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テラーノベルの小説コンテスト 第3回テノコン 2024年7月1日〜9月30日まで
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二 章 : 幽 霊 は 色 褪 せ な い



午後8時 。

山の麓から夜の町を細目で覗いていた 。


星のように光る町は 、

夜に負けない為 、必死に頑張っているように見えた 。


「 皆集まったし 、廃家行くかーー 」


佐藤のやる気に満ち溢れた声に続くよう

地面に落としていた腰をあげる 。


夜に出歩くのは悪い事をしているような気分だ 。


罪悪感と 、ほんの僅かな好奇心が混じりあう

不安定な心情の儘 、


僕達は廃家へ脚を動かした 。




唯の体育の授業で息切れし 、

地面に身体を落としてしまう僕にとって

この運動は苦痛の割合が多過ぎると気付いた山の中間地点 。


脚とお腹の痛みと廃家の遠さに

溜息なのかすら分からない息が恐怖する程出ていく 。




だけど 、休憩したいなんて言い出せず

気付けば 、僕達は廃家へ辿り着いていた 。


「 ンなとこに家建てるとか馬鹿だろ 、クッソ疲れた 」


苦評を立てる田中 。

珍しく 、これは僕も同意見だ 。


「 知ってる?元の家主は人間嫌いだったらしいよ 。だからこんな所に家建てたんだよ 」


山口によるお決まりの嘘 。

でも 、自分の心拍音と呼吸の音で

あまり聞き取れなかった 。


「 なー 、入ろうとしたんだけど鍵かかっててさ 。どうする? 」


どうするも何も 、

帰る以外の選択肢なんて見つからない 。

だけど 、帰る為の体力も無い 。


「 折角来たんだし 、家の周り探索しようぜ 」


田中 、やはり僕と君は相性が悪いよ 。

こんなに意見が食い違うのは初めてだ 。


だけど 、田中の意見に反対するのは僕だけらしい 。


指でグッドを作っていると思ったら

気付いたら探索しに行った佐藤 。


熊がどうのこうの言って

佐藤と同じく探索しに行った山口 。


残ったのは僕と田中 。


「 お前ほんと体力ねーな 、ざっこ 」


反論しようとしても

うずくまって息をする事しか出来なかった 。

元から質のいい反論など無かったけれど 。


「 俺もう先行くから 、がんばれよー 」


僕を置いてけぼりにして

廃家の周りを彷徨く皆 。


僕の目の前には廃れているけれど

形を保った家がずっしりと建ち込んでいる 。


威圧感すら感じる廃家をまじまじと見つめ乍

少しずつ呼吸を整えた 。


「 ふー 、ふー 、」


独り 、呼吸を整える 。

異様な情景だと 、きっと誰しもが思う 。


後悔とはいえない物が積もっていくし 、

東大入試の問題より難解な心情が積もる 。


「 はー 、っん . ? 」


田中でもいい 。

誰と合流しようと 、不規則な呼吸の儘立ち上がると

頭を撫でられる感覚がやってきた 。


こんな山奥で 、人気の無い場所で

僕を撫でた者の正体は



“ アサガオ ” の花弁だった 。



木に咲くアサガオなんて聞いた事が無い 。

なのに 、僕の頭を撫でれる高さから落ちてきた 。


真っ先に意識が行ったのは

この “ 廃家 ” だ 。


だがこの家が廃家になったのは数十年前 。

数年前だとしても 、花はとうに枯れている 。


何処かの常識外れの人間が不法侵入し

アサガオを育てているのか 。


モヤが掛かった儘にするのは好みじゃない 。

佐藤が鍵がかかっていると言っていたけど

僕はその言葉を忘れ 、手を伸ばした 。




ガチ ャ ッ



想定外の音に胸が高まった 。

先程迄は鍵がかかっていたのに 、


中から誰かが開けた?鍵が壊れた?


折角整えた呼吸にズレが生じていく 。


「 .. . 」


少し考える 。


ひとまず皆と合流するか 、この儘1人で廃家へ入るか 。


1番目の問題は時間と体力 。

ばらけた皆を集めるのは時間と体力の消耗が激しいと推測した 。

2番目の問題は危険性が高いという事 。

鍵が勝手に開いた 、この時点で可笑しいのは誰でも分かる 。

中に不審者が居る可能性だって0ではない 。


何方を選ぶか 、選択権は僕にある 。

もし不審者が居たとして 、僕1人じゃ太刀打ち出来ないだろう 。

でも 、皆が居たとしても太刀打ち出来るかは分からない 。


「 .. はあ 」


重りのついた脚を渋々廃家を落とした 。









月明かりのような光が

薄らと廃家の中を照らしていた 。


光源は見当たらない 。不自然だ 。

外からの光とは考えられない 。


酸素不足で上手く回らない頭を

渦を巻くようにぐるりと回転させた 。


「 、アサガオの花弁 」


お節介な事に 、階段は目の前に有る 。

もう僕は何がしたいんだろうか 。


曖昧な霊にもバレぬよう 、小さく溜息を吐いて階段を登る 。


今更だけど 、正直後悔してるよ 。

皆はバラバラで行動し始めたし 、全身痛いし 。


無意識に怒気を階段へ踏み付けた 。

それにしても 、やけに長 、
















夏のど真ん中 。



僕は純白を知った 。





窓から侵入した風になびかれる姿は



天 女 も 顔 負 け だ と 感 じ た 。








「 .. . ぁ 」


雪を模したかと思える程白い肌と髪に

恐怖すら感じる整った顔立ち 。



僕は 、そう


正反対の雪に



心 奪 わ れ た ん だ 。








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