テラーノベル
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そこまで考えて、ふと中本さんが前に仰っていらした、『彼、親が決めた女性がいるとかで、誰にもなびかないから』という言葉を思い出す。
(そういえば……自分のことに手一杯ですっかり失念していたけれど、修太郎さんにも決められたお相手の方がいらしたんじゃ?)
そう気がついたら、その事が気になってたまらなくなってしまう。でも、意気地なしの私は、それを直接問いただすことが出来なくて……。
「塚……、しゅ、修太郎さん……。わ、私、その……同年代の女の子らちが普通に出来て当らり前のこと、殆ろ何も知りません。それれも……そんな私が……貴方の隣にいれも……構い……ませ、んか?」
本当は、貴方の隣は私じゃない誰かのために空けてあったのではないですか?と聞きたかった。
私の隣にずっと健二さんの居場所が設けられてきたように、修太郎さんのそばにも。
そう思ったら途端悲しくなって、思わずギュッと下唇を噛み締める。
(自分のことを棚に上げて、私は本当に自分勝手なのですっ)
そのことに自己嫌悪して、唇を食む力が、無意識に強くなる。
それに気づいた修太郎さんが、私の唇を指の腹で掠めるように優しく撫でてから、
「日織さん以外の女性を自分のそばに置くことなんて、貴女と出会った日からずっと、僕は一度だって考えたことはありませんよ?」
言って、唇を噛み締めたことを諫めるように、噛み締めたところにそっと指を触れていらっしゃる。
「そんなに噛んではいけません。肌に傷がついてしまう」
言って、修太郎さんは私に優しく口付けた。
それも、さっきより角度の深いキスで。
「……んっ」
このままではまた呼吸のタイミングが掴めなくて、苦しくなってしまう。
そう考えると、頭の中がパニックになりかけてしまった。
それを察した修太郎さんが、優しくついばむように口付けたあと、一旦キスを中断なさる。
そうして耳許で
「日織さん、そんなに構えなくて大丈夫です。呼吸はね、鼻ですることを前提に……唇を離したタイミングで少し大きめなのをしてみるのがコツです。――とはいえ、口で言っても分かりにくいでしょうし、僕と一緒に少しずつ練習していきましょうね?」
と囁かれる。
彼の言葉におずおずとうなずくと、もう一度唇を塞がれて――。
修太郎さんの唇が何度も何度も私の唇に触れる。柔らかくて嬉しくて胸の奥がジン、としびれるような甘いキスの応酬。
初めてのことばかりで、何が起こるか分からずに不安で堪らないはずなのに、そんな風に修太郎さんの口付けに翻弄されているうちに、頭の芯に紗がかかったみたいにボーッとしてしまう。
そんななか、唇を解放された私は……思わず追いすがるように彼の唇を追って……。気がつけば、ついでのようにちゃんと空気が吸い込めていた。
「日織さんの唇、桃の甘い香りがします。――とろけそうに柔らかくて……とても愛らしい」
そのくせ熱を孕んだ瞳で告げられた修太郎さんのその言葉に、私はにわかに恥ずかしくなって、両手で顔を覆った。
「隠さないで?」
途端、修太郎さんに手を掴まれて、そのままベッドに縫い止められてしまう。
鷹槻れん

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#契約結婚
鷹槻れん

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はからず修太郎さんに押し倒される形になってしまった私は、眼前の彼から目が離せなかった。
コメント
2件
両思いにしか思えないんだけどな?
ああ、もう……この回、胸がぎゅっとなりました。日織さんが「本当は隣は私じゃない誰かのために空けてあったのでは」って思うところ、すごく切なくて。でも修太郎さんが「貴女と出会った日からずっと、一度だって考えたことはありません」って言ってくれて、もうそこだけで涙腺が緩みました。それに「呼吸は鼻ですることを前提に」ってキスのレッスン、優しすぎませんか……。押し倒されて、桃の香りって言われる日織さん、尊すぎて悶えました。素敵なお話をありがとうございます🌷