夢を見たんだ。
みんながみんな疲れてしまって、みんなみんな離れていってしまう夢。
もしかしたら夢が現実になってしまうんじゃないかって、怖くって。…それに独りは嫌いだ。
嘘じゃないよ、綺麗事でもないよ、偽善者でもないよ、独りになりたくなくて言ってるわけでもないよ。
私は唯、みんなと一緒にいれればそれでいいの。
たしかにみんな騒がしくって疲れることもあるけれど。それを、壊されたくないし壊したくないんだ。
だって、楽しいんだもの。みんなと居られることが。
いつも通りの日常。それが、私のとっての宝物。
時に思っちゃうんだ。
私がみんなに迷惑をかけていないかって。
いつもみんなを振り回すし、追いかけ回すし、うるさいし。
私は空気があんまりよめなくって、みんなと違って知っていることも少ない。
私、此処にいて本当にいいのかな?そう、思うことが増えてきた。
はっきり言って邪魔。そう、思われていないか?
……ならいっそ、いなくなってしまおうか?
そうすれば、迷惑かけないし邪魔にもならないよね。
その考えが過ぎった瞬間に、そうしてしまおうと決心してしまった。
これから私は旅に出ます。とってもとっても長い旅。もう二度と帰ってくることのない旅。死ぬまで一生続く旅。
「いない!!」
という大声を聞いて、私は急いでそこへ走り込む。
あの夢を見てしまったせいでとても不安になる。もしかしたら、誰か離れて言ってしまった?
「ど、どうしたの……?」
急いで走ってきたせいで若干息切れしながらも、そう聞く。
「いないんだよ、█████が!!」
彼が珍しく声を荒らげていて、意外とこいつもみんなを見ているんだなと感じた。失礼だけど。
「█████が、?そこらへんにいるんじゃ?」
「全部細かく見たのに、いないんだ。」
状況は思ったより悪かった。こんな朝一でもういないということは、夜……深夜くらいに出たはず。
「え……早く探さないともっと遠くへ行っちゃう!!」
「もしかしたら外の可能性も十分に考えられる。」
外はまずい。ただでさえ広いんだから見つけられる確率が低くなってしまう。それに……。いいや、このことは考えないようにしよう。
「……私!!探してくるよ!」
「おい、危ないぞ…。」
「早く行かないと見つからない可能性だって出てくるから!あとあいつには言っといて!!」
「分かったけど気をつけろよ!!」
返事をほとんど聞かずに外へ飛び出す。どこにいるんだ?……いそうなところ?
……あれ、待って。私、全然█████のこと知らない…?
どこへ行きそうとか、何を思って外へ出たとか。…何も、分からない……。
今頃みんなどう思ってるかなぁ。
とりあえず気付かれずに出ていくことはできたけど……。追いかけられている雰囲気もないしね。
やっぱ出ていったこと分かんないかな、それともいなくなって安心したとか思ってるかな。
いやまぁそれが目的だけど。
……なにか胸に突っかかる。感情を吐き出しきれない。
…なんだ、これ。
今とりあえずアクセサリーが売っている店に来てみたけれど……。いないか、そりゃそうだ。
わざわざ無言で出ていって行く場所ではない気がする。
じゃあ次は……どこだろう。甘い食べ物が売っているところ?泊まれるところ?
全部、違うよね。それはさっきと同じこと言えるし。
でも手当り次第探さなくちゃ。
……日が暮れてきたなぁ。
今日は誰とも話してないし誰とも会ってないや。
いつもみたいバカ騒ぎしてた私はどっか行った。
…誰も見つけてはくれなかった、ね。
見つけてほしくはないけど見つからないままなのはなんか嫌だ。これじゃ出ていった意味ないな。
「……どうしようかな。」
「はぁ、はぁ………やっと見つけた!!」
背後から声がする。振り返るとそこには████がいた。
「遅くなっちゃったな〜、あはは。」
「……なんで。…なんで、見つけてくれたの?」
問いかける。疑問だったから。
だって私は特に████に迷惑をたくさんかけたから。
「え?だっていないと寂しいじゃん。」
当たり前かのように笑ってそう言った。
「…ふふ。いつもは私が追いかける側なのに、今回は私が追いかけられちゃったね。」
「…さ、帰ろ?みんな待ってる。」
そう言われて、私の心の霧が晴れた。
あぁ、そうだ、私……。
「…うん!」
きっと、誰かに必要とされたかったんだ。
END