を取り戻し、のしかかって、
男の項をきつく噛んだ。
グクの愛に溺れていた男はあっけなく、
αの形質を失い、
Ωへと変わった
それが分かったのは、
グクと同じく家の中に監禁されていた、
男の番にさせられていたΩ達から、
一斉にその噛み跡が消え去り、
その家で唯一のαであるグクを誘う、フェロモンの香りが家中に広がったからだった。
それを感じとった瞬間、グクは偽り続けた愛を全て解き、
自分の番となった男を捨てた。
いまやその男は、一生、ヒートと
その優秀なαの形質を失った絶望に苦しまなければならない、
それでありながら、グクに項を噛まれたがために、
一生番をつくることのできない、哀れなΩでしか無かった
だがそこで、ひとつだけ引っかかるのは、
本来、「性転換」はα同士、
お互いの真の愛情がなければ、
お互いに番いたいという意思が強くなければ、
成立しない筈だということ。
それでも、グクがやり遂げられたのは、
全てを司る神様でさえも、
男への偽りの愛に、
ただグクがひたすら誓ったジミンへの一途な愛に、
気付かないふりをして、
Ωに残酷な仕打ちを与えていた男に、制裁を与えようとしたからなのだろう。
このグクの決死の覚悟で望んだ賭けは、
少しでも偽りがバレたら、
目的がバレたら、
一生ふいになってしまうかもしれない、
いつ殺されてもおかしくない、危険なものだった。
そしてもしあの一瞬、
グクが理性を取り戻せなくて、男に先に項を噛まれてしまっていたならば、
グクは本当に、ジミンの元に二度と帰れなくなっていた。
そう考えるとやはり、これは奇跡だったと言いようがなかった
そんなギリギリな状況で、全てを完璧にやり遂げたグクは、
真夜中であったにも関わらず、
真っ直ぐ、
世界でたった1人の、
自分が愛し続けるジミンの元へと
疲れきった身体と心を引きずるようにして必死で帰った。
やっとのことで辿り着いた自宅の玄関で、
数ヶ月ぶりに、
甘く優しい、
どれだけ経っても忘れることの出来なかった、
唯一無二のジミンのフェロモンに、
身体がふっと誘われるのを感じた瞬間、
限界だった疲労とこの上ない安堵で気絶してしまったのだと、
グクは話した。
jkside
🐰「だから、、だからね、、ほら、、」
長い話が終わったあと、
僕は腕の中のヒョンの首に手をかけ、
未だそこに巻かれていたスカーフを優しく解いた
🐰「ずっとつけててくれたんだね、、いい子だったね、、、泣」
🐣「うん、、、グスッ、、、うん、、言うこと聞いてたよ、、ぼく、、、」
ヒョンは大粒の涙を零して、僕の首根に顔を押し付けて泣いていた。
それを受け止めながら、僕は、ようやく本当に心が安堵するのを感じる
その顕になった彼の項が
最後に見た時、
傷つけられ、血が流れていた、ヒョンの大事な場所が、
男の噛み跡も、
痛ましかった傷跡も、
跡形もなく消えさっていたから。
🐰「ひょん、、?
ねぇ、、ここ、、元通りだよ、、、泣、、
やっぱり綺麗だ、、、ヒョン、ほら、、もう
泣かなくていいから、、、」
ヒョンの手をとって、うなじを確かめるよう促す。
🐰「ぼく、、これで、、、ヒョンのこと助けられたかな、、泣」
🐣「ほんと、、だ、、、泣
ぐが、、、ぐが、、、、うわああああああああああん」
🐰「ちょっ、、、、、ひょん、、、ん、、!」
油断していたら、
のしかかってきたヒョンにぐっとベッドに押し倒され、
あっという間にその可愛い唇に、僕のそれは塞がれた
🐣「クチュ、、、ん、、ぐが、、ぐが、、ぐすっ、、だいすき、、、、、ちゅ、、ん、、、ほしい、、、、」
泣きながら、求めるようにキスをしてくるヒョン。
でもその体はガクガク震えていて、自分の体重を支えられなくなっているみたいだった。
それほどまでに僕を求めてくれてるのが、可愛くて、愛おしくて仕方ない
キスを受け止めながら、そっと腰を支えてあげると、
彼は、ビクンと跳ねて、僕の上に倒れ込んできてしまった
🐣「ん、、はぁ、、はぁ、、、、、、ふ、、、、ん、、、」
🐰「だいじょうぶ、、?薬、、きれちゃった、、?」
僕が話している間は収まっていた体の熱が、舞い戻ってきていて、
その体はありえないほどに火照っている
くるんと自分の体ごと転がして、ヒョンに覆いかぶさり、彼を楽な体制にしてあげた
🐣「ぐがのはなし聞いてた、、、ハァ、、、ちゃんと、、聞いてたんだけど、、、んっ、、
ぐがに、、言わなきゃいけないこと、、いっぱいあるのに、、、からだが、、あつくて、、
、ハァ、、、んッ、、、ごめん、、ごめんね、、、泣」
ヒョンの顔は赤く火照って、瞳は蕩けて、
苦しげに息切れを繰り返す
🐰「分かってるよ、、、大丈夫。
なんにも言わなくていい。
僕はずっとヒョンだけ見てたってこと知って欲しくて、
安心して欲しくて話しただけだから、、」
もう楽にしてあげようかと思ったが、
🐣「ぐが、、ハァ、、、ハァ、、、、、あんな、、、あんな酷いこと言った僕のこと、、ハァ、、まだ愛してくれるの、、、、?」
吐息混じりの苦しげな、でもどこか不安げな声で問いかけてくる。
酷いこと、、、なんだろう、、
確かに傷ついたこともあったけど、1番傷ついて、苦しかったのはヒョンの方だ。
それに僕はずっと、何度も言っているが、
ヒョンのことが1番に大好きで、彼を愛するためだけに生きていた
今、この無防備に喘ぐヒョンを、
僕だけが見れるのなら、
この腕に抱いていられるのなら、
もうそれで十分で、
幸せで、謝って欲しいことなんか何もない。
だから僕が言うべきなのは、、
🐰「あのね、僕はずっとジミナだけを愛してるんです。
今もジミナが欲しくてたまらない。
もうなんにも考えなくていいから、、僕に全部くれませんか、、?」
🐣「ぐが、、、泣、、だいすき、、、、うん、、、、、、ぼくのぜんぶ、、、ぜんぶぐがのものにして、、、、、泣」
コメント
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毎回泣きながら読ませていただいています😭 良かった…本当に良かった😭 🐥ちゃんが壊れていく展開が辛すぎたけど、あの苦しみの後にこの幸せが待っていたんですね😭 二人の深くてピュアで美しい愛に胸が一杯になります😭 主様の小説が日々の最大の楽しみになっていたのでもうすぐ終わってしまうのは本当に寂しいですが、また他のお話の続きも楽しみにしています! 最終回、ドキドキワクワクです…
胸がいっぱいです…とても。 心から想い合う2人が近づけなくなり、心も体も傷ついて傷つけられて、悔しくて悲しくて辛くて… それでも読み進められてきたのは、そんな激しいストーリーの中にも2人の変わらぬ愛を感じさせて下さっていたReo.さんの物語の引き込む力のおかげです✨ 2人が結ばれる未来へ希望が見えた展開が本当に嬉しくて嬉しくて。2人のラブラブをずっと見ていたい…( ¨̮ )❥