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 ハンナ直伝のハーブチキンソテーは、ギュンター・ノルベルトにとっては母の味であり懐かしい味だったが、リオンにとってはやっぱりハンナのメシは美味いと再認識させてくれるものだった。

 それを楽しんだ後、テーブルを手早く片付けてリビングに移動し、ギュンター・ノルベルトが持参したバーボンを飲むためにグラス等をリオンが用意して運んでいたが、頃合いを見計らったウーヴェが冷蔵庫の中から何かをとりだしたかと思うと、リビングに行こうと迎えに来たリオンを手招きして小首を傾げさせる。

「リーオ、準備と後片付けをありがとう」

 あまり動けない俺の代わりにありがとうと礼を言ってリオンの頬にキスをしたウーヴェは、もう少しだけ手伝ってくれと告げて冷凍庫からリオンが好きなメーカーだからという理由で買い置きする率が高くなったバニラアイスを出させてマグカップにスプーンで無造作に入れると、その上に先程取りだしたチョコを削って振りかけていく。

「今日は簡単なデザートだけど、明日の面接の結果が良いものだったらリアに頼んでチーズケーキを作って貰おうか」

「……ダンケ、オーヴェ。頑張ってくる」

「ああ。……お前が新しい一歩を踏み出すから、俺もそうしようと思う」

 アイスを人数分作ってトレイに載せそれをリオンに運ばせたウーヴェがリビングへと向かうと、何をしていたんだとギュンター・ノルベルトが腰を浮かせるが、デザートの用意と少し真面目な話と笑って兄に座ってくれと促す。

「明日、リオンの面接があるんだろう?」

「ああ、聞いたか?」

 口を出すべきかどうするべきか思案顔で友人を見るヘクターの視線に気付きながらギュンター・ノルベルトが頷き、そのことで何か話があるのかと問いかけると、ウーヴェがゆっくりと頭を左右に振る。

「それについてはリオンの問題だから俺からは何もない。……明日、クリニックに一人で行ってみようと思う」

「オーヴェ……?」

 リオンの腿に手を載せて驚く三人に頷いたウーヴェは、リオンが面接を受けている間クリニックに一人で行ってみる事を再度伝え、最も驚いているリオンに目を細め、確かめたいことがあると告げてグラスを手に取る。

「……退院してからまだ一人でクリニックに行ったことが、ない、から……」

 己の職場であり大切な居場所であるクリニックだが、今回の事件が発生した事件現場でもある。そこに一人で戻った時に冷静でいられるのか、心身に不調が出ないのかを月が変わってから診察を再開する前に確かめたいと告げてグラスの中身を一気に飲み干すとリオンの肩に寄りかかる。

「昔、働いていた女性が殺された事はあったけど……その時は、彼女には酷い話かもしれないが、大丈夫だった」

「そー言えばそんなことあったなぁ」

「うん。その事件でお前と会った。……でも今回は……俺もリアも被害者だ」

 あのクリニックの一階で俺は誘拐され、リアは足を刺されてトイレに監禁されたがその現場でもあるクリニックに戻り以前のように仕事が出来るのか、苦しんでいる人と正面から向き合えるのかを確かめたいとある確信を抱きつつ告げると、リオンの腕がウーヴェの肩に回されて抱き寄せられる。

「クリニックの内装を少し変えたけど構造的に変える事は出来ない。その中で診察が出来るか……最終確認をしたい」

 出来ると、己の患者と向かい合えると思っているがそれを確信に変えたいとリオンに更に寄りかかりながら小さく笑うウーヴェにギュンター・ノルベルトが一度目を閉じた後に立ち上がるとウーヴェをソファの背もたれ越しにそっと抱きしめ、お前になら出来ると囁きかける。

「うん。ありがとう、ノル」

「ああ。しっかりとお前の思いを確かめて来なさい」

 ウーヴェの色が変わってしまった髪にキスをして頬を少しだけ宛がったギュンター・ノルベルトは、ではリオンにクリニックに送って貰うのかと問いながらソファに座ると、ウーヴェが頭を左右に振りながらバスと電車で行ってみると答えつつリオンのアイスを横合いから一口奪い取る。

「あ、俺のアイス食った」

「うん、美味しいな」

「そう言う問題じゃねぇっての」

 まったくもう、と、不満気に訴える割には本気さを感じさせない顔でウーヴェを軽く睨むリオンだったが、気にしなくても送っていくのにと告げると電車で通った場合どのような感じになるのか、疲労感がどれほどかを知りたいと言われれば何も言えなかったが、何事かを思い出した顔でギュンター・ノルベルトがヘクターに顔を寄せて囁きかけると、ワインとは別の袋から封筒を取り出す。

「ノル?」

「フェリクス、前に車を買い換える話をしていたけど、もう新しい車は決まったのか?」

 ウーヴェの足を思えばクラッチ操作の無い車が必須になることからスパイダーを買い換える話を以前父や兄に話したことを思い出し、まだカタログを見ている程度だと肩を竦めたウーヴェににこにこと笑みを絶やさずにギュンター・ノルベルトが封筒を差し出す。

「これは?」

「実は、俺も車を買い換えようと思うんだ」

「そうなのか?」

「ギュンターの車は走ってるのが不思議なぐらいのビートルだからなぁ」

 詳しく聞いていないが働いて初めて買った車だから乗っているそうだとギュンター・ノルベルトでは無くヘクターが肩を竦めて答えると、バルツァーの社長が随分と古い車に乗っている事にウーヴェも驚いてしまう。

「社長として出かけるときはちゃんと会社に車があるから問題は無いよ。車に乗って出かけると言っても買い物に行く程度だ、車なんて走って曲がって止まればそれで良い」

 ただ、それでも走行中にエンジンが不調を訴えてくるようになってしまい、買い換え時期が訪れたと腹を括った結果新しい車を探しているのだが、お前が良いと言ってくれるならスパイダーを買い取りたいがどうだと兄に提案された弟が絶句し伴侶へと顔を向けるが、聞こえてきたのはやっぱりなぁと言う諦め混じりの嘆息だった。

「リーオ?」

「やっぱりお前の家族はお前に甘い! 誰とは言わないけど、特に兄貴な!」

「言ってるじゃないか」

 リオンの言葉にヘクターが返し兄弟が憮然とするが、ちょっと待ってくれ、話がよく分からないとウーヴェが困惑顔で告げ、その封筒はもしかしてと呟くとスパイダーを譲って貰う時に必要な書類一式を代わりに手配しておいた、後はお前のサインだけだと笑われ、額を抑えて溜息をついたウーヴェの横でリオンがソファの背もたれを抱え込む様に腕を回してウーヴェの頭を撫でる。

「……どうせ下取り価格も市場価格に愛情価格も合算されてるだろうからさ、それこそ好きな車を買えるぜ、オーヴェ」

「愛情価格か。中々良い言葉だな、リオン」

「褒められても嬉しくねぇって、兄貴。でもさ、スパイダーを兄貴が運転するのか?」

 兄貴がスパイダーに乗っている姿が想像出来ないというか助手席か後部座席に座っているイメージしかないとリオンが素直な感想を口にすると、主に運転するのはヘクターだと答えられて納得してしまう。

「ヘクターが運転するのか?」

「ああ、多分そうなるだろうな。……後は、ギュンターの彼女たち、だな」

「彼女たちには運転させないよ。お前がしてくれ、ヘクター」

 ウーヴェの疑問にヘクターがにやりと笑みを浮かべて答えるが、そんなことはさせないとギュンター・ノルベルトが首を左右に振って肩を竦めそうかとリオンも納得しそうになるが、引っかかりを覚えたものがあるとウーヴェが身を乗り出して兄の顔を覗き込む。

「彼女達と言ったな、ノル?」

「え? あ、ああ、うん、まあ、な」

「……何だ、兄貴も結構好きなんだな」

 彼女達と言う事は最低でも二人は付き合いのある女性がいるとリオンが口笛を吹き、珍しくギュンター・ノルベルトが顔を赤くしたり青くしたりしながらこれには深い事情があってと、胡乱なものを見る目つきで見つめて来る弟に言い訳を始め、その姿が長年ギュンター・ノルベルトの傍にいるヘクターにとっても珍しいものだったのか、目を瞠り事の成り行きを見守っている前でギュンター・ノルベルトが咳払いをし、ウーヴェの視線を遮るように掌を立ててもう一度咳払いをする。

「あー、その、事情を説明するから聞いてくれないか、フェリクス」

「……なんだ?」

 ウーヴェの眼光に込められたものにギュンター・ノルベルトが冷や汗を浮かべ、リオンが先程鼻を啜りながらウーヴェに仲直りしてくれと懇願していた時の気持ちが少しだけ理解出来ると溜息を吐くが、付き合いのある女性は四人いてそれぞれ三ヶ月だけ彼女として付き合っている事、それら総ては彼女達も了承済みどころか自分がいない時には彼女達だけで食事に行ったり飲みに行ったりするほど仲が良いと答え、ウーヴェの目を見開かせる。

「三ヶ月だけの彼女?」

「ああ。……色々忙しいとこちらも彼女達に対して気遣いが出来なくなる。三ヶ月ごとに変わればまた新しい気持ちになれるからな」

 我が儘で最低な事だとは分かっているが、お前の母、レジーナと別れてからはどうしても一人の女性と付き合うことが出来ないと、頬を撫でて苦笑するギュンター・ノルベルトに何も言えなかったウーヴェは、自分には理解出来ないし納得出来ない事だがノルと彼女達が納得しているのならそんな関係も良いかもしれないと、実父であり兄でもあるギュンター・ノルベルトの彼女との関係を認めると、俺が二人同時に付き合ってるって知った時は激怒したくせにと横合いから過去のウーヴェの言動に対する恨みが漂ってくる。

「……俺は理解出来ないし納得出来ないと言っただろ?」

「そんなことをするなんて人としてどうかと思うって言ってたくせに。兄貴なら良いって言うのかよー」

 あの時の最低な人を見る目は忘れない、あの夜、あの古いアパートのベッドで枕を濡らしながら寝たんだからなと半目で睨みつつ恨み言をぶつぶつと垂れ流すリオンに溜息を吐いたウーヴェは、ぽかんとする兄とその友人に肩を竦めた後、リオンの頬を何度か撫で目元に柔らかさが出たのを見計らうと、不満に開く唇に小さな音を立ててキスをする。

「前はそうだったけど、今は俺だけだろう?」

「……うん」

「そんなお前を愛してる、リーオ」

「……うん。俺も」

 リオンが不満をキスで吹き飛ばしてウーヴェに抱きつくのを見ていた二人だったが、あまり何も言いたくはないが犬も食わないようなケンカは止めなさいとギュンター・ノルベルトが年長者の顔で忠告をし、ヘクターもただ頭を左右に振るだけだった。

「……まあ真面目な話、彼女達に色々与えすぎると問題が出てくる」

 ギュンター・ノルベルトの立場を思えば何かと問題があることを思い出すが、会社はともかく自分の私物、肩書きのないただのギュンター・ノルベルトが所有するものは一つを除いた総てを譲渡する相手はもう決まっているのだからと穏やかに笑い、小首を傾げるウーヴェをリオンが抱きしめ、その相手はお前だと囁くとギュンター・ノルベルトも頷いて同意する。

「俺……?」

「当たり前だろう? ジーナと俺の子どもはお前しかいないんだからね」

 俺が今まで稼いできて手にしてきたもの、これから先も手にするであろう総てはいずれお前のものになると笑う兄に茫然自失の弟だったが、リオンがすかさず一つ以外と言ったがその一つはなんだ、兄貴の命かと笑うと、そんなものはフェリクスが生まれた時に与えたものだと息をするのと同じように自然と返されて流石にそこからギュンター・ノルベルトのウーヴェに対する深い愛情を感じ取って口を閉ざしてしまう。

 クリスマスイブの寒い夜、匿ってくれた教会の人たちの好意で病院へと連れて行って貰い、生まれたばかりのお前を抱いた時、この小さな命を守るために今まで生きてきた事を理解したと、遠い昔を懐かしむギュンター・ノルベルトに何も言えなかった二人を前に、彼女とは悲しい別れをしたがそれでも今でも愛しているのは彼女だけだ、一つだけ譲れないのは彼女への思いとそれを伝えてきた写真だけだと教えられてリオンがウーヴェを抱く腕に力を込める。

「……ノル」

「……マジでお前の家族はお前に甘いよなぁ。結局スパイダーを兄貴が買い取るけどさ、いずれお前の所に還って来るってことだろ?」

 ウーヴェがスパイダーをどれほど気に入っているのか等をアリーセ・エリザベスから聞かされていたし、幼い頃から手に入れたものを手放す事に酷く躊躇っていたのを覚えていたギュンター・ノルベルトがウーヴェが悲しまない方法を考えた時、スパイダーを己が買い取りその代金で新しい車を買えば双方ともウーヴェの手元に戻るという事だった。

 その兄の策略に乗って良いのかと悩み始めるウーヴェの頬にキスをし、兄貴の好意を素直に受け取れ、それが親孝行でもあるとリオンが囁くと己の首の下に回される腕をウーヴェが撫でる。

「……うん。ダンケ、ノル。その書類にサインすれば良いのか?」

「ああ」

 兄の無条件の愛情とリオンの少し違うがそれでも同等の愛情を感じ取り素直にサインしようと決めて書類にサインをし、購入の候補となっている車のカタログをリオンが取りにいった後、テーブルに広げて四人で顔を寄せ合い、いくつになっても男は子どもの頃に車の玩具で遊んでいた時を彷彿とさせる顔を見せることを証明するように、この性能がどうだのインテリアがどうだのと盛り上がるのだった。


「今日は美味しい料理をありがとう、フェリクス」

 帰るのが惜しいが明日朝一番で重要ではないが出席しなければならない会議があるから帰るよと、今生の別れのような雰囲気を漂わせながらウーヴェの頬を両手で包み額にキスをするギュンター・ノルベルトを尻目に、会議は時間が掛かるのかとリオンがヘクターに問いかけるが、会長も出席するがすぐに飽きて出てくるだろうからギュンターは最後まで出席しないといけないだろうなと肩を竦められる。

「あ、そうだ。明日の面接だけど……」

 新車購入とスパイダーの譲渡の話題で忘れていたが明日は俺の面接があるとリオンが声を大きくすると、ウーヴェをやんわりとハグしながらギュンター・ノルベルトが何も心配するなと笑いウーヴェが何かを言いたげに口を開閉させるが、結局は何も言わずに兄の背中を撫でて離してくれと伝え、今度はリオンの腰に腕を回して寄りかかる。

「……人事担当がするんだよな」

「そうだな。人事部があるからな」

 そこの採用担当者が面接するはずだ、だからあまりふざけたことばかりを言うなと釘を刺されてそっぽを向いたリオンは、とにかく明日面接に行くこと、終わればすぐにウーヴェをクリニックに迎えに行くことを伝えウーヴェのこめかみにキスをする。

「だからオーヴェ、明日スパイダーを使うぜ」

「ああ。俺は電車とバスでクリニックに行ってみる」

 そしてさっきも言ったが、事件現場となったクリニックで己の様子を確かめると頷き、三人の顔を見た後、大丈夫だと思うと頷いてリオンの肩に寄りかかる。

「大丈夫、だよな、リーオ」

「ああ。大丈夫。二人でクリニックに行って作業してる時全然平気だったもん、オーヴェ」

 だから一人でも大丈夫、もし万が一不安になったとしても一人じゃないと笑みを浮かべてウーヴェに伝えたリオンは、その言葉に全幅の信頼を置いているようにウーヴェが頷き、それを見たギュンター・ノルベルトとヘクターも安堵に目を細める。

「じゃあそろそろ帰るよ」

「うん。おやすみ、ノル、ヘクター」

「ああ、おやすみ」

 明日会社で再会するのを楽しみにしていると笑ってリオンと握手を交わしたヘクターは、いつまでも名残惜しそうなギュンター・ノルベルトの背中を押して玄関のドアを開けると、見送ってくれる二人に手を上げてまた明日、おやすみと挨拶を残して出ていくのだった。

 兄とその友人を見送った二人は戸締まりを確認した後リビングの片付けをするために戻ろうとするが、リオンのシャツをウーヴェが掴んで合図を送ったことに気付き、肩越しに訝る視線を送る。

「どーした?」

「……片付けは明日で良い。今日は……こっちで寝る」

「へ? ああ、分かった。じゃあパジャマ取ってくる」

 流石にこのままで寝るのはイヤだろうとリオンが肩を竦めるが、真冬でもないしこのままで良いと上目遣いに見つめられては逆らえず、先に俺の部屋に行っていろと額にキスをし、リビングの戸締まりを確認するために廊下を走っていく。

 リオンが己の部屋に戻った時、ウーヴェがパイプベッドに腰を下ろして服を脱いでいて、服なら俺が脱がせるのに自分でするなよダーリンとにやりと笑いながらウーヴェの横に膝を突いて前屈みになると、リオンの身体の陰から淫靡な空気が漂ってくる。

「脱がせたいか?」

「もちろん」

 でも、今残念ながらパンツ一枚になっているからそれもいずれ脱がせて貰おうと笑うリオンの背中にそっと腕を回して一つ抓ったウーヴェは、間近で上がる悲鳴にクスクスと笑い、更に上がる悲鳴に肩を揺らし出すが、その肩を掴んでベッドに押しつけられて目を瞬かせる。

「もー。俺の陛下はどうして素直になれねぇかなぁ」

「……何の事だ」

「またまたー。いつも言ってるでしょ。素直じゃないお前も好きだけど素直なお前はもっと好きって。だから言ってしまえ、オーヴェ」

 今ここに渦巻いている思いを口にしろとウーヴェの薄い胸に掌を宛がったリオンの言葉に短く息を飲んだウーヴェだったが、明日クリニックに行く事が急に不安になったと少しの沈黙の後に答えると、リオンが労るように髪を撫でて額に再度キスをし次いで胸にもキスをする。

「……うん」

「リーオ……っ」

「大丈夫だ、オーヴェ。さっきも言ったけど二人でいても平気だった。ならもう大丈夫」

 お前なら一人で事件現場に出向いたとしても必要以上に囚われたりしない、大丈夫と繰り返すと、ウーヴェの腕が持ち上がってリオンの首の後ろで交差する。

「それにさ、リアも来るし」

 彼女もお前と同じで職場が事件現場になった辛さを抱えている、二人でいれば大丈夫だろうと宥めるように囁くと、リオンを抱きしめる腕に力が込められる。

「お前なら大丈夫」

 明日一人でクリニックに向かうその勇気をお前は持っているし新婚旅行先のホテルでも短いとはいえ一人で歩いて戻って来ただろうと頬にキスをされて頷いたウーヴェは、急に不安になったことを自嘲と共に詫びるが、当たり前のことだから気にするなとリオンが頭を囲うように両手を突く。

「……うん」

 それでも不安だったら電話をしてこい、面接中であっても出てやると笑うリオンにようやく小さな笑みを浮かべて不安を解消させたウーヴェは、そんなことにはならないようにするため、今から力を分けてくれとピアスが填まる耳朶に囁きかけ、こめかみと頬、鼻の頭に最後に唇へのキスで返事を貰い、明日の不安を何とか押しとどめるのだった。


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