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帰ってきてからお兄ちゃんへ無事に着いたと連絡を送り、晩御飯の仕度を済ませて数時間後。
「ただいま」
言っていた通り、遅くならずにお兄ちゃんは帰ってきた。
「お帰りなさい。まだご飯食べてなかったから、一緒に食べよ」
「ああ、そうしよう」
そう言って優しく微笑むお兄ちゃんは昼間の雰囲気とは違っていつも通りに見える。あの時、怒っているように感じたのはもしかして気のせいだったのかな、なんてちょっとほっとした。
その後も、お兄ちゃんはいつもと変わらない様子でご飯を食べて、いつものように一緒に片付けをした。
片付けが終わって、二人で一息ついたその時、私のスマホが鳴る。なんだろうと思って見てみると、佐々木くんからのメッセージだった。
『今日は久々に会えて嬉しかったよ!あの後、お兄さん大丈夫だったか?なんか、お兄さんて距離感でもなかったけど……。そうだ、今度同期で集まるから、遠野も良かったら来ないか?』
「お兄さんて距離感じゃない、か」
「っ、見てたの!?」
メッセージを眺めていたら、どうやらお兄ちゃんも後ろから見ていたらしい。驚いて振り向くと、さっきまでのいつもの優しい雰囲気とは違い、昼間の時のようになぜか怒っているように感じる。
「見られて困るような相手?」
「そんなんじゃないけど……」
別に困ったりしない。でも、今まではメッセージを覗き見たりするようなことはなかったから少しびっくりしてしまう。
「覗いたのは悪かったと思ってる。たまたま見えてしまったから、気になったんだ。佐々木くんなんだろ?なんて返すの?……お兄ちゃんじゃなくて恋人だからですって返せば良いよ」
「えっ?」
そんなの恥ずかしいし、突然そんなこと言われても佐々木くんだってびっくりするだろう。驚いてお兄ちゃんの顔を見ると、お兄ちゃんの目は酷く冷ややかだ。
お兄ちゃんの手が伸びてきて私からスマホを奪ってテーブルの上に置いてしまう。そして、スマホを手放した手はそのまま私の手首を掴んだ。
「俺と恋人だって、佐々木くんには言えないの?どうして?もしかして会社にいた頃、彼のことが気になってた?」
「何を言って……!そんなことないよ、佐々木くんは本当にただの同期だもん」
「本当に?ずいぶんと仲が良さそうだったけど」
お兄ちゃんは顔を近づけてくると耳元でそう囁いてから、そっと耳に齧り付いた……!
「やっ……!」
お兄ちゃんは、何度も優しく耳を食んでくる。その度に背中を何かが這いずりあがって行くような感覚になる。
「なぁ、楓。俺たち両想いなんだよな?恋人になったんだよな?どうしてあの時、お兄ちゃんじゃなく恋人だって言ってくれなかったんだ?」
「そ、れは!い、つものクセで、咄嗟に、お兄ちゃんって言っちゃっただけで……っ!」
「本当に?それだけ?あいつは関係ない?」
そう言いながら、お兄ちゃんは耳元から首筋にかけて執拗に食んでくる。その度に体中が熱くなって、おかしくなりそうだ。私はなんとか首を縦に振って意思表示をする。
お兄ちゃんは顔を離すと、私の顔を覗き込む。そこにあるのは、ドロリとした執着心を隠しきれない目だ。
「俺は楓のことを大切にしたい。ずっと好きだった楓の嫌がることはしたくない。大切だから、簡単に触れちゃいけない、そう思っていた。触れてしまったら、枷が外れて止まれないと思ったんだ。でも」
そう言って、お兄ちゃんは片手で私の頬をそっと撫でる。優しいはずのに、ねっとりとして吸い付くような、纏わりつくような触り方。
「あの男と一緒にいる楽しそうな楓を見たら、どうしようもなく嫉妬した。あいつに恋人だって言わないでお兄ちゃんだって言われたこともショックだった。楓の中でまだ俺はお兄ちゃんなんだって思ったら、むしろちゃんとわからせてあげないと、って思った」
「わからせる……?」
一体何を、と言おうとした時には、もう唇が塞がれていた。
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