三 章 : そ の 恋 は 赤 信 号
色鮮やかな白い肌と赤紫のアサガオとの対比に
嫌という程惹き込まれてゆく 。
屋敷に足を踏み入れた理由すら
彼女の前では身を引いた 。
「 、ぁ 」
絞り出した声に言葉を含められず 、
母音しか吐けずにいる 。
それでも 、彼女の意識を引くには十分だったらしく 、
外に向けられていた目線が僕の方へやってきた 。
金色の瞳が僕の様子を伺う様に向ける 。
まるで天使に地獄行きか天国行きか決められているようだ 。
このような表現は良くないだろうけど
ブラックホールに吸い込まれるように
彼女以外の風景が見えずにいた 。
そんな僕の様子に気が付いたのか 、
彼女は風鈴の音のように 、心地よい笑みを浮かべた 。
「 こんばんは 、お客さんですか? 」
「 ゃ 、.. ちがいます 」
架空の世界から飛び出たような美貌は近寄り難く 、
可愛らしい声は親しみやすさを湧かせる 。
冷淡だが何処か抜けている 。
第二印象はそれだった 。
「 そうだよね 、だって 」
「 当の昔に皆死んでるもんね 」
声色と発言の対照さに困惑が脳を埋め尽くす 。
「 ぇ 、とっ 、君は? 」
呆れた 。
日頃の会話不足の所為でろくな事を喋れない 。
そして何より 、彼女に脳を焼かれた 。
身体が脳と引き離されたように動かせない 。
だけど心は彼女への欲で溢れかえっている 。
彼女を知りたい 。どうしてこんな寂れた家に居るのか 、発言の意味は 、どうしてそんなに肌が白いの 、彼女がアサガオを育てているのか 、
こんなにも胸は高鳴り続けているのに
冷や汗に似た物が頬を伝った 。
渡ってはいけない赤信号なのだろうか 。
それでも身を乗り出したい気持ちは収まる所か増加する一方だ 。
脳が渦を巻いていた刹那 、
彼女が目線を僕から外へ移した 。
そして数秒経たずに仲間の僕を呼ぶ声が聞こえる 。
「 いかないの? 」
その言葉に脳が冷静さを取り戻した 。
身体が思う様に動き始める 。
「 . 、 ッ .. ぅん 」
彼女から目線を外して階段に足を落とす 。
胸の高鳴りが収まるが脳は彼女の事で埋まりかけている 。
帰らなければ 、けど彼女と離れたくない 。
対極的な考えが淡くぶつかり合う中 、
静かに凛と声が鳴った 。
「 セ ツ ナ 」
「 雪に旦那の那で 、” 雪 那 “ 」
脳に電流が流れたような感覚がして
後ろを振り返れば彼女の姿は見当たらない 。
唯其処に 、美しく咲かれたアサガオがあった 。
走るように階段を降りて扉を開ける 。
左胸を手で握り締め乍 前を向けば
いつも通りのメンバーが居た 。
小さく足で貧乏ゆすりをし乍何かを呟いている田中 。
その田中を煽てるように何かを話している佐藤 。
唯一僕に気付いて目を見開いている山口 。
そのいつもの放課後の光景に酷く安心を覚えた 。
数歩仲間達に近付いて 、力が抜けたように膝を着いた 。
そんな僕の様子に焦ったのか山口が駆け寄って
佐藤 、田中の順番で僕を見つけ寄ってくる 。
そして田中が言葉を漏らす 。
「 おま 、 .. 」
「 なんで泣いてんの .. 」
力が入らない僕は佐藤と田中に肩を貸して貰い乍
ぼんやりと彼女の事を想っていた 。
佐藤達に近付いている時 、
鮮明に鼓膜へ届いた声が木霊する 。
「 ま た ね 」
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コメント
20件
テラーで読むとまた違っていいね
めっちゃ久しぶりのコメント失礼! 更新嬉しすぎるし、タイトルの「その恋は赤信号」好きすぎる🫶🏻 作品の雰囲気がちょっと怪しげな感じ(?)と儚さが入り交じってて大好き。 あと、語彙力ありすぎじゃない?? 対比とか、比喩とかめちゃめちゃ上手に使っててほんと凄すぎ!!流石です先輩!!
久々コメントこんばんは🌚 てか更新嬉しいな にこにこ わはははは田中好きだな